13:SIDE成瀬麗羅
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私はある男の子が好きだ。
いつからかは正確には覚えてない。
それほど小さい時からその男の子のことだけが好きだった。
ただこの時からかなっていうのはある。
それは犬に襲われている私を男の子が助けてくれたっていう出来事だ。
当時5歳ほどでほとんどの思い出を思い出せない中、これだけははっきりと覚えている。
だからこそこの時からなのかなって見当がつけられる。
今思えば約13年間その男の子をずっと好きな私は少しばかり変な女の子なのかもしれない。
その男の子に振り向いてもらえるように、勉強や運動、メイクやその男の子が好きそうなプロポーションの維持。
どれも努力に努力を、研究に研究を重ね、私だけを見てもらえるように行動していた。
けどその男の子から一度も告白はされなかった。
他の男からは鬱陶しいほどに告白されたり、ラブレターを渡されたり、果ては私に触ってこようとする。
あれほど不愉快なものはなかった。
だからそういう時は護身術で触られる前に服だけを持って投げ飛ばしてやった。
私に触っていいのはあの男の子だけなのだ。
他の男にはその権利すらないのだ。
これは私にとっての絶対的な基準。
そんな日々を過ごし、とうとう高校の卒業式まで来てしまった。
相変わらずその男の子から告白はされていなかった。
ただ親友のこころちゃんが言うにはその男の子も私のことが好きとのこと。
なら一層のことひたすら待っているのではなく、卒業式の後に私からその男の子に告白しようと思っていたのだが、先生の手によって異世界へ転移させられてしまった。
私の好きな男の子が「何テンプレ空間にクラス転移させてくれてるんだよ、あのバカ教師が! それに最下位の俺には運がないって言いたいのか、このクソ野郎が!」って叫んでいたが、私も似たような気持ちを抱いていた。
なに勝手に私の計画を邪魔してくれているんだ!
今日結ばれるはずだったのに余計なことしてくれやがって!
ふざけないでよ!
声には出さなかったが胸中は怒り狂っていた。
そして本格的に異世界へ転移させられた私はすぐにでも男の子を捕まえて告白し、あわよくば私の初めてをもらってもらい家族になる予定をしていたのにいつまで経ってもこちらの世界に来ない。
私は待った。
必ず男の子が来てくれると信じて待った。
日本にいた時では絶対にありえない恐怖を味わう時もあったが男の子が絶対に来てくれるという思いだけをよりどころに困難を乗り越えたりもした。
そしてとうとう男の子が召喚されたという情報が耳に入ってきた。
私は今すぐにでも水の神殿に行き、男の子を抱きしめ、首輪をつけてでも一生離さないようにしたかったが、状況がそれを許さなかった。
なぜなら、私は今水の国ストホルムの王女の付添人として太陽の国ソルソレイユにいたからだ。
責任ある私がそばを離れるという勝手な行動はとれない。
なら男の子をこちらに来させればいい。
そう考え、3年1組のみんなで一度集まろうと計画を立て実行した。
そして当日。
太陽の神殿に28名のクラスメイトが集まっていた。
来てないのはあと2人。
そのうちの一人に男の子がいた。
あともう少しで会える。
私は胸を躍らせていた。
そして人影が見え、それが近づいてくる。
だがその人影は1人だけで一向に2人にはならない。
そして目の前にその人が来てももう一人は姿を見せなかった。
「近藤君、確か幸君と一緒に来るって言ってなかったかな? 幸君は今どこにいるの?」
「……ゆっきーが乗っていた乗合馬車が魔物に襲われたみたいでゆっきーは……わいがもう少し早く合流できていれば……」
私、成瀬麗羅は近藤君が何を言っているのか分からなかった。
放たれた言葉を反芻するうちに内容を理解でき、私は膝から崩れ落ちそうになるも、我慢し尋ねる。
「……近藤君、本当に幸君が乗った馬車が襲われたの?」
「おそらく間違いないですぞ。わいもそれを信じたくなくてあらゆるルートで探してみましたが……」
「……そう。……けど幸君を見たわけじゃないんだよね?」
「確かに見てないですぞ。ただあの状況を見る限りゆっきーは亡くなったとしか」
「! あなた幸君の友達じゃなかったの!? なんでそんな簡単に亡くなったって思うの!?」
「あれを見てないからそんなこと言えるのですぞ。馬車は大破、その馬車の周りは血の海。これでどうやって生存を生存を信じればよいか、わいに教えてほしいですぞ!」
確かに私は見ていない。
ただ彼の口ぶり的に余程凄惨な現場になっていることが想像された。
「っていうことはあの噂本当だった可能性があるのか?」
「かもな」
「確か力が幼稚園児レベルになったとかだっけ?」
「何それまじうけるんですけど」
「絶対死んでるな。いい気味だぜ」
「なあなあこれってチャンスじゃね?」
「ああ、ビッグチャンスだ!」
あらゆるところで会話がなされる。
誰もクラスメイトが死んだかもしれないということに悲しみを覚えない。
私にはこれがものすごく悔しかった。
「私が探してくる」
「? 今なんと?」
「私が探してくる!」
「ちょっと待って、麗羅!」
「こころちゃん、放して!? 私が幸君を探すの!」
「麗羅、少し落ち着きなさい! そこのイケメン鈍感勇者の栄翔! ぼーっと突っ立ってないで手伝いなさい! みんなごめんね。ちょっと席外すね」
私のそばにいた親友のこころちゃんが私を連れて会場を出る。
栄翔も慌てて私たちを追いかけてくる。
そしてこころちゃんは会場から少し離れたところにあるベンチに私を座らせた。
「栄翔、周りに誰かいるか確認して?」
「なんでそんなことを?」
「いいから早く!」
「お、おう。わかったよ……」
こころちゃんに言われるがまま栄翔が周りを探り始める。
「誰もいなさそうだぞ」
「なら、結界張れる? それか私たちの声と姿を消せたりする?」
「すまない、どっちもできない」
「使えないイケメン鈍感勇者ね。まあいいわ。周りを警戒しながら私の話を聞いてて。麗羅、落ち着いて聞きなさい。おそらくだけど幸村は生きてるわ」
こころちゃんの言葉を聞き、うなだれていた私は顔を上げ立ち上がろうとするも、
「だから落ち着きなさいって言ってるでしょ。栄翔も表情を変えない。私がなんでそう言ったか理由分かる?」
「スキルの効果?」
「そうよ、スキルが理由。麗羅は知っていると思うけど、私は『嘘発見』のスキルを持ってるわ。これらが近藤君の発言に反応したわ。『嘘発見』であらゆるルートで探した、幸村を見てない、馬車は大破とその周りは血の海の3か所嘘をついてるのを見つけたわ。これらだけでも生きてる可能性はあるわ。なにせ馬車は大破せず血の海もない状況で幸村を見ているのだから。そして幸村と別れた後、一度も探していない。こんな風に考えることができるわ」
こころちゃんの話を聞いて少し感情が落ち着きだした。
「そしてこれはあいまいな根拠なのだけどなんとなく近藤君が今回の件で一枚かんでいる気がするわ」
これを聞いた途端私の中の感情が爆発した。
「ふざけやがって! 今すぐ吐かせてくるわ!」
「だから落ち着きなさいっての! まだ確信がないの。職業の『観察者』ともう一つのスキル『読心術』でなんとなくそう感じただけ。もっとスキルの熟練度があればしっかりと分かったのかもしれないけど……」
こころちゃんが申し訳なさそうに話す。
「うーん、そうだったとしても近藤が幸村を害する理由がわからないんだけどな」
「栄翔、それ本気で言ってる?」
「こんな場面で嘘を言う理由がないだろう」
「……ハアー、これだからイケメン鈍感勇者は。そんなの簡単でしょ。麗羅の好きな相手が幸村だからよ」
「それがどうし……ってまさか近藤が麗羅を好きだっていうのか?」
「それしかないでしょうが。それにここは異世界。日本ではできなかったことができる世界。それにあの噂」
「噂っていうと幸村が弱くなってるってやつか?」
「そうよ。それが本当なら自分が手を出さなくても魔物を嗾ければ何もしなくても排除できる可能性が高い」
「で、排除できれば傷心した麗羅に寄り添うことで幸村の位置を手に入れようとしているってことだな」
「やっと理解できたのね。このイケメン鈍感勇者」
「何回もイケメン鈍感勇者って言うな」
二人の会話を聞いて私は決意した。
「こころちゃん、私決めたわ。私は絶対に折れない。何があっても幸君が生きてるって信じる。それにただ単に信じるだけじゃなくて強くもなるわ。そしてどんな所でも探し出せるようにするわ。だから手を貸して! それに栄翔も」
「もとからそのつもりよ」
「僕はついでかよ。まあいいけど」
こうして私たちの目標が決まるのであった。
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