12:新たなる旅立ち
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「みっちー、さっきはありがとう! けどどうしてこんなところに?」
俺はみっちーと冒険者たちがフォレストウルフを討伐し終えた後に質問を投げかける。
これは当然の疑問だ。
なにせ手紙には国境付近から直接向かうと書いてあったのだから。
国境付近にいるのならわざわざこんなところには来ず、一直線に行かないとおかしい。
「それはですな、ゆっきーがここを通ると思ったからですぞ!」
「俺のために来てくれるのはありがたいけど、国境付近にいたんだろう? ならそのまま太陽の国ソルソレイユに入国すればいいんじゃないのか?」
「ゆっきーはまだまだ地球脳ですぞ。すぐにでも異世界脳に切り替えないといけないのですぞ!」
「どういう意味?」
「ここでは地球のEU圏内や日本の都道府県を超えるときのように国境を簡単に超えられないのですぞ。一般市民ならまだしも拙者たちのような水の国ストホルムに所属している異世界人が簡単に国境を越えてしまったら武力侵略と考えられてしまうのですぞ。例えば、どこかの国の戦闘機が日本の領空を超えてきたから威嚇行動に出たって日本にいた時にこんなニュースも見たことがあると思うのですが、それと同じですぞ。喫緊では魔王という最大の脅威があるから国同士が争うことはないですが、昔はそれなりにドンパチしていたみたいですぞ。いろいろと気を付けないといけないのですぞ」
みっちーの言うことはよくわかった。
確かにこれは気を付けないといけないことなんだが、俺ってどこかの国に所属してるのか?
みっちーたちはどうやって国に所属することになったのだろう?
「なあ、みっちーたちってどうやって国に所属することになったんだ?」
「それはですな、国のお偉いさんたちが水の神殿まで足を運んでスカウトしていったのですぞ。召喚され始めてから15人ぐらいまではスカウトとかはなかったようですが、それ以降はどんどんスカウトされていったようですぞ」
「俺そんなスカウトなんてされてないんだけど……」
「それはおかしいのですぞ。水の国ストホルム以外ならスカウト話がなくても時間的な問題でおかしくはないのですが、水の国ストホルムからはあっても良さげですぞ」
みっちーの態度からして水の国ストホルムからアプローチがあってもおかしくはなさそうなのだが、それがなかったっていうことは、まさか俺が幼稚園児レベルの力しかないことが国の首脳陣たちまでバレている可能性があるってことか?
シスターにはバレている節があった。
なら国の首脳陣も知っていてもおかしくないのではないか。
「そうそうあとわいがここに来たのは太陽の国ソルソレイユに行く道すがらゆっきーを鍛えるためもあるのですぞ! ゆっきーを手伝うと約束しましたからな」
「みっちー!」
みっちーはなんて良いやつなんだ!
友達思いの行動に胸が温かくなる。
「それなら今乗ってる乗合馬車を降りて、みっちーの移動手段で太陽の神殿に向かうってことでいいのか?」
「その方がよいですぞ。なにせわいには魔馬車がありますからな」
「分かった。じゃあ御者さんに話をつけてくるよ」
そう言って、みっちーから離れ、御者さんに途中下車の意向を伝え、またみっちーのところへ戻ってきた。
「みっちー、話をつけてきた。ところでさっき言ってた魔馬車ってどこにあるんだ?」
周りを見渡しても馬車どころか馬らしきものも見当たらない。
「ああ、それなら森の中にありますぞ。なにせ戦闘音が聞こえたから慌ててここまで来ましたからな」
「そうなんだ。じゃあ一旦その魔馬車のところまで移動する?」
「そうですな。そこまで移動するのですぞ」
魔馬車のところに向かって森の中を入っていく。
この時の俺は普通に考えれば不自然に思うことに何も疑問を持たなかった。
それほどまでにみっちーへの信頼は厚いものであった。
歩くこと数分、黒い馬が目に入る。
「みっちー、もしかしてあれが……」
「そうですぞ。あれが魔馬ですぞ」
「かっけー!」
筋骨隆々の体躯に鮮やかな黒の毛並み、堂々とした態度。
何より先ほどまで見ていた乗合馬車を引いていた馬の1.5倍はあるだろう大きさは圧倒される。
「確かにこれなら乗合馬車で旅するより早く着きそうだな。それでどうする? どうやって俺を鍛えてくれるんだ?」
「それはですな」
みっちーが魔馬車の中から何かを取り出す。
黒くてそこそこの大きさがあり、引き金もついている。
「そ、それってまさか?」
「そうですぞ! これは魔銃! 地球の銃と似たようなものですぞ!」
「おおっ! これもかっけー! こんなのもこの世界にあったんだな。『FPSプレイヤー』のスキルを持つみっちーにもってこいの武器だな」
「そうなんですぞ! ただ難点としては発射音が大きすぎることですぞ」
「サイレンサーはないのか?」
「探してみましたがそのようなものはなかったですぞ。作ってもらえるよう依頼してみたのですが……」
「無理だったのか?」
みっちーがにやりと笑い、また魔馬車に行き、何かを取り出す。
「作ってもらえたのですぞ!」
「おおっ! これまたすごい!」
「まあ発射音を100%消せるわけではないのは地球のものと同じですぞ」
みっちーがサイレンサーを取り付け、構えだす。
「ここにリアルゴル〇13がいるぞ! どこかに獲物がいるかな? 一回撃ってるところ見てみたいな」
「いいですぞ」
そうみっちーが言うと銃口が俺に向けられ、発射音が鳴る。
音と同時に強烈な痛みが左腕を襲う。
「っつてー! 痛って! いきなり何するんだ、みっちー!」
「何って獲物に狙いを定めて撃っただけだ」
何言ってるんだ?
全く意味が分からない。
俺が獲物?
どういうことだ?
気が動転しかけ恐怖におびえそうになる。
だがそれよりもいきなり銃撃されたという怒りの方が勝る。
「獲物ってどういうことだ?」
「そのままの意味だよ。俺にとって貴様は邪魔な存在。獲物でしかないってことだよ」
「その口調はどうした? ずいぶん変わってるぞ」
「キャラづくりで適当にしていただけだ」
「要するにお前は俺をだましていたのか?」
「ああ、そうだよ。あの口調の方が警戒感が薄れると思ったからな」
「ふざけるな!」
再度魔銃から発射音が鳴る。
今度は右太ももに強烈な痛みが走る。
「っくそ! なんでこんなことをする!?」
「さっきも言っただろう。俺にとって貴様は邪魔な存在だからだ」
「意味が分からん! どういうことかしっかり説明しろ!」
「しょうがない、教えてやる。俺が惚れた女がお前のことが好きだからだよ」
「は? ……たったそれだけか?」
「ああ、たったそれだけだ。その女はお前しか眼中がない。お前のためだけに身だしなみを整え、勉強に運動も頑張る。ふざけるなって思わずにいられない。それにな、お前が名前を親しげに話すたびに虫唾が走る。何度殺してやろうかと思ったことか」
こんな激情を抱えていたなんて想像もつかなかった。
それに今の言い方だとみっちーが好きな人っていうのは……
「好きな人っていうのはまさか……」
「ああ、そうだよ。俺が好きな女は麗羅だ」
麗羅のことが好きだなんて初めて知った。
それに先ほどの言い方だと麗羅は俺のことが好きだったのか?
藤堂というもう一人の幼馴染でなく俺のことが。
嬉しい気持ちが溢れるも、それでなごんでいられるような状況ではない。
この場から何とか離脱しないと。
「俺を殺したら麗羅はどう思うかな?」
「安心しろ、俺は殺さない」
再び魔銃から発射音が鳴る。
今度は2回。
右腕と左太ももに痛みが走る。
「いたぶるように撃ちやがって! ふざけるな! おまえが俺を殺さないってどういうことか説明しろ! このクソ野郎が!」
「これが何かわかるか?」
近藤が取り出したのは紙に何かが書かれた魔法陣だった。
「そんなもん知るか!」
「これはだな、同志が書いたものだ」
「同志?」
「そうだ。麗羅のことが好きでお前のことが邪魔だと思っているやつだ」
近藤以外にも同じようなことを思ってるやつがいるってのか!?
どれだけ恨まれてるんだよ。
「でどういう効果があるんだ?」
「半径100キロ以内に人がいないところへランダムに転移するものだ」
「それってまさか!?」
「北大陸も含まれるな」
「このクソ野郎が!」
「だから言っただろう。俺は殺さないって。こんな状態だったら何かしらが止めを刺してくれるだろうからな」
まずい。
本当にまずい。
どうにかしてここから脱したいが、四肢を撃ち抜かれている今どうすればいい!?
「じゃあここでおさらばだ。麗羅にはこの後魔物にやられて死んだって言っておくよ。お前の死にざまを確認できないから本当のところはわからないが、おそらくそうなるだろうしな」
魔法陣に魔力が流れ始め、光を放ち始める。
「麗羅のことは俺に任せろ。お前が死んで落ち込んでいるところしっかりと心も体も慰めておくから」
「てめえ覚えておけよ! 必ずお前の首を取ってやる! 必ずだ!」
「楽しみにしておくよ。幼稚園児レベルのお雑魚さん」
高笑いを上げながら魔法陣の書かれた紙を投げてくる。
魔法陣からあふれ出る光はどんどん増し、目の前が見えなくなってくる。
もうすぐ転移が始まる。
「そうそう言い忘れてたよ。俺の職業は『水の魔法使い』ではない。『水の勇者』だ。勇者光康と聖女騎士麗羅。とてもお似合いだと思わないか?」
この言葉を最後に俺は再び転移を味わうことになった。
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