3話 誰が人選ミスだ、敵材だろ
玄関から収集したもの。
《鈍器になりそうな物、独断と偏見あり》
大工用ハンマー(大、小)、バール、大きなモンキーレンチ、スパナ(特大)、金属パイプ、ジャッキーハンドル、木製の角材、鉄製の定規(長尺)、解体用のマレット(ゴムハンマー)
《刃物・切断系、独断と偏見あり》
カッターナイフ、ノミ(木工用?)、スクレーパー、金切りばさみ、ノコギリ、石膏ボード用カッター、彫刻刀
《拘束・トリッキーアイテム系、独断と偏見あり》
ロープ、電気コード・延長コード、結束バンド、養生テープ、ワイヤー、チェーン、ラッシングベルト(荷締めベルト)
《防具・盾代わりになりそうな物、独断と偏見あり》
ヘルメット、安全ゴーグル、防塵マスク、作業着、革手袋、工具箱、金属製のふた・プレート、コンパネ(合板)
勝手口には化け物はおらず、出てすぐに左右のドアを閉めた。化物が外から見えない状況を作り、使えそうな物を適当に部屋に移動。その結果がこれだ。目の前には大量の段ボール箱とそれに入った金具や他面白そうなアイテムの数々。普段全く触らないし、触っても親に怒られそうなことをしている背徳感に某ゲームの勝手に家に侵入&壺割りを思い出したが、そこは不可抗力。ともあれ、そのせいでリビングがめちゃくちゃになったのは言うまでもなく……
「ちょっと! なにやり切りましたって感じで汗拭ってんのさ? 流石に多すぎでしょ!」
「そう? 結構厳選はしたけどね。使えるものが多かったんだよ」
「……これはメタクラックくんの人選ミスだよ」
テレビを見ながら偉そうにため息を吐くヘルズには、せめてありがとうの一つでも送ってほしいものだ。まるで俺があるだけ全部持ってきましたと言わんばかりの反応だがこれでも使えそうな物だけ持ってきたつもりである。特に投擲として使えそうな物は全部置いてきたままだし(投擲なんて石とかで充分でしょって判断)、メジャーとか小物系は結構省いた。もし全部の段ボールなんて持ってきたらリビングの半分は埋待っていたはずだ。そう考えれば大分頑張ってる。
ちなみにもう一つ言いたいことがあるのだが、それはテレビを見ているだけの怠けものにこの苦労は分からねえ、だ。ヘルズはメタクラックから、「重要な情報があると思うからちゃんと聞いとけ」と言われテレビを見るって役割が与えられている。つまりほぼ何もしてないと同義だ。俺みたく荷運びなんてしてないし、当然手伝うこともしていない。途中手伝ってくれね?と言っても「私か弱い女の子だから」とか都合のいいこと言って手伝ってくれなかった。その時見ていたテレビには詐欺まがいなことをペラペラと宣うスピったおばさんがそれっぽい仮説で饒舌に話すだけの不思議コーナーがしているだけだった。そんなに大事かね?机上の空論は。
「こいつにそんなこと言ってもしょうがないよ。キュウタはそこらに落ちている石だろうが使えるもの判定するからね。ある意味大幅にカバーしてくれるから適材でしょ。大は小を兼ねるってことわざもあるくらいだし」
「それ褒めてる? 多分ディスリでしょ」
「そんなことはないよ。褒めてる褒めてる」
ならもっとちゃんと声音を上げてだな、まるで子供が初めて立った時の如く心から褒めてほしいものだ。それを言うと赤ちゃん言葉で煽られそうだから何も言えないが。
「そっちはどうなんだよ? 順調?」
「ちょうど終わったよ。冷凍食品はとりあえず冷蔵庫のまま放置だけど、それ以外の生肉やら魚やらはある程度まとめた。非常食を準備してくれてたのはありがたかったな。偶にまったく準備してない家庭もあるし」
「ラッキーだな。食料はあるに越したこたぁねぇ」
食料確認担当のメタクラックは色々と確認を終えたようで、三人リビングにそろった。さて、ここからいろいろと家の状況整理を行うとしよう。リビングで再びメタクラック先生がホワイトボードの横に立ち、疲れた俺はヘルズの隣へ。
というか今気づいたがいつの間にかメタクラックのやつ服が変わってる。俺が偶に来てる「俺以外烏合の衆」Tシャツに黒のズボンだ。しかも律義にベルトも締めてる。もちろん俺のだ。こいつ……勝手に俺のクローゼット開けて服取りやがったな。昔着てたお古の服が入ってる棚の場所教えてやったのに。よくもまあ当然の用に盗人しやがるもんだ。文句言ってやる!
「……なに? なんか言いたいことでもあるの?」
「いいや、なんでも。似合ってますねその服」
「どうも、じゃあ情報整理するぞー」
俺は知っている。こいつは勝手に服を取るなと言えば勝手に服を取り、勝手に服を取れと言えば勝手に服を取ることを。最早何年同じことを繰り返してきたかという積年の経験が俺にはある。だから言わない。否、受け入れるのだ。だってそれが、不毛な喧嘩を防ぐための最善の策なのだから。
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さて、ここからは今世界で何が起きているのかの確認を行っていく。いきなり世界が変化したことについてはもういい。そう言うもんだと思うしかない。それよりも俺たちがするべきは外の化け物対策と食料確認、この二つだ。前者に関してはまず俺から武器らしきものの確認をおこなう。何か新しい情報屋補足があればその都度ヘルズがテレビから得た情報をひけらかすって感じだ。
「武器になりそうなものは御覧の通り結構ある。建築業様様だな」
今回の武器になりえるものの収集は主に四つの分類に分けてある。まず鈍器になりそうな物。これは所謂打撃系の攻撃が出来るであろう代物たちだ。尤もわかりやすいのはハンマーだな。殺傷能力は未知数だが、確実に武器になりえるものだ。そして刃物・切断系。これは言うまでもなく、相手を斬れるものという認識。わかりやすいのはカッターである。刃自体はそこまで殺傷能力はないものの、軽くて持ち運びしやすい。使いやすいという面では十分武器になるだろう。次に拘束・トリッキーアイテム系。これは所謂相手の身動きを封じることが出来そうなものだ。特にワイヤーなんかは中々使い勝手が良さそうだった。どこかに張り巡らせてもいいし、武器と武器をつなげて新たな武器を生成することもできる。使い方云々の話なら指サックみたくして殴ることもできなくもない。流石に無理か?まあ、そこはやってみて判断って感じだな。そして最後に防具・盾代わりになりそうな物。これに関しては別に使いたきゃ使えって感じの装備だ。建設業ということもあり作業着も家にはあるしある程度の耐久性能も見込めるとは思う。とはいえ、相手が持っている武器が刃物であれば流石に防げるかというのが疑問としてある。あくまでないよりはマシ程度に考えるのが一番だろう。
「やっぱり結構数があるな。でもこうしてみると敵と戦えそうな気もしなくもない」
「気持ち的にはそうかもだけど、実際はうまくいくかわかんないよ。私は出来ればリーチがある武器が欲しいかな。例えばそこのバールとかさ」
「あーそれはたしかに。ならキッチンにある包丁と角材をワイヤーでつなげるのもありかもね。それかこの長い金属工具にくっつけるか」
モンキーレンチを使えばある程度のリーチは確保できる。そこに包丁をつけてワイヤーや結束バンド、養生テープとかでガチガチにくっつければ意外と強力な武器になるかもしれない。実際の使い心地とかどれくらい固定されるかは未知数だけどな。まあ、そこは何とかなるだろう。メタクラックはホワイトボードに適当に使えそうな物をピックアップしながらまとめていく。
「とりあえず外の敵ーーあ~仮に魔物とでも命名しようか。やつらに対して戦う選択をした場合、今集めた武器及びキッチンの包丁を利用して戦う必要がある。そこは後で各々考えて装備するってことで。はい、何か質問は?」
「武器が被った場合は? さっき言った通り私はリーチの長い武器を使いたい。そのためにはワイヤーや包丁を使う必要がある。全部とは言わないけど結構な量使うつもりだよ。取り合いになるのはいささか面倒だ」
「そこは早いもん勝ちでいんじゃね? それかじゃんけんか」
「なら俺は早いもん勝ちにしてほしいな。じゃんけんとか運要素だろ。俺かメタクラックが損するのが目に見えてる」
「はい、じゃあ全員一致で早いもん勝ちってことで」
「「「さんせーい!!」」」
運の悪さは俺が一番定評があることを今までの人生で学んでいるため、速いもん勝ちが最も最善だと思われる。俺とて使いたい武器はあるし、そのためにちょっと争うくらいの覚悟はあるが、今は喧嘩してる余裕はないからな。一旦早い者勝ちってのが楽でいい。
「あとは食料に関してだな。一応数えてみたけど食べ物は全部で一週間ちょっとが限度だ。水だけで耐えられるなら一週間半くらいは持たなくもない。けどそんなの許容できるほど俺たちは精神図太くないし、馬鹿でもない。毎日たらふく食うとまではいかなくても動くのに支障をきたさないよう心掛けるなら一週間が目安だと思ったほうがいいね」
食料に関してはメタクラックが管理することになった。俺は料理なんてしたことがないし、消費カロリーやらなんやらを計算するのは無理だ。ヘルズもそう言う細かいことはお抱えの栄養管理士かマネージャーがやってるだろうし絶対にできない。となれば普段からちょこちょこ自炊していると噂のメタクラックに任せるのが最適である。
「そう言えば水とかいつまで持つんだろうな。まだ水は通ってるんだろ?」
ふと疑問が生まれた。こういうポストアポカリプス……所謂世紀末世界では、電気ガス水道がつかなくなるというのがよくある。もし既に水が使えないってなら色々と不便だ。
「問題ない……と言いたいところだけどそれは分からないね。今のところたしかに電気ガス水道は特に変化ない。だけど多分これからどれも使えなくなるのは目に見えてる。蓄電器があったから今充電してるけど、それもいつまで持つかはよく知らない。使ったことないしね。水に関しちゃ出来るだけペットボトルに詰めたから出来ることはやったって感じ。あと風呂も水溜めてる。やったことはこのくらいかな」
「ほう、うちに蓄電器なんかあったのか。よく見つけたなメタクラック」
「普通に押し入れに入ってたよ。あともう一つそこで面白いもの見つけたんだ。あとで紹介する」
「へぇ」
流石うちの家政婦担当なだけはある。俺が出来ないことを淡々とやってのける。そこにしびれる憧れるぅ!
ちなみに、押し入れにあるのはお古の服と布団、あとは時期じゃない季節家電くらいだ。メタクラックの言う面白いモノとやらには心当たりはない。メタクラックは総括でもしようと言わんばかりに手を叩く。
「ともかく、今俺とキュウタが集めた情報はこのくらいだ。敵を倒すための武器収集は問題なさそう。ただ、食事は一週間分だからタイムリミットはそれと同様。それまでに食料問題を解決して、安定した食事を手に入れるのが当面の目的になる」
これから何をするにも、食べ物は必須だ。仮にこの家から離れて家族を探すにしろ友人を探すにしろ、生きてなきゃ達成はできない。加えて衣食住の住の部分。
外がああなっている以上この家も安全とはいかない。敵が由緒正しき格式の高い日本人なら問題は起きないだろうが、テレビを見る限り礼儀作法の「れ」の字も「さ」の字もない原始人みたいな連中っぽいからな。玄関から入ってくるとも言い切れないし、寧ろ窓から突き破ってくるのが常識と考えていそうだ。そんな奴ら相手に俺たちが出来ることは、家を要塞化するか一階と二階の階段を閉鎖して安全地帯を形成するかくらいだろう。そこら辺は今後話し合いかなんかするとして要検討となる。
「じゃあ最後に私からいくつかいいかな?」
最後、ヘルズが椅子に座り直しながら手を挙げた。言いたいことがあるらしい。
「「どうぞ」」
メタクラックと言葉が被った。ヘルズは身を乗り出しながら口を開く。
「魔物についていくつか面白い情報がある。その話をしようか」
そう言うヘルズの顔はやけに自信満々だった。世界が変わって今更、驚きも何もない気がするが……とそんな俺たちの顔を見てもヘルズの自信は変わらない。事実、こいつの次の言葉に俺たちは目を見開くことになった。
一応言っておくと彼らがいるのは岡山県坂野原市という場所です。岡山県に坂野原市という地名はありませんのでとりあえず田舎だと思ってくれればそれでいいです。とりあえずまだチュートリアルなんでね……。
以降は明日、投稿予定です。
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