第4話―1 奈落に棲む不死の魔物:1
奈落流刑地からの脱出を目指す、俺とアリシェラの前に立ちはだかる奈落の斧狼とは違うアンデット系モンスター。
そのモンスターは、姿を消す能力と大鎌の前足を持つ大型蜘蛛だった。
「大鎌蜘蛛野郎、どこへ行った!」
「しっ! コトバ君、声が大きい」
ん?
アリシェラはアトリュードを構えてなにをするつもりだ?
「スペルズ〈サーチラ〉!」
魔法を唱えたアリシェラが魔導剣アトリュードに手を翳すと、アトリュードから放たれた光により、周囲にいるモンスターの輪郭らしき光影が浮かび上がった。
はっ? こんなにモンスターがいたのかよ……。
でも俺達には気づいていないみたいだ。
「コトバ君。私を狙ってきた大鎌の蜘蛛は、この光影達の中にいる?」
そうか!
アリシェラが、モンスターの光影を浮かび上がらせたという事は……。
俺が光影に向かってスキャンすれば良いだけだ!
「少し待ってくれ、アリシェラ。ソニックスキャン、スキャン、スキャン、スキャン……、ダメだ……大鎌蜘蛛はいない……」
《「シシシシス『――――』トシシシシ」》
「コトバ君、後ろ!」
「おっと! ありがとうアリシェラ」
やはりこの奈落流刑地に棲む魔物達には知性があるやつもいる。
「来たな! 大鎌野郎!」
左右の大鎌を鋏のようにクロスさせながら、俺の首を狙おうと向かって来るコイツに対して、俺がやる事は一つだけだ!
「ステルスハントをワードドレイン!」
《「シシシシスス? ハハ?」》
『WLにステルス、ハントのワードが保存されました』
よし!
ワードライブラリに新しいワードが追加されたな!
《「シシシシシシシシシシシ」》
俺にワードドレインされた大鎌蜘蛛は、仰向けでジタバタさせながら踠いている。
(……先にソニックスキャンを発動しておいて良かった)
「やるじゃない、コトバ君」
「アリシェラが教えてくれたおかげだ、ありがとう」
「お礼はいいよ……えー、これはサイス・スパイダー?」
「知っているのか?」
「知ってるよ。だってこのサイス・スパイダーは、オルタシェイラ大陸の冒険者集会所の貼紙でよく見る、ルーキー冒険者向けの魔物だもの」
「これがルーキー冒険者向けの討伐対象の魔物なのか?」
「一応は、ね……。コトバ君、このサイス・スパイダーの情報を見せてもらうことはできる?」
「ああ、でもこの大鎌蜘蛛は大丈夫なのか?」
「あっ、そうだね。私が使えるスペルズ魔法だと、この奈落流刑地に棲む魔物を倒せないみたいだから、サイス・スパイダーのトドメはコトバ君にお願いするわ」
「分かった、アリシェラ」
俺は大鎌蜘蛛に向け、手を翳した。
「刻想勇者たる七色言刃が命ずる! 『ヘヴンリークレンジングソニック!』」
《「シシシ――」》
ヘヴンリークレンジングソニックを受けた大鎌蜘蛛は消滅した。
「やっぱりコトバ君のその力……数時間前にこの世界に来た人間が使っているとは考えられない聖属性ワード魔法だわ」
「ああ、ワドラが造ってくれた魔法だからな、ステータスオープン」
《『はいはいー! よくやったーコトバ、アリシェラ!』》
「聖精霊ワドラ様。まさかあんな力を持つサイス・スパイダーは見たことがないですよ、」
《『ふむふむなるほどー! じゃあさっきの魔物の情報を見せるよー! ハーイ!』》
ワドラがそう告げると、大鎌蜘蛛ことアンデ・サイス・リーパースパイダーの情報がステータス画面に表示された。
【アンデ・サイス・リーパースパイダー LV.110】
【DHP 0/2500 MP 0/50】
【SP 0/200 DP 0/0】
【WL保存可能スキル ・ステルス ・ハント】
大鎌蜘蛛の情報だ。
アリシェラはなにを知りたいんだ?
「これは! ……これでは魔導戦士の私は倒せないわ。HPという文字がサイス・スパイダーの命の表す文字だとすれば……DHPはつまり、一度死を迎えたサイス・スパイダーがこの奈落流刑地に漂う邪気に晒され続け、アンデットのサイススパイダーとして復活した死の命を表す文字、か……問題はこの奈落流刑地に流れている、異様な邪気みたいな流れね」
(奈落流刑地に流れている異様な邪気?)
第4話 奈落に棲む不死の魔物:1 完。
第4話―2へつづく!
【七色言刃のワードライブラリ】
・スキャン ・ソニック ・カース
・ヘヴンリークレンジングソニック
・ソニックスキャン
・ステルス(新) ・ハント(新)




