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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
3.グローリィ始動!!
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これぞタクミな連携プレイ!

 唐突に足を止めて進行方向とは見当違いの場所を指差すルルナ。当たり前だがその方向は道も何もない雑木林や茂みが広がるだけで、目立ったものは何もない。


 

「アタシゃ何も聞こえなかったぞ?」


「私も。シャルルは聞こえたの?」


「いや僕もだね。……ああ、そうか。ルルナなら聞こえて『当然』なのか」


「ルルねー昔から音には敏感で強いモンスターは大好きだから、ドラゴンの鳴き声とかはすぐ分かるんだー」


「二人でいる時は全く意識してなかったけどね。今回はルルナが『戦闘狂』なのが功を奏したかな」


「っつっても、あんな視界も悪い茂みだらけの場所でモンスターにでも囲まれたらかなり面倒だぞ? 多少手間でも、安全にルート通りの道を辿っていった方がいいんじゃないか?」


「でもでもー。モタモタしてたらどっかまた飛んでっちゃうかも知れないよー?」


 

 アムの言い分もルルナの言い分も間違いはなく、道は二つに一つだった。

 時間はない。だが焦りは何も生まないのも事実。シャルルは『アルカディアライン』を使って、現在位置とマップ情報を元にどちらがより期待値を含ませられる行動ができるかを考える。


 

「多分『ウィンドドラゴン』がいるのはこの奥を抜けた――『ここ』の開けたエリアだね。リスクは伴うけど、抜けられればかなりの時間短縮はできる。だけども――」



 シャルルは憂いを含んだ言葉のまま、現在位置とすぐ隣の注目しているエリアを表示させて全員に見えるようにさせる。



「なにこれ? なんだか他の場所と違って『真っ赤』に表示されてるー」


「あちゃー『こいつ』は……。こりゃアタシも入りたくないなあ……」



 現時点でこの意味を根本から分かってるのはアムだけだが、パッと見だけでも怪しい臭いしかしないのは誰もが分かっていた。



「所謂『デンジャーゾーン』ってやつみたいだね。注釈だと『通常エリアよりもモンスターとのエンカウント率が異常に高く、絶対数も多い。かつ地形も悪い為迂闊に踏み入れない事』……って書かれてるよ」


「ルート通りにいった場合は?」


「少なく見積もっても、3倍の時間はかかるね。さてどうしたものか……」

 


 悩む時間すらも惜しまれた切迫した状況の中で、最初に決断を導き出したのは――。

 


「シャルル。それにルルナ。二人は逃げられる自信はあるか?」


「分かんないけど多分あるよー」

「100%と断言するのは無理だけど、逃げるだけなら何とかなるんじゃないかな?」


「リアンは大丈夫か?」


「私も逃げるだけならなんとか……」


「……分かった。行こうぜ」


「アムにとっては一番辛いルートになるかも知れないけど、いいのかい?」


「元はアタシの為に来る事になった場所だ。だったらここでアタシが踏ん張らないとな!」


「さっすがアムっち! 大丈夫、何かあってもリアンが何とかしてくれるし!」


「わ、私なのー!?」



 冗談を交えながらも、一行の方針は決まった。そして鬱蒼と茂る森の中を見つめる時には既にさっきまでの笑みは無く、誰もが真剣にその奥を見つめていた。

 


「よし――駆け抜けるよ。雑魚は相手にしないように」

 


 シャルルの言葉に3人とも頷く。

 


「とっつげきー!」

 


 威勢よく飛び出したルルナが先陣を切り拓くと、案の定モンスターはすぐに横から現れたが相手にしてる場合ではない。魔法で更に移動力を加速させて、逃走に全てを注ぐが、早くも綻びが出始める。

 活発な運動に慣れていないリアンは必然的に一人だけ速度が鈍るのだ。そして万が一にでも彼女が取り残されればその瞬間、全てが終わる。



「ちっ――リアン、アタシの『背中』に!」

「ごめんなさい!」


 

 ふとルルナが後ろを振り返ると、夥しい数のモンスターに追われていた。あの押し寄せる波に飲まれたら一たまりも無く、事態は思ったよりもマズい方向に転がりかけていたのだ。

 


「やばいよーシャル! このままじゃすぐ追い付かれちゃう!」


「分かってる! リアン、なんでもいいから魔法を後方に撃って!」


「うん――!」

 


 アムがリアンをおぶってる以上、実質動けるのは3人。ルルナはとにかく先を行き、シャルルは身動きの取りにくい二人のカバーに務める。

 

 詠唱もせず無造作に放ったリアンの魔法はモンスターを仕留めるには程遠い威力だが、それで僅かでも足を鈍らせられるならば価値はあった。……が、それを圧倒的に上回る数のモンスターに、嫌でも焦りを募らせてしまう。

 


「ちょっとヤバイな……。一回でもコケたりしたらアタシとリアンは速攻で『餌』だな」


「そんなー! どうするのー!?」


「だから……こうするんだよッ! ルルナは先に行け! でもって――しっかり『受け止めろ』よ!」


「へっ――? きゃああああああああ!?」

 


 このピンチの中、アムが思いついた手は一つだけだった。

 まるで走りながらボールをパスするスポーツ選手の如く、なんとリアンを先頭を走るルルナ目掛けて――放り投げた。

 


「――ほいっと。ナイスコントロールっ! じゃ先行ってるよー!」

 


 ルルナが無事にリアンを『お姫様だっこ』出来たのをアムが見届けると、走りながら斧を構え、そして全身に魔力を込め始める。

 


「シャルル手伝ってくれ! 一発でかいのをかまそう!」


「分かった――足止め程度でいいのかい?」


「――十分!」


 

 アムの狙いを瞬時に見抜いたシャルルは、できる限り広範囲の魔法を撃つ必要があると判断した。

 そして懐から取り出したのは、右手に4本、左手に4本、計8本の超小型ナイフ。狙いを定めたのはモンスターそのものではなく、『地面』だった。


 

「アム、行くよ!」


「オッケー!」

 

 

 意を決してシャルルは足を止め、振り返る。そして――

 

 

「痺れ成分満載だよ――『パラライズスパーク』!」

 

 

 電気をともなった雷属性の魔法はほぼ全てのモンスターを捉えると、ほんの一時的にだが身体機能を麻痺させる。

 

 単体の威力は低く短時間の拘束しかできなかったが、この魔法の特徴は『数が多い程効果を発揮』し、全体的に足止めができる事。

 


「大技ぶっぱなすよ! 大地諸共砕けろ! ――――『ガイアスマッシュ』!」


 

 斧に地属性のマナエネルギーをふんだんに集めて、豪快に叩き下ろす。

 激しく爆散した魔力と大地の礫は見事に直撃し、至近距離にいたモンスターなどは原型すら留めず圧倒的な威力を裏付ける一撃となった。


 

「上々だね。まだまだ来るから僕等も行こう!」


 

 二人は再び脇目も振らず、一目散に逃走を試みる。

 これ以降モンスターもこれ以上の深追いは無用と判断したのか、出口に近づくにつれて勢いも弱まり、4人ともなんとか無事に危険地域から抜け出す事に成功したのだった。




――

















(リアのおし○すっごい柔らかかったなぁ……)

「――!?」

「およ、どしたの?」

「すっごい邪悪な気配がしたんだけど……」

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