6:授業1
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「では復習しましょう。この世界は何と呼ばれてますか?」
「スアースです」
「正解です。では私たちがいる大陸名とその大陸にある国の名前が分かる人はいますか?」
「東大陸で太陽の国ソルソレイユ、月の国リュヌモンド、火の国マクマード、風の国ブライデリオン、土の国ユニオンキース、商業の国コメルシオ、そして最後が水の国ストホルムです」
「正解です。よく覚えてますね」
俺は今小学校低学年ほどの子供たちと一緒に授業を受けている。
気分としては授業参観に出席しているようなものだが、この世界について何も知らない俺にとっては貴重な時間だ。
こんなことをしているのは昨日みっちーと会っていた時にさかのぼる。
「ところでみっちーはどこの国に所属しているんだ?」」
「わいはこの国、水の国ストホルムですぞ」
「そうなんだ。じゃあみっちーと麗羅と他に誰がいるんだ?」
「他はですな……」
みっちーが水の国ストホルムに所属している者を言おうとしていた時、みっちーたちが入ってきた扉が開かれ、俺たちはそちらに目線を向ける。
入ってきたのは先ほどとは別のシスター。
彼女は迷うことなく一直線にこちらに向かってくる。
「お話し中失礼します。近藤様少しお話が」
「分かったですぞ。ゆっきー、少し席を外しますぞ」
そう一言入れ、シスターと離れて会話する。
会話の内容は全く聞こえてこない。
俺に読唇術でもあれば何を話しているのかわかるのだろうが、あいにくそんなスキルも技術も持ち合わせていない。
みっちーが席を外し、この部屋を見ていること数分、みっちーが戻ってきた。
「ゆっきー、申し訳ないが急用ができてしまったのですぞ。先ほど言っていた鍛錬に付き合うのも難しくなってしまったですぞ」
「そうなのか。どこか遠出するのか?」
「そうですぞ。水の国ストホルムからは出ないのですが、国境までいかないといけなくなってしまったのですぞ」
「その国境までどのくらいかかるんだ?」
「大体魔馬車で2週間ほどですぞ」
「魔馬車? この世界には飛行機や電車はないのか?」
「ないですぞ。イメージとしては漫画やラノベなどでよく出てくる中世ヨーロッパみたいな世界。そんな便利なものはないですぞ」
中世ヨーロッパ風の異世界冒険には心が躍るが、国境に行くのに魔馬車というもので2週間かかるのは相当遠いのではないのだろうか。
「そうなんだ。距離だと大体どれぐらいなんだ?」
「おそらく東京経由の博多函館間ほどですぞ」
めっちゃ遠いじゃないか!
あの疲れ知らずの新幹線で10時間ほど(乗り換え込み)かかる距離だぞ!
それを馬車、いや魔馬車で2週間って。
その魔馬っていうのは相当優秀な馬じゃなかろうか。
「ゆっきー、これで驚いていてはいけませんぞ。なにせ今いる東大陸は広大。イメージはヨーロッパ部分を北にしたユーラシア大陸と考えてくださればよいですぞ」
「でかいな。そこに何個の国があるんだ?」
「7か国ですぞ」
「一つ一つの国でかすぎだろ!?」
そりゃそれだけの時間がかかるわ。
それに東大陸ということは他にも大陸はあると推測される。
想像以上にこの世界は広いのかもしれない。
「分かった。みっちーに助けてもらえないのは残念だが、自分で何とかしてみるよ」
「そのことならわいがシスターにお願いしたのですぞ」
「まじで!?」
「はい。まあ、この神殿で教えてるのは小さい子供にですからわいたちみたいな人は一人もいないと思いますが」
「それでもいい。教師がいてくれるだけでありがたい。みっちー、ありがとう!」
「友人として当たり前なのですぞ」
こういうことがあり、俺は一人幼い子供たちに交じって勉強している。
ちなみにだが、先程の国について簡単にまとめると、
月の国リュヌモンド
大陸最北端で大陸3番目の国土。豊かな土地ではない。軍の人数は少ないが一人一人の実力が高い。戦闘奴隷が多い。
土の国ユニオンキース
大陸北西部で大陸2番目の国土。鉱脈が多く、鉱業が盛ん。鉱山奴隷が多い。
商業の国コメルシオ
大陸北東部で大陸4番目の国土。商いが盛んで商業組合の本部がある。奴隷商人が一番多い国。
太陽の国ソルソレイユ
大陸中央で大陸最大の国土。2番目の国土を持つ土の国ユニオンキースの2倍の広さ。人口に経済、軍事力など様々なものが大陸で1番。
風の国ブライデリオン
大陸南西部で大陸5番目の国土。大陸最大の渓谷があり、自然が豊か。
水の国ストホルム
大陸南部で大陸最小の国土。水資源が豊富で観光業が盛ん。魔王がいると言われる北大陸から一番遠い国。奴隷が最も少ない国。
火の国マクマード
大陸南東部で6番目の国土。乾燥地で国土の半分ほどが砂漠。武術が盛ん。奴隷同士を戦わせる決闘が人気。
こんな風になる。
俺が今いるのは水の国ストホルム。
魔王がいると言われる北大陸から一番遠い国。
弱い俺にとっては、この国に転移できたのは幸運この上ない。
もし月の国リュヌモンドにでも転移していたならば、まともに鍛えることもできず、いつか始まる魔王戦に身を置かなければならなかったかもしれない。
考えるだけでもぞっとする。
それにしても奴隷か。
小説や漫画ではよく出てくる身分だが、まず俺が奴隷になるなんてことはあってほしくない。
こんな幼い子供たちにもさりげなく奴隷について教えるってことは奴隷の待遇はあまり良くないってことなんだろう。
だから奴隷にならないようにと潜在意識に働きかけているのかなって話を聞きながら思っていた。
こんな感じで俺は幼い子供たちと一緒に勉強を始めるのであった。
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