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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
5.二軍試験開始(この章は不本意ながら僕が紹介する事に)
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器だけの体

 

 レイシアに全幅の信頼を寄せながらも、決してルティーヌに対して気を緩めずに最大限の警戒を持ってロベルティは指示を送る。

 

 その一方で、ルティーヌも両手に握りしめた『フランヴェルジュ』に絶え間なく魔力を注ぎながらレイシアに魔法を仕掛けようとする。

 

 

「ごめんなさいレイシア……! ――――我が【焔】よ、応えよ!」 



 ルティーヌの周囲に浮遊した大きな粒子のマナは炎の属性を保ちながら、数十個の弾となり――、



「無数の矢となりて、かの敵を射抜け――――【多数炎矢マルチフレイムアロー】!」

 

 

 一つ残す事無く、高速でレイシアに向かっていく。



「相殺――」

 

 

 レイシアは当たる寸前、極めて最小限の動作でミスリルハンマーを薙ぐと、それらは全てかき消され、どれも大した有効打にはならずに、終える。

 

 

「――――『まだ』よ!」

 

「――!」

 

 

 魔法が唱え終わったのも束の間、ルティーヌはレイシアの眼前にまで迫っていた。


 両手で掲げた『フランヴェルジュ』を振り下ろすと、レイシアも少女の力とは思えない速さでハンマーを素早く振り上げ、互いの武器で火花を散らす。

 

 ルティーヌが下から攻撃すればレイシアもそれに対応し、時には魔法で攻撃動作を加速させても、やはり阻まれてしまい、肉体に当てるには程遠い。



「……昔のレイシアじゃ考えられないくらいの強さね。治癒目的以外で魔法なんて使った事のない、戦闘とは無縁の貴方が、一体どうしてこんな事に……ッ!」


「今の私は器だけ。機械によって制御されるだけの単なる『無機生命体』です。貴方の知るレイシアはとうの昔に『死んで』いますから」





 ――――――――死んだ。


 


 

 その言葉は、ルティーヌにとってはただの比喩的な表現程度にしか聞こえなかった。

 

 

 しかし、知る人は知る。それが『真実』である事に。

 

 しかし、今それを証明する術もなければ、する意味も無い。



 ――――何故ならば、今の二人は敵として認識すべき存在。それ以上でもそれ以下でもなかったからだ。



「貴方がロベルティに何をされたのかは知らない。……だけど、あくまで私達の城を滅ぼすと言うのなら――!」



 そして、そこには今まででより『紅』に満ちた魔力に包まれた『フランヴェルジュ』を携えたルティーヌが決意の眼差しでレイシアを見つめ、――そして。

 

 

「これが――――『本命』っ! 我が魔剣よ、爆炎となりてかの敵を焦がし尽くせ――【爆炎刃エクスプロード】ッ!」

 

 

 ルティーヌが繰り出した紅の刃はレイシアの肉体を捕え、斬ると同時に通り過ぎた瞬間、大きな爆発がレイシアを包み込む。

 

 

(手応えは……完璧)

 

 

 互いの命運を賭けた以上、それが旧友であれど『もし殺してしまったら――』などとは考えなかった。

 相手が本気で来る以上、ルティーヌも文字通り死力を尽くさなければ、ものの言う間に自分が屍となるのは目に見えている。だからこそ、手加減など微塵もしなかった気迫の一撃だった。

 


 

 ――しかし、煙が晴れた先にあったのは、残酷な現実のみ。


 

 

「……そ、そんな!? 今のを受けて『無傷』だなんてッ!」


「無駄だよ。レイシアの肉体は新たに改良されたマナペースメーカーから『常時供給される治癒のマナ』によって瞬時に回復する。肉体から直接放出しない限り魔法力を失う事は永久にないのだよ!」


(常時供給ですって……!? レイシアの身体に機械が埋め込まれてるのは知ってたけど、そんな『馬鹿げた』能力なんて聞いた事が……!)

 

 

 ロベルティこそ軽々しく口にしたものの、普通に解釈すればそれはとてつもなく常軌を逸しているのも同然だった。

 本来『マナ』は一人一人個体差はあれど、限りがあるからこそ上手く配分して使い、そこから各々勝機を見出すのが魔法を扱う者の務め。

 

 それが使い放題の相手となればどうだ。ルティーヌの感じた通り、絶えずマナを保有している魔法使いなど、これほどまでに馬鹿げて、理不尽な相手はいないだろう。

 

 

「くく。魔界からマナが集めるなど、あの男の話は最初は私もにわかには信じがたかったが、実際こうも無尽蔵に扱えるのであれば信じるしかあるまい」

 

「あの男……? ま、魔界から……?」

 

「おっと、つい口が滑ってしまったようだ。さあレイシア、私達に仇名す者をその手で駆逐するのだ!」

 

「はい。現優先事項、戦闘能力向上。――【同時生成】。――『ツインハンマー』」

 

「そんな! 『両手』に――!?」

 

「――攻撃開始」

 

 

 今まで持っていたミスリルハンマーと全く同じ物を生成したレイシアは、何食わぬ顔で平然とルティーヌに襲い掛かる。


 片手で軽く振るったハンマーは、ルティーヌの『フランヴェルジュ』にまともにぶつかり、その反動で後ろへと追いやられるが。――そして、攻撃はこれで終わりではない。



「連撃」 

 

 

 あれだけの質量ならば『両手で持つのが精一杯』だと勝手に思い込んでいただけに、その動揺が目に見えて現る。

 続けざまに放ったもう一つのハンマーが、態勢を立て直しきれないルティーヌにもう一度ぶつかる。

 

 咄嗟に『フランヴェルジュ』をもう一度出し、直撃こそ免れるが、受け止めきれなかった威力は無造作にルティーヌを強く吹き飛ばし、近くにあった家屋に身体ごとぶつかるとそのまま貫通し、一度貫いた程度では勢いはまるで弱まらず――――

 



 ――――二度、

 

 

 

 ――――――――三度、四度。

  

 

 そして五度建物にぶつかった所で、ようやく勢いが弱まり壁が身体を受け止める。その衝撃で全身の空気は全て吐き出され、小さな嗚咽と共にだらりと倒れ込む。

 

 

(力が……入らない)

 

 

 全身に受けたダメージで立ち上がる事さえもままならない。咄嗟に自らに治癒魔法を施すも、すぐには治る筈もなく、意識も混濁したまま。

 

 

(この状態で追い討ちなんてかけられたら……)

 


 ――――『お願いから今来ないで』。と念じた、そんなルティーヌの儚い希望は、




「目標、再確認。――撃破します」 




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