5話 前科がないだけの犯罪者集団
とまあ色々と情報が出てきたので一旦整理。ホワイトボードには以下の情報が書かれている。
《世界がファンタジー化→ゲームの世界に!》
・魔物が出現 → 倒す → レベルアップ及びドロップ品。
・魔法やスキル → 入手方法はレベルアップあるいは特定の魔物の討伐?(未確定)
・ステータス→レベルアップ時機械音が聞こえて入手可(全員がもらえるのかは未確定)
・プレイヤー番号→不明。おそらくどこかで使用可?一旦後回し。
状況は以上だ。まあ、これ見てわかることは状況整理と言っても分からないことだらけだということ。なにせ、まだ俺たちは何一つ確証を得ていないからな。俺ら全員見たもののみ信じる派だし、話は半分マジ、半分スルーの気持ちで聞いている感じだろう。実際俺も本当にレベルアップなんてあるのか半信半疑だ。
状況的にはこの世界がゲームのようなシステムが導入された魑魅魍魎の世界になった、というだけの話である。命の駆け引きはあるだろうが、それ含め楽しみましょう、というのが俺たちの共通認識となっている。
「見て見てヘルズ! これ最強でしょ!」
「あはははははっ!! なにそれ! 小学生が考えた最強の装備じゃん!」
全身水色の作業着に右手には電気コードを巻き付け、そこに挟むようにカッターを養生テープで取り付けたウ○バリン状態のメタクラックがバールを持ったままランウェイしている。赤い布なんて一体どこから拾ってきたのか、もうこいつら自分の家より緩んでやがる。
今は魔物と戦うための準備中だ。戦うにあたって装備を揃えようってことで色々と試行錯誤している。ちなみに俺はもう終えて状況整理中。二人もそろそろ終えた頃だろう。
「そう言うヘルズこそ、俺のこと言えないだろ? なんだよその殺意マシマシの槍。そんな魔物嫌いなの?」
「私は普通でしょ! 少なくともメタクラックくんみたいに不審者の格好はしてないもん!」
「十分不審者だよ鏡見て来い!」
作業着の上からそれっぽい派手な服を着て、小賢しくもファッションセンスを見い出し、更にはベルトに小さなゴムハンマーと金切りばさみの刃をつけ、手には細くて長いモンキーレンチに包丁を取り付け結束バンドなどで完全に固定した阿保の武器。ついでにおでこには防塵マスクをつけた不審者の姿をしたスタイルがいいだけの関わっちゃいけない奴が誕生しているわけだが、いったい何があったらこんな怪しい前科がついてないだけの男女が作れるのか。正直想像がつかない。
「まったく、二人とも騒ぎ過ぎだろ。俺からすりゃどっちも恰好終わってるから。どっちがより不審者か、なんて考えるだけ無駄だ。無駄なものばっか作ってないでちゃんと戦う準備をしろ。そんなんじゃ足元救われるぞ」
いくらこの世界がゲーム性の高い現実だろうと、命をかけた戦いをするのに変わりはない。相手がゴブリンだろうがスライムだろうが油断なんてできる状況じゃないんだ。ふざけるのはいいが、もっと考えて装備するべきだろう。二人はこちらを見ると不思議そうに口を開けた。
「「いや、お前だけには言われたくない」」
「え?」
なんで?
俺は別に作業着にヘルメット被って皮手袋付けた後、全身の防御力を上げるためアルミホイルを貼ってテープで張り付けて腰にはバールと彫刻刀とスクレーパーを取り付けた状態で手には出刃包丁を二本持っただけのどこにでもいる一般男児だろ。もちろん、関節周りは動きに支障が出ないようテープは貼ってないし、ちゃんと可動域は元の状態を保ってる。実戦を踏まえたいい装備だ。
「お前分かってる? その格好で外出たら職質不可避だよ」
「んな馬鹿な。ハロウィンとかならいけるだろ」
「どんなハロウィンだよ!! 職務放棄もいいとこだわ!!」
二人に笑いものにされているこの現状……全く理解できない俺はもしかして怪しい格好をしているのだろうか。否、そんなことはない。これは俺が考えた完璧な装備だ。笑いものにされたとしてもきっと十年後くらいにはみんな理解できるはずだ。これがいかに優れた性能を持った装備なのかを。
あれだな、時代が追いついてないってやつだ。いつかル○ヴィトンとか似たような服作るだろ。
そう思っているとメタクラックが突然手を叩いた。
「さて、面白仮想大会は一旦このくらいにして、各々装備はこんな感じだね。あとは外に出て魔物を倒すだけだ。せっかくだし俺たちで競争ってことで、異論はないよね?」
「当然! 最初は一人の方が動きやすいからな」
魔物討伐にあたって、三人で戦うかを考えたが結果一人一人個別の方が動けるからということで却下された。俺も周りを気にしながら戦うのはあまり得意じゃないし、特に今回は初めての魔物討伐だからな。ただでさえ相手に集中したいのに仲間に気を取られてちゃ逆に足元救われる。
「ちなみに何をもって順位を決めるの?」
「今のところはドロップ品かな。レベルで比べても悪くないけど、やっぱ物で比べた方が楽だと思うし」
「りょうかい。なら一番多く集めた人が勝ちってことにしよう。質は一切考慮なしだ」
「おーけい」
比べるのはドロップの数。競争と聞けば熱が入るのが俺たち三人衆だ。言い換えれば最下位はどんな仕打ちを受けるのか、想像に難くない。絶対にそれだけはなるまいと頑張るわけだが。
「んじゃ、行きますか魔物退治。お前ら死なないよう気をつけろよ?」
「誰にもの言ってんの? その言葉そのまま返すよ」
「あ、もし死んだら墓は立ててあげるよ。私のドロップ品を添えてね」
何にも嬉しくない励ましか煽りか、はたまた言い合いか。なんにせよ軽口叩けるくらいにはみんな緊張なしに勝手口から外へ出る。外には魔物が当たり前のように歩いていた。一人一人戦うと言っても最初は同じ場所で戦うことになりそうだ。まあいい。戦場がどこであれ、戦うことに抵抗はない。この二人に負けないためにもさっさと周辺の魔物を倒して他の場所にでも行かなければ。




