試験概要
――アルカディア学園・第89番転移ゲート前――
アルカディア学園に存在する転移ゲートの中でも、ここの転移ゲートはひと際大きく、それなりの人数を同時に転移させられる造りのゲートとなっている。
どうして『それなりの人数』を転移させる必要があるのか――――? それは今ここに200人ほど集まった生徒の数がそれを物語っていた。
神妙な面持ちで見つめるのは、男女入り混じった生徒達。先頭に立つ一軍の生徒から、簡素な作りをしている三軍の制服に身を包んだ生徒も立ったりと、正にバラバラ。
「よし――全員集まったようだな」
重厚感をたっぷりと含んだ威厳ある声に、それまで隣り合う生徒同士でひそひそと聞こえていた声もぴたりと止まり、一気に冷ややかで緊張感のある空気へと変わる。
「私は今回試験官と指揮官を兼任するレオナルドだ、宜しく頼む。試験対象外とされる一軍の生徒と三軍の生徒、特に後者はまだ力量が及ばないと思われるであろう中、勇気を出して参加してくれた事、大いに感謝する」
レオナルドは早速慣れた手付きでアルカディアラインを操作し、目の前に仮想巨大ディスプレイを出現させると、市街地のマップが映された今回の試験対象となる戦場の説明に入ろうとする。
「さて、諸君等がこれから赴く場所は、実地試験の場である以上に『本物の戦場』だ。先に言っておくが、怖気づいた者がいれば遠慮なく言って構わないぞ。臆病である事に恥じる必要など何らない。例え逃げても、命ある限り次がある。一歩前に進む蛮勇より、十歩後ろに下がる撤退にこそ意味がある。己の力量、身の程、引き際――――これらを見誤った者には決して明日はない。一軍、二軍、三軍など関係無く……な」
生徒を束ねる試験官及び総指揮官は表情を緩くも厳しくもせず、ただ一定のリズムと声量で発言する。
最高尾で立つシャルルは勿論の事、普段は騒がしいルルナまでもが緊迫した様子で待つ生徒達を前にしては流石に今回は黙るしかなかった。
「降りる者は……誰もいないようだな。では試験対象になる生徒らに、出発前の最終確認をする。まず最初は今回、試験中に採点基準となるのは以下の評価点だ――――」
◇◆◇◇◆◇◇◆◇
1.行動点
行動力は、敵に憶する事無く活発かつ迅速に行動したり、或いは劣勢と判断した時に素早く後退出来るか等、状況に応じた『適時適切な行動を取れるか』の基準を図る。
2.殲滅点
殲滅点は、文字通り『標的をどれだけ多く殲滅させたか』の基準を図る。ただし、倒した標的の個体能力に応じて評価は変動する。
3.耐久点
耐久点は、敵との交戦中及び防衛中に定められた自陣ラインを個々がどれだけ『耐えきり食い止められているか』を評価する。
4.援護点
援護点は、戦闘中や待機中を初めとした、全ての要素においてアシスト・サポート出来ているかの基準を図る。
5.協調点
協調点は、パーティとして行動する上で自己感情のみに囚われず如何に全体を見渡し、連携を取れているかの基準を図る。
――――以上の評価点を踏まえつつ、各自生徒は試験に臨む事。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇
「次は今表示した水神魔法都市ユートルゥナの全体図だ。赤い点、青い点があちこちに点在しているが、この多く表示されている青い点が今回援護対象となる『魔法軍』。そしてぽつぽつと表示された赤い点が、我等の討伐対象となる『機械反乱軍』だ」
ユートルゥナの総本山であるユートゥルナ城を中心に全体を包囲する形でぽつりぽつりと機械軍が展開し、それを魔法軍の各隊は圧倒的な兵力で迎撃する陣形をしていた。
これだけを見れば一見、差は歴然としていてなんら苦労はないようにも見えるが、そんな生徒達の胸中を察するかのように、レオナルドは言葉を濁しながら補足を加えた。
「ただ、既に現地の人達からも色々と報告は届いているのだが……どうにも『不可思議な現象が多い』ようである。詳細は直接現場の兵士達から聞いて、後は現場の判断で各自行動するように。それでは、次に――」
レオナルドが試験についての細かな補足を説明していくが、流石にその頃にはルルナも欠伸が出てしまっていた。
他の生徒達にとっては大事な試験であるから、努めてばれない様にしたつもりであった。
「こら、大事な試験なんだからそんな緊張感の無い態度なんか取っちゃダメよ」
「は、はーい。ごめんなさ――――」
ばつが悪そうな表情で、何となくルルナは注意をしてきた人を見ると、その意外な人物に目が丸くなる。
「えええええええええ!?」
「こらそこ! 説明中だぞ! 私語を慎むように!」
「ご、ごめんなさい……(な、なんで『リーシャ』さんがここにぃ?)」
「ふふっ詳しい説明は後でね。数分もすれば終わるから、もう少し黙って話を聞いてなさい」




