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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
4.来たる二軍試験に向けてっ!
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まさかあの魔法を使う事になるとは!


「な……なんなんですの。この力は……」

 


 プリスがかろうじて言えたのはそれだけ。

 それもその筈、二人がこの力を直接見るのは、これが『初めて』だったからに他ならない。

 


「この状態が本来の僕とルルナなんだけど、維持するのは5分程度が限界でね。それ以上は自分の肉体を損傷しかねないという理由で強制的に解けるようになってるんだ」

 

「そゆこと。止めるなら今の内だよ?」

 


 軽はずみに言う『悪魔ルルナ』の言葉が、逆に妙なプレッシャーを含む。それは誇張や虚勢などではない、れっきとした事実に基づく発言だ。

 

 そしてプリスも【王女】だからこそ分かる。この二人が持つ力は『自分の理解では及ばない、想像を遥かに超えるもの』だ――――と。


 

「時間がないからね。今回は僕から攻めさせてもらうよ――――【神速】」


 

 突然、シャルルの姿が消えた。

 ――否、消えたのではない。


 『移動』したのだ。

 

 ルルナ以外では眼では認知できない、神がかり的な速さで。

 


「ミューリアスはちょっと僕に付き合って貰うよ。その頑丈な盾に僕の一撃がどれほど通用するのかとても興味深いんだ」

 

「なんだと貴様――ぐぅっ!?」

 


 シャルルは挨拶代わりの初撃として、まずはミューリアスの盾そのものに至ってシンプルな蹴りをかました。

 

 するとどうだ。いとも簡単にミューリアスは盾ごと後方へ吹き飛ばされる。それを逃さずシャルルは追撃を開始する。

 


「じゃ【王女様】の相手は任せたよ。適当に魔法勝負でもしといて」

 

「ちぇーまた勝手に決めてぇ……ってもう行っちゃった。まいいや」

 


 そして、今度はルルナが【王女】と対面する。

 


「こーやって顔を合わせるのも結構久しぶりだよね。前に来た時はいなかったからさー。どこに行ってたかと思ったのに、まさかルル達と同じ場所に行ってたなんてね」

 

「……黙りなさい」

 


 そう静かに言い伏せたプリスの表情には色がなかった。だけど、その声から放たれる感情裏には確かな『怒り』があり、いつ爆発してもおかしくはない。

 


「あれ、なんで怒ってるの? ルルは久しぶりにプリティに会えて嬉しかったのに?」

「黙れと言ってるのですわッ!!!」

 


 今度こそ感情を隠す気はなかった。それは腹の底から一気に吐き出した本音そのもの。自らが絶対的力を持つ星の守護者だからこそ、それを涼しい顔で超えてくる目の前の存在が信じられなかった。現実を受け入れられなかった。

 


「私に二度の敗北なんて許されないですのよ……! これ以上の言葉なんて不要! ――行きますわよルルナ!」

 

「そうこなくっちゃっ! ルルもたまには全力で暴れたーい!」

 


 まずはプリスティアから動いた。自身が同時に放てる限界の五発の魔法全てに超級威力を持つ魔法を込めた。

 

 ――しかし、込めるだけで放ちはしない。敢えてプリスティアは直接ルルナに突っ込んで、接近戦を開始する。

 

 決めの一撃である【五重魔法】は左手に収めたまま、右手に魔粒子で瞬間生成させた魔導のレイピアでルルナを斬り裂き、揺さぶりをかける。

 


「おー速い速い。ちょっと油断したら腕がスパっといっちゃいそうだね!」

 


 それでも、ルルナの余裕は揺らがない。むしろプリスティアが力を出せば出す程、彼女はより好奇に満ちた瞳に満たされ、表情や言葉もより活き活きとしてくるのだ。

 プリスティアも己の全霊を賭してルルナの肉体を捉えようとするが、大振りな攻撃は全て最小限で避けられ、ヒットを優先させた小刻みな技や魔法は全て持ち前の『無理矢理魔法障壁』で無効化される。

 


「なんて馬鹿げた魔力……! ならば『コレ』で……どうですのっ!」

 


 ――プリスティアは勝負に出た。ルルナを自らごと、小さなドーム状をした魔法の檻に閉じ込めると、左手に収めた全ての魔法を至近距離で一気に解き放とうとしている。

 


「ちょ――無茶過ぎない!? プリティも喰らっちゃうよ!?」


「まともに撃ったらこの場所ごと消し飛んでしまいますし、何よりそれでアナタを倒せるのなら安い代償ですわ! さあ、ワタクシの大いなる魔法に飲まれてしまいなさい! 【超級五重魔法クィンテットスペル・ジオ】!」

 


 その一言で『風』が渦巻き、『水』が飛沫を上げ、『炎』は荒れ狂い、『氷』は激しく吹雪く。更に純粋に威力を高めた『無』の魔法が『五つ同時』にルルナ目掛けて炸裂する。一つの魔法だけでも凄まじい質量を持つのに、それが多重に重なった影響で互いに反発しあい、更なる威力を生む。

 

 ――――そしてその威力に耐え切れない魔法の檻は、小さな亀裂が入った瞬間に膨大な爆風が大広間に吹き荒ぶ。

 


「ルルナ!」「プリス様!」

 


 最初に投げ出されたのはプリスティア。爆風と一緒に壁に激突し、そのまま地面へと無造作に崩れ落ちる。

 

 次に投げ出されるのはルルナ。――――のはずなのに、彼女の姿はどこにもプリスティアの瞳に映らない。

 


「ルルナはどこですの……!」

 


 あの威力ならば自分同様にどこかに飛ばされているなのに、壁側を見渡してもいない。ならば他に考えられるのは、あの魔法を食らって肉体そのものが消し炭になってしまった事だが、魔法を放った中央の煙はまだ晴れ切らず結果を判断する事ができない。

 

 ――だが『それは無い』と、プリスティアは思い知らされる運命にあった。

 


「ふー危なかったぁ」

 

「ま、まさか……!」

 

 

 やがて煙が晴れ渡り、視界に映ったのは――――

 

 

「間違えたら炭になる所だったかもねー」

 

「そんな……! 何故ですのっ!? どうして魔法障壁を展開出来ているんですの!? ワタクシの魔法はそれらを全て貫通しますのに、どうして!?」

 

「今のルルはね【次元歪曲障壁魔法ディストーションバリア】っていう防御魔法を使えるの。この魔法はね、前方に魔力を極限まで圧縮させた末に次元そのものを無理やり歪ませて作った、反射や軽減でもない『絶対無敵の障壁』なんだー。だから当たり前だけど、肉体ごと突っ込んだら、次元の彼方に行っちゃうから注意ねー」

 

「なんですって!? そんな理不尽な……!」

 

「勿論欠点はあるよー? これは『ママ認定の上位禁断魔法』だから、折角の【十重魔法デクテット・スペル】も使えないし、防御に全神経を集中させないといけないからね」

 

 

 プリスティアの何かが、音を立てて崩れた。それは今まで保っていた【王女】としての尊厳が崩れる音なのか、あるいは理念や概念そのものが崩れた音なのかは分からない。

 

 でも、ただ一つ。今彼女に分かるのは――――

 


「ほい。『ちぇっくめいと』」

 


 魔法によって『瞬間移動』したルルナの指先が、プリスティアの眉間を捉える。

 

 彼女からは既に心身共々抗う意志は残っておらず、出来る事はただ一つ。この現実を受け入れるのみ。

 


「ワタクシの――――負けですわ」


『軽い告知と身辺整理も兼ねて活動報告も更新しました』

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