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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
4.来たる二軍試験に向けてっ!
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まさかの大ピンチ……!?

 ――テレスティアル・コア『中層・大広間』(ダンジョンランク『?』)――

 

 

 

 マナの色を象徴する緑を基調として超高濃度で圧縮された結晶のみが支配する『星の中心地テレスティアル・コア』。今や双子にとっては勝手知ったる場所となってしまい、一見大した事のないごく普通の場所と錯覚しそうになる。

 

 しかし、双子に常に内包されている強靭な守護魔法をひとたび解いてしまえば、それは生身の身体と同じ。即ち、ものの数秒で肉体は朽ち果て、マナの粒子となって溶け込んでしまうだろう。

 


「――思えばワタクシはあれから一度も『ここ』に帰って来てないんでしたわね。あれから早二年。なんだか懐かしく思いますわ」

 

「申し訳ありませんプリス様。あの時、私という門番がありながら、易々と侵入を許してしまった所為で……」

 

「別にアナタに落ち度は何もありませんわ。現にワタクシでさえ、歯が立たなかったのですもの」

 


 今から約二年前、初めて双子がここに訪れた時、この中層を守る為に存在する【プリンセス・オブ・テレスティア】と対峙した。

 

 プリスティアはこの領域内に生きる生命では2番目に強く、同時に双子が最も強いと思っていたあのバハムートでさえ凌駕する圧倒的な強さの生命だった。

 

 しかしそれでもなお、彼等の強さはこの『聖域』にいた誰よりも更に超越していて、当然目の前の彼女とて例外ではなかった。

 

 絶対なる強さを持つ筈のプリスティアが初めて床を舐めさせられた相手。それこそがこの双子だった。



「でも……『今度』は違いますのよ」

 

「――成る程ね。要するにこれは僕等に対する『リベンジ』でもある訳だね」

 

「察しが良くて助かりますわ。おかげで余計な説明もいらないというもの」

 


 すると、それまで制服を着ていたアルカディア学園の一生徒であるはずのプリスティアとミューリアスの雰囲気が激変した。

 

「準備は良くて?」

 

「私はいつでもいけます、プリスティア様」


「よろしい――では」

 



『――――――――【星装解放】』

 

 


 その一言で、二人は光を強く放った。『星の力』を纏う為の解放の光を。

 

 光が晴れた先に立っていたのは、アルカディア生徒としての姿ではなく、この聖域を護る為に生まれた、二人の本来の姿。

 出で立ちも様変わりし、どちらも結わえていた髪は全て下ろされ、更に二人の能力をより引き出す為、一見薄手の軽装でありながらも攻守共に極限にまで性能を高めた、星の守護者として相応しい姿に身を包んでいる。

 


「おーすごいね! ルルが前に見た時とは二人とも迫力が大違い!」

 

「ワタクシとてお遊びであの学園に通ってた訳ではございませんのよ。さて、余計なおしゃべりもこの辺にして――――」

 


 不意にプリスティアの足元から太い何かが急速に伸び、それは軌跡を描いて一つの線となる。更に線は一つに留まらず、複数に渡って出現し、やがて一つの『超巨大な黒の魔法陣』となった。


 

「これって……【呪術領域カースフィールド】? おかしいな、最初からいきなり全体能力を下げに来るとか、僕が以前戦った時のプリスはもっと正統派な気がしたけれども?」

 

「勝つのに手段は選んでいられない。あの場所でワタクシが何より学んだ事はそれでしたの」

 

「シャルル殿、お許しを。我等は本来一度の敗北も許されぬ存在。それが例え貴方達であっても例外では――――ありませんっ!」

 


 戦いの幕が切って落とされる――――『その前に』、ミューリアスはおもむろに突貫してくる。双子の準備も待たず突っ込んで来るそれは、文字通り不意打ちとしての先制手段だ。

 


(え――ルルが狙い!?)


 

 わずかながらもルルナの予想の範疇を超えた突撃に、完全に防御姿勢に回るしかなく反撃の機会は訪れなかった。それからも立て続けに繰り出される連撃にルルナは翻弄され、あっという間に双子は完全に分断されてしまう。

 


「あら、余所見してる場合ではなくて?」

 

「ち、やるね――!」

 


 その声にシャルルは振り返る余裕も無く、背後から幾つもの魔法が飛び込んで来るが、すんでの所で後方に回避する。魔法こそほとんどが下位魔法なれど、どれも直撃すれば致命傷は免れない。

 


「以前よりも冷静さが増してるね。火、氷、光、無。どれも属性の違ったレパートリーに富んだ魔法で、しかもそれぞれ放つタイミングを微妙にずらしてる。これだけでも対処に一手間がかかりそうだよ」

 

「お褒めいただき光栄の極み――と言いたい所ですけれど、この程度で喜んだり自惚れる程ワタクシは安くはありませんので」

 


 次々と放たれる攻撃魔法に、接近したくても中々できない。そんなシャルルを挑発するかのようにプリスティアは手を緩める所か更に加速させていく。

 


(仕方ない、ここは【反射魔法リフレクト】で凌ぐしかないか……?)

 


 シャルルは下手に避けるくらいならば、一気に元を絶ってしまおうと思い魔法を跳ね返す反射障壁を出した。

 


「――甘いですわね」

 


 プリスティアの口角が片方だけ上を向く。そして反射障壁が跳ね返すと思った魔法は――そのまま『貫通』した。

 


「がっ!?」

 


 意図しなかった魔法の貫通にシャルルは直撃してしまい、そのまま大きく吹き飛ばされる。

 


「その隙、逃しませんわ。そのままマナの屑へとなってこの地で果てなさい!」

 


 プリスティアの追撃が当たるギリギリのタイミングでなんとか体勢を立て直し、当たりそうになった魔法は頬を掠めながら後ろへと流れていく。

 


「流石にやるね。まさか『ペネトレイトスキル』を持っていたのは予想外だった」


「ふん、この程度では終わりませんわ。ワタクシの更なる魔法連撃を受けなさい!」

 


 反撃を繰り出す暇もなくプリスティアからは無数の魔法が飛び出し、容易な接近を許す事はなかった。

 


(まるで直接近づくしかないぞ、とでも言いたげなくらいの攻撃だね。……ならば敢えて、今回はその『誘い』に――――!)

 


 それまで横や後ろへ回避していたシャルルは思い切って立ち止まり、プリスティアと視線を合わせた。

 互いの瞳はどちらも恐ろしいまでの殺意を持ち、少しでも先に気を抜けば心臓を射抜かれてしまいそうな、刹那的な間合い。

 

 プリスティアはその間にも攻撃は続ける。一方でシャルルもその猛攻をギリギリの距離で凌ぎ、確実に接近する。

 


「やはり二度も当たってはくれませんわね」

 

「生憎、逃げる術は僕もあの学園でそれなりに学んだからね。……これでっ!」

 


 そしてシャルルはいよいよプリスティアを射程内に収めた。これならば直接攻撃を仕掛けられる範囲内と、己の中で確信し駆け抜け、魔法による加速魔法でブーストする。

 


「貰ったよ――――!」



 シャルルが放った拳に強い魔力を込めた、決めの一撃。

 

 ――しかし、結果としてそれが命中する事はなかった。



「なっ!? 『ミューリアス』!?」

 

『いつから【私】がルルナと一騎打ちしてると錯覚していましたか?』

 


 正に、一瞬だった。

 突然出現したのはついさっきまでルルナと戦っていた筈のミューリアス。それによってシャルルの拳はプリスティアの肉体にはまるで届かず、目の前に立ちはだかった強靭な盾によって遮られる。

 


「隙ありですわね」

 

 

 シャルルが振り返る前に、いつの間にか背後に回り込んでいたプリスティア。ほぼ無詠唱で放たれた魔法によって成す術無く身体を前に押し出される。

 更に前方にはミューリアスが挟み込む形で立っている。この好機を見逃すはずもなく、既に魔力を込めていた槍が――――無造作にシャルルを『突き刺した』。



「し、シャル……?」



 大広間に一つの血飛沫が舞い、ルルナの叫びが周囲に反響する。


 だが、慈悲無き攻撃はこれで終わらない。


 

「星の王女と、その守護者たる我が力を垣間見よ――――貫け、【アーク・レイ】!」



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