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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
5.二軍試験開始(この章は不本意ながら僕が紹介する事に)
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不穏な気配なんて感じたくもないけれども

 ――ユートルゥナ城・正門前――

 

 

 

 ユートルゥナ魔法軍は立ちはだかる機械軍を指揮する『敵将』を何としても見つけようと、積極的に哨戒行動にあたる。――が、以前として有力な手掛かりは掴めないままに、ただ時間だけが過ぎていく。

 本陣でも戦況的に有利なのか不利なのか分からないまま悶々とした空気が流れ、アルカディアの生徒やユートルゥナ魔法軍も攻めればいいのか守ればいいか分からないまま明確とした行動が取れず、兵士達とのやり取りをただ眺める時間が続く。

 

 

「――哨戒魔法部隊からの報告は?」

 

「はっ。現在北方と東方を重点において哨戒行動にあたっていますが、現状これといった手掛かりは得られないままです」

 

「新たな敵性反応も見つからないか?」


「そうです……」

 

 

 隊長や伝令兵を初めとする先の見えない兵士同士の状況確認が続く中で、後ろから歩み寄る一人の姿があった。

 

 

『――首尾は上々か?』

 

 

「「「「――――ら、ライザス国王!?」」」」

 

 

 いくら本陣内とはいえまさか国王自らが訪ねるとは思ってもみなかったのだろう。焦りを隠せないままに、隊長を筆頭に最敬礼をする。

 

 

「ハッ! あの不快な動きをするガラクタ兵どもは未だ一匹たりとも本陣内には招き入れておりません。ご安心をッ!」

 

「そうか。ならばよい、引き続き警戒は怠らぬようにな――」

 

 

 それだけを告げると、ライザス国王は再び城内へと引き上げていく。そしてその姿を見送った隊長等は、やがて完全に見えなくなるとほっと一息つくのだった。

 

 

 ――そんなやり取りを少し遠くで見つめていた、数にしておおよそ『5人』のアルカディアの生徒達。

 

 

 

 

 ――――

 

  

 

「――ねえシャルぅ。あの人なんであんなに偉そうなのぉ?」


「偉いからじゃないかな?」



 遠くから見ていた国王と部隊長のやり取りをルルナは呆れた顔で見つめ、シャルルはごくごく澄ました顔で淡々と真理を述べる。

 

 敵の勢いが最初と比べてかなり弱まり、機械軍も積極的に攻めてこなくなった事から前線に出ていた『グローリィ』を初めとするアルカディアの生徒もユートルゥナ魔法軍同様に一旦後方へ下がり、敵の出方を窺っていた。

 

 元々援軍としての立場で駆け付けたアルカディアの生徒達はユートルゥナ魔法軍と違って、そこまで命を賭して前線に出る義理はなく、ましてやそれが若い命ならば尚更無茶をする必要もない。

 

 そんな空気の中で口を開くのはリーシャだった。

 

 

「さて、どうしようかしらね。私達は試験内容としては十分な戦果を上げたしアムさんとリアンさんは現状待機でも問題ないし、正直任務としては退屈な時間が続きそうね」


「ったくよー。折角身体が温まって来たトコなのに、こんなんで終わっちゃあ何の為にここに来たのかわかんねーし、つまんねぇなあ。アタシ等ここに何しに来たんだぁ?」

 

「し、『試験』を受けに来たんじゃないかなぁ……」

 

 

 敵のリーダー格とおぼしき個体を真っ向から撃破した時点で、本来ならば試験に合格どころか特別褒賞を貰ってもいいような活躍をしている『グローリィ』なのだが、これだけではやはり歴戦の経験を持つアムは満足しないのは至極当然――――とはいえ、何の指示も無しに飛び出す訳にもいかない。

 

 

「――――なんだ?」



 そう思っていた頃に、事態はまたもや急変する。その音に反応したのはシャルルだった。



「……『爆発』音?」


 

 シャルルが思わず振り返って感じ取ったのは、遠い南方からの爆発音、あるいは何か大きな物が壊れたような衝撃音にも似た『音』で、彼からしてみればかなりの音量で、自分以外にも反応した人がいるものだと思っていた。

 

 

(……あれ)

 

 

 ――――が、ふと見渡してもアルカディアの生徒、ユートルゥナ魔法軍は当然の事、近くにいたリアンやアムも含めて『誰も気付かず』、そればかりか初めから何もなかったかのように全員が至って普通の様子なのだ。




(ちょっと……ねえシャル)

 

 

 

 ただ一人の例外、シャルルの片割れを除いては、だった。

 

 

(……へえ成る程ね。どうやら僕等『二人にだけ』聞こえた音みたいだったね。という事は?)

 

(そーそーアレだよねアレ!)

 

(恐らく……だけどあれは多分【魔導式波動遮断領域アイソレーション・フィールド】に近いものを感じる)

 

(そーそー! こう、あの、薄緑色にぱぁーって広がってくアレねアレ! ……ごめん、なんだっけ?)

 

(……言葉の通りだよ。簡単に言えば、指定した領域内から直接放たれるあらゆる波動を遮断してするんだ。電波とか、音波とか、もっと言えば臭いとかもね。もっと高度なものになると視覚すらも遮断させられる)


(視覚ぅ?)


(外部から見ると【遮断領域】に入ってる全ての物体は、それを展開した時に最後に記憶されていた映像を移し続けるんだ。例えばその領域内で戦闘していたとして、その際に建物や無数に破壊されたり地面がどれだけ抉れても、外からは何も変化していないように見える。つまりは『何も起こっていない様に見せられる』んだ。簡単に例えるなら魔力で作ったホログラフのようなものだよ)


(へー。でもルル達ってそういう干渉は一切受けないようになってるもんね!)


(領域自体は狭いかも知れないけど、恐らくこの周辺に点在する機械兵に電波を飛ばしている弊害……かは不明だけど『その余波』も極めて薄くだけども、同時に全体に飛んじゃってるんだろうね。まあ向こうからしたら気付かれるのは想定外だろうけど、そもそも『僕等の存在自体がそもそも想定外』だし)


(ふーん? で、どうするの? 気配が段々近くなってるし、ひょっとしてその【領域】を持ってる人が、王様を暗殺しようとしてたり?)


(可能性としては無くはないね。さて、どうしたものかな……)



 シャルルやルルナとしては、仮に最悪王様が死んだとしても任務や自分の立場にはなんら支障は出ないし、元々助けてやる義務もない。

 うーんとシャルルが眉間にしわを寄せて表情を曇らせていると、ふとルルナは妙案を思いついたかのように頭の上に電球が点いた。

 

(ね、シャル。良いコト思いついちゃったんだけど、試していい?)


(……いいけど、どんな?)


(『こんなの』だよ) 



「……あーいたたたたぁ!? お腹が急にぃ!?」



 突然ルルナは地面にもんどりうって、ゴロゴロと転がり始めた。急な事態に周囲にいた他の面々も何事かとざわつく。

 

 

「あ……あの。ルル……ずっと緊張しててずっとお腹が痛いの我慢してたんですぃ……。もうこれ以上はちょっと無理っぽいので、『そこのシャルルと一緒に』先に学園に帰っていいですかぁ……?」

 

 

 リーシャが近づいて、改めてルルナの容体を確認する。

 

 

「……まあ無理はさせられないものね。分かったわ、自力で歩けそう?」

 

「だ、大丈夫です……ほらシャル手貸してよー」


「はいはい」

 

 

 シャルルがルルナを起こし、肩に腕を回して申し訳なさそうにその場を去ろうとする。向かった先は、学園へと通じる『魔導転移ポータル』だ。

 

 

「じゃ、僕とルルナはお先に失礼します……」



 二人が去る姿をアムは訝し気な目で見つめ、リアンは純粋な心のままに心配そうな目で見送る。

 そして、リーダーであるリーシャはというと、最後にもう一度だけ歩み寄って――

 

 

(――精々頑張るのね)


(…………『お見通し』って訳ですか?)


 

 シャルルの答えには何も返さず、リーシャはただ嬉しそうに微笑むだけ。それが余計彼には不気味に見えて仕方なかった。



『かなり間が空いてしまって申し訳ありません。これからちょくちょく更新できるようがんb』


「ちょルルナ。何も背後から殴らなくても……てか死んでない?」

「いーの! 死なない程度に加減したし、これは愛のムチだからッ!! 半年も空けちゃって……っとにもう!」

「はぁ……。何はなくとも僕からもお詫び申し上げます……」


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