戦闘開始
――水神魔法都市ユートルゥナ・東通り――
ユートゥルナの中央に鎮座するように構えたユートルゥナ城から東西南北に分かれて、この都市には大きな通りが存在する。
そして現在、城を取り囲むようにしてユートルゥナ軍は魔法軍を展開し、迫り来る機械軍の掃討に当たっている。
大体の軍勢は軍事用に作られた戦闘用ロボットがメインだが、他にも元々は物資運搬などに運ぶ飛行タイプのロボットから、巨大な砲台を持つ戦車まで大小様々に分かれた兵器が闊歩する中で、さらには二足歩行で普通の人間と変わりない動作で戦闘をする、マナを主な動力源とした『マナロイド』も多く戦闘に投入され、最前線は攻防激しく入り混じる大混戦となっていた。
反乱を起こした機械軍はものの数百に対し、片や魔法軍は1万に及ぶ規模の軍隊を揃え、これだけ見ればどう足掻いても機械軍に勝ち目など無く、ひいき目に見ても無謀としか言えない。
現に一つ一つの機械兵器や戦闘用マナロイドなどの個体に、他を圧倒するだけの確かな強さがあるかと言えばそうでもなく、待ち構えている兵士達に迎撃されて次々と撃破されている。
――ならば何故魔法軍はアルカディア学園にまで応援を要請したのか。
「隊長! またです! また奴等が――!」
「構わん怯むな! この第一次防衛ラインで必ず食い止めるのだ!」
隊長が強く鼓舞した所で、丁度突っ込んで来た戦闘用マナロイドに兵士が風属性魔法を撃ち、マナロイドの右腕を吹き飛ばして、戦闘能力を半減させる。――――『筈』だった。
吹き飛ばした右腕の部分から、誰もが目を疑う様な現象が起こり始める。
戦闘はまだ始まったばかりで、後から合流して来た兵士などは初めて見る者も少なくないからか、それを目の当たりにした者からは動揺の声が上がる。
「な……なんだアイツらは!? 腕がすぐ『元通り』に!?」
「ちぃッ! 何なのだあの異常な再生速度は!」
何度魔法を撃ち、或いは直接物理的な力で切り伏せたとしても、およそ数秒後には完全に『元の状態』に戻っているのだ。
それは今相手にしている目の前の一体のみではなく、交戦している全ての標的で同じ現象が起こっていると各地の兵士から報告が飛び交っている。
「まさかあれが、噂には聞いていた自己修復能力を持つと言われる『ナノイック技術』なのか……! だがあそこまで驚異的な修復能力である筈が……!」
「このままでは前線を維持できません! 仲間もやられ、敵勢も勢いを増し、押し込まれるのも時間の問題です!」
隊長が推察する余裕もなく、どれだけ敵を倒しても文字通り意に介さずに再び起き上がって、淡々と迫り来る様はさながら亡者の群れ。
更に機械ならではの抑揚の無さと無機質さも加わって、兵士達も徐々に気圧されつつあり、このままでは前線崩壊――――いや、城にすら突入されてしまうのではと、そんな不穏な空気すら漂い始めていた。
そして前線を指揮する部隊長も、決断を迫られる。
「仕方あるまい……我が隊はこれより前線を離脱し、後方部隊と合流をはか――」
『いいえ――――その必要はないわ』
刹那、兵士達の横を過ぎ去り飛び出したのは、真っ白な影。
その影は手に持った鮮血のような紅の長槍を真横に薙いて一閃すると、前方の機械兵は全て真っ二つに斬り裂かれる。
そのまま間髪入れず次に飛び出したのは、小柄な身体ながらそれ以上に勝る大斧を豪快に振り回す一人の少女。
「うぉらあ――――吹っ飛べぇ!!」
大地諸共抉り取る大きな衝撃波は遥か後方にまで伝わり、かつ至近距離でまともに喰らったターゲットはそのまま虚空の彼方へと、少女が宣言した通り吹き飛ばされる。
「お――おお! 君達はまさか!」
諦めかけていた部隊長の瞳に再び光が灯る。
「お待たせしてしまってごめんなさい。アルカディア学園派遣第16小編成隊は今から、この私リーシャの指揮の下に応援に入るわ」
「ルルもいるよー!」
「僕も」
「わ、私も……」




