とにかく今は集中……と
「はーい……」
ひとまずリーシャに言われた通りに、ルルナは眠気に襲われながらも話を聞く。すると本当に数分で終わった。
最終的に双子が把握したのは、試験中は一軍の生徒がリーダーになり、5人編成のパーティで戦闘に臨むという事。更にその中には必ず三軍の生徒が2名混じるようにし、1:2:2の編成にする事。これは戦力そのものを偏らせない様に、極力均等化するという計らいもある。その上で、編成の比率さえ満たしているならば、後は予め知り会った生徒同士で組んでも自由とされていた。
これでは一見交友が無い生徒にとっては格差が開いてしまいそうだが、パーティとの連携を取る上で最も大事な信頼性や一個人のコミュニティの深さを図る側面も持つ為、試験内容によって今回のような自由編成にしたり、或いは学園側から定められた固定編成にしたりと、敢えて不規則にしていると学園側は生徒達に知らせている。
「説明は以上だ。では15分後、ここを出発する。生徒はそれまでにパーティを編成し、基礎的な連携などを把握しておくように」
レオナルドはそう言って一旦席を外すと、締め付けられたような張り詰めた空気からの解放感からか、一気に場がどよめく。
「今回は僕等は編成には困らなそうだね。さて、リアンとアムは……おや」
シャルルが探す前に、向こうからから慌てて駆け寄って来るリアン。どうやら今までに体感した事のない緊張から、既に怖気づいてしまっていたようだ。その後ろには呆れ顔のアムの姿もあり、早速パーティとしての条件は満たせた。
「ていうか、今からそんなに怯えてどうするのさ……」
「だってぇ……みんなピリピリしすぎて場違いすぎて……」
「あーはいはい、そんなの戦闘が始まったらすぐ忘れっから。たまにはアタシみたいに少しは図太く生きる事だな」
アムにとっては一軍の舞台を経験していた事もあり、今更二軍試験など屁でもないのだろうが、リアンはやはりというべきか早くも委縮していた。
とはいえ、試験前ならばリアンでなくとも普通の生徒ならば誰もが緊張する場面。大事なのは本番までにどれだけ気持ちを切り替えられるか、である。
「――全員集まってるみたいね」
そんな喜怒哀楽の表情で満ちる中で、靴の音を鳴らしながら歩み寄って来るのは、凛とした声の女性。
「あっ『リーシャ』さん! さっきはごめんなさい! ルル、ああいう場に慣れてなくて……」
「別にいいわよ。たまたま目に入っただけだから。――それよりも、今回アナタ達のパーティリーダーを今回務める事になったリーシャよ。よろしくね」
「えーうそぉー! やったぁー! リーシャさんと一緒だなんてぇー!」
「そっちの子達……リアンさんとアムさんと同じギルドだったら、アナタ達もきっと来ると思ってね。私からお願いしたのよ」
ルルナが大はしゃぎする中で、リアンとアムは置いてけぼりを食らったような表情になる。それも当然、直接顔を合わせているのは4人の中では双子だけで、しかもまともに会話をしているとなると、ルルナしかいないからだ。
「折角だから色々とお話をしたい所だけど……。今回は試験だから、雑談はこの次にでもして早速各々の役割の確認でもしましょうか」
「い、いやいやちょっと待って、急すぎて僕もなんだか……」
時間がないのは確かだったが、それで合点がいくシャルルではない。
そんな中で、リーシャはシャルルの下へ近寄ると、そのままさりげなく耳元へ口を寄せ――――、
(でもまあ、正直君一人いれば『こんなの終わっちゃいそう』だけどね?)
背筋が思わず凍り付いてしまいそうな程冷たく、それでいてとても愉し気にリーシャは囁く。
「な――!?」
「ん、どったのーシャル? 目丸くして」
ルルナにさえ察知させずにひっそりと耳打ちするリーシャに、シャルルは相変わらず女性の正体が読めなかった。
恐怖こそ感じないが、とにかく得体が知れない。底を知ろうと、覗いてみてもただ深淵だけが広がっているような――――そんなイメージがいつまでも付き纏っていた。
「この僕がここまで翻弄されるとは……。仕方ない、今は試験のサポートに集中するしかない。……そういえばもう一つ気になってたんだけどさリアン、『あの人』はどこに?」
「レイラなら……あそこよ」
リアンが送った視線の先を見ると、フロアの片隅には厳しそうな顔で打ち合わせをするレイラの姿があった。更にパーティリーダーも『グローリィ』一向には記憶に新しい、見知った男子生徒の姿もあり、アムが苦々しく見つめる。
「アイツか……ウィンドドラゴンの時に世話んなったな。確かえーと……『ラース』って言ったか? ずっとニヤニヤしててなんだかいけ好かねえヤツだし、アイツらには負けらんねえな」
「だね。僕も同感だ」
戦いはすぐそこまで迫っている。今回はリーシャも加えた『グローリィ』の一面は、気持ちを新たにしていよいよ戦場へと足を運ぶ。




