表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春のクソページ 〜3バカクソゲーマー、魔物溢れる世界を攻略する、あるいはただのアオハル謳歌〜  作者: ペアトップ
一章: 雑多なチュートリアル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/33

32話 絶対ボール渡さないマン(キュウタセレクション)!!


 実況解説。及び審判。


『青春のクソページは、中々崩れませーんね』


『ええ、不思議です。普通仲間が気絶すれば相当焦るものですが……依然として冷静を保っている。寧ろ続行をする意向を示しているようです』


『不思議というより異常と言ったほうが正しそーうですけど。彼らはまだ子供みたいですが、だからこそなのでしょうか。魔物の恐ろしさを実感してなお、怖いもの知らずに立ち直っている』


 実はゴールを狙ったと見せかけての魔物による強襲を行う。二人と一人に分断し、フォローに行かせないように状況を作りつつ、ヘルズを殺す。それがオーガ団長が指示した作戦だった。作戦は失敗した。いや、半分失敗したと言ったほうが正しいだろう。現にこの作戦によってヘルズはわずかな間ではあれど気絶という事態に陥り、交代という処置を取らざる得なくなったから。でも、だからこそだろうか。青春のクソページの異常性が僅かながら垣間見えるようになった。


 普通、魔物の怖さを知ったものはその恐怖に体がこわばり、ダンジョン攻略どころではいられなくなる。それが人間。いや、生物としての仕組みだ。ただ、恐ろしいことにキュウタと呼ばれる少年は仲間の状態を見て続行するか否かを聞いた。それはつまり続行するなら続行するで問題ない、という意思の表れでもある。もっと言えば、魔物に対しての恐怖耐性が異常に高いことがうかがえる。心配なのはあくまで仲間で魔物に関しては何も感じていないということだから。

 さらにそこにメタクラックという少年の冷静な分析。彼がなぜリーダーをしているのか、なぜリーダーを許されているのかがよくわかる。プレー面でも、緊急時の判断も、冷静沈着、仲間の意思に速やかに対応し、状況判断を怠らない。彼がいなければあのチームは成り立たないだろう。それだけの能力が彼にはある。

 そしてヘルズ。油断していたと口にしてはいたが、ならなぜ軽傷で済んでいるのか理解できない。敵の数は4体だった。4体1を余儀なくされていたはずだ。普通なら数秒も持たず殺されていただろう。にもかかわらず彼女は耐え続けた。その異常なタフネスは、魔物の想定を上回っている。加えて当たり前のように続行の意思を示している。彼女は恐怖ではなく、怒りと悔しさを感じているように思う。それがどうにも人とは思えない異常さを感じさせる。


『全員異常者ですね。魔物の方が可愛げがあります』


『間違いないですね。後半も楽しみです』


 あの三人がダンジョンを攻略できるか否かそれはまだ分からない。ただ、その異常性は侮れるものではないと、実況は思う。








 前半残り10分、再開の笛が鳴る。


 ゴールキーパーがボールを蹴るとメタクラックへと渡った。さて、残り10分という時間をどうやってやり過ごすのか。敵を躱すか、それとも点数を取りに行くか。それが今回の争点となる。メタクラックとの会話を思い出す。


「正直、ゴールは狙えないと思うんだよね」


 それはメタクラックの見解だ。


「ヘルズがいない今、戦える人間は俺とキュウタの二人。ヘルズが空いた穴はゴーレム二体で対応する。抜けるのは俺の背後、つまりサイドバックからだ」


 ゴーレムの配置を入れ替える。それはヘルズが交代する以上必ずしなければいけないことだ。ただし、穴埋めのためにはゴーレム一体では力不足。だから右サイドのメタクラックの方から一体補給する。俺の方(センター)からとってもいいけど正直リスクが高い。中央は位置関係からしてサイド両方にフォローに走れるからな。メタクラックが少々きつくなろうとそっちから補完する。それが安牌だ。


「でもそれなら、もういっそ最初みたく全員で固まって行動するってのもありなんじゃないか?」


 ふと思った。


「どういうこと?」


「例えばゴーレム8体をボールを中心にして囲むだろ? そこから俺とメタクラック、その手足としてそれぞれ一体ずつゴーレムがフォローに付く。つまり壁を作ってそれを俺とメタクラックが守るって戦法だ。これなら10分くらい稼げるだろ」


 わかりやすく言うなら、お宝を中心に添えた島国を作る。その島を俺とメタクラック(それぞれ一体のゴーレムを部下に据える)の主要二人が守るというボール絶対渡さないマン作戦。そうすれば10分という時間を稼ぐことが出来るのではなかろうか。言わば、ゴールを入れる気もなければ渡す気もない隠居暮らしだが、確実性はある。メタクラックが少し考え込んだ。


「ボールを守るゴーレムを俺たちが守る、か。……まあ、悪くない作戦ではある。たとえ何かあって数体討伐されてもそれは許容範囲だし、ゴール決められるより幾分かマシだ。10分という短い時間ならどうにか守れるかもしれない。でもなんでゴーレム二体? 別に俺ら二人でゴーレム達守ったほうが良くない?」


「それだと俺らが疲れるだろ。気づいてないのか? この試合中ずっと走りまくって息も絶え絶えだぞ。さっきヘルズ抱えた時も正直重くて手が震えてた」


「おい、私は重くないよ。誤解するような言動は控えてもらおうか」


「冗談冗談。でも実際かなり体力は消耗してるから後半まで温存したい。いくらハーフタイムがあるからってそこまで回復しないだろうからな」


「それで俺たちの補助人(すけっと)を一人、か。たしかに主力メンバーの体力温存は不可欠だね。後半も何があるか分からないし、最後まで油断できない。ヘルズもどこまで回復するか分からない以上、できるだけコスパよくってのが最優先事項だ」


「そういうこと」


 そもそも、前半で動きすぎて後半体力持ちませんでした、じゃあ元も子もないからな。頭動かしたって体が動かなきゃ意味がないし、最後の一秒まで動ける状態は維持すべきだ。と考えるとゴールを狙うって判断も今はすべきではないと言える。わざわざ点数入りにくい状況でゴールを狙えばそれだけ体力も奪われるからな。ここで一旦落ち着くのが得策だろう。




 




 メタクラックとの作戦会議はそこで終了し、俺たちは別れた。ヘルズからは「失敗して一点入れられても問題ないから、とりあえず怪我だけはしないように」とこれでもかと説得力のあるアドバイスを頂戴し、早速戦場へ。


『おっと、再び青春のクソページに動きがあります。メタクラック選手がボールを背後に下げ、ゴーレム達が集まってきている。何か手を打っている模様ですがこれは……ボールを守っているのでしょうか!? 全員でボールを囲み、時間稼ぎをする……という作戦に見えます!』


 予定通りメタクラックからボールを渡されたゴーレムはそれを囲むようにして一か所に集まってきた。元々そう言う作戦だったからゴーレムの動きも迅速だ。目の前に敵選手がいるにもかかわらず簡単に要塞を形成することに成功する。かくいう俺もゴーレムを守らなければいけないので近くで待機した。オーガたちはこちらの目的が分からないようで固まったままだ。


「まずは第一段階クリアだね。このまま10分耐えるよ」


「おう!」


 短剣を構える。俺たちのミッションはただ耐えるだけ。それまでオーガたちが向かって来ようとそれを引きはがし、切り刻み、後退すればまた次へを繰り返す。そのためにも周囲の状況を逐一見ておかなければならないが。オーガたちはそのまま静止した状態でしばらく立ち止まったままだ。


『これまたせこい作戦でーすね。ゴール決める気ないじゃないですか。でもそんなことしたって普通にはがされちゃいますよ? 彼らはゴーレムより強いですから』


「そんなこと百も承知だよ! だから剥がされないように俺たちがいるんだ。審判はちょっと黙っててくれる!?」


『はーい』


「来たぞメタクラック! 左からだ!」


「了解!!」


 左からゴーレムを剥がそうと体を掴んでくるオーガ。向こうからすればまず最初にそれをするよな。ってかそれ以外することないし。すぐに短剣でそいつの体を切り裂き、力が抜けた拍子にゴーレムが蹴り飛ばす。防御力特化と言っても無防備なオーガに蹴りを入れればゴーレムとてそれなりの力を発揮する。メタクラックも同様に横腹を思いっきり殴り飛ばすと、力の抜けたオーガをそのままゴーレムが衣類を引っ張って投げ飛ばす。


「こりゃいいね。こいつら命令すれば何でも言う通りにしてくれるから手間が省けるや!」


「お利口な分ヘルズより何倍も扱いやすいからな。そこはストレスないだろ」


「違いない!」


 その調子でどんどんリズムゲーのごとくやってくるオーガたちを引きはがしていく。いくらこちらに向かって来ようと無駄だ。ゴーレムは防御特化な分守りに強いし、力づくで引きはがそうともそれなりの時間がいる。その隙を俺たちが見逃すはずもなく、万が一見逃すことがあっても助手のゴーレムが教えてくれる。途中でしびれを切らしたオーガが襲ってきた。剥がすやつがいるなら倒せばいい。そう思ったんだろう。その判断は正解だ。俺たちを攻撃している間、他のオーガがゴーレムを引きはがせばいいんだから。今度は手で剥がすんじゃなく大剣を振りかざしてきた。ただ、そこは俺とメタクラックの腕の見せ所。向かってくる大剣をうまく受け流し、地面に衝突させる。防御するとその間隙が生まれて面倒だ。そもそも受け止める腕力が俺たちにはない。だから受け流す。そして、ゴーレムが大剣を持ったオーガの腕を掴み拘束。隙だらけのオーガの首に短剣を突き立てる。


 他のオーガも同様だ。ゴーレムに向かって大剣を振りかざすオーガ達をどんどんと捌く。二体同時なら一体を俺が受け流し、もう一体をゴーレムが腕や体にまとわりついて時間稼ぎ。オーガも相当巨体だからな。囲めて4、5体が限界だろう。時間稼ぎは出来るはずだ。


『なんて繊細な。主力であるプレイヤーたちが攻撃を完璧に受け流し、リズミカルに相手選手を手中に納めている。これは作戦というより二人の技術で為せる技だ。一体どこまで見えていればここまでうまく進められる?』


『……』


 正直なところ思ったよりきついかもしれん。普通に戦闘してないか?大分神経と体力使うんだが!?

 と、思いながらも作戦実行中。さっき偶々一体の討伐に成功したので残り10体。いや、ゴールキーパー抜いて9体か。流石にキーパーはこっちに来ないよな。来たら思い切りここからゴールに向けて蹴り飛ばすんだが。うん、流石にな。


「メタクラック! いけそうか!?」


「いやしんどい!! めっちゃしんどいよこれ!! 体力温存するどころかかなり使ってる! 何体かゴーレムが攻撃受けてるし、武器破損しそうで怖い!! その上相手は倒しても補充されるから、腕とか足の腱とか攻撃してるんだけど、それでも後ろからゾロゾロ来るしさぁ! 終わりがないんだよ!」


「そうか、元気そうで安心したよ! じゃあ後5分生き残るぞ!!」


 この作戦においていくつか此方のミスでゴーレムに攻撃が当たるのはもう許容範囲だ。その過程で何体か倒されようが問題ない。とにかくボールさえ取られなきゃそれでいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ