17話 アグレッシブさに距離を置く
というわけで各々魔物狩りが始まった。例にもれなく、今回も一人一人魔物と戦うってことで個別での行動だ。以前どっかの誰かがメガホンを使って坂野原市全体に奇声を轟かせたとかでメタリックが「今日はチームで行動するのもありかもしれない」と言っていたが、ヘルズの「子供じゃないんだから大丈夫でしょ」という中々にきつい言葉により個別探索となった。
メタクラックも俺の監視役として一緒に行動するべきか、と悩んでいたようだがご心配には及ばない。流石の俺でも同じ轍を踏むほど馬鹿じゃないのだ。気持ちはわかるがここは友人として信じるというのが筋だろう。魔物数匹狩りを終わり、霧となって消えていくのを見ながら周囲を見渡す。
「意外といるもんだな魔物。リポップしてんのか?」
魔物の出現方法は未だに不明だが、おそらく突然リポップするものであるのはなんとなく想像できる。雨風に襲われ、数を減らしたと思われる中、当然の様に彷徨う様子を見るにまず間違いない。
「まあ、俺からするとありがたいけど。ってかレベルアップの恩恵すげぇな。体が異様に軽い」
戦っていて気になったことはレベルアップによる恩恵だ。レベルが上がったことで体が強化されているのはもちろん、感覚器官も優れているように思う。例えば、遠くにある山の上を見てみる。そこには一本の木が生えており、夏になると蜜に集まってカブトムシがよく取れていた。今は蜜が出ておらず、しかし蝶々が止まっているのが分かる。模様は斑模様、色は青色。前の俺だったら虫がいることすら気づかなかっただろうが、レベルアップしたおかげで目視で確認できる。
「こりゃいい。戦闘でもしっかり周囲が確認できる」
人は行動するとき、見てから行動することがほとんどだ。戦闘においては特に、相手の動きを見て回避や防御、はたまた攻撃に転じることが多い。したがって視力の上昇は俺にとってかなりうれしい強化といえる。死角もその分なくせるし、自身の隙にも気づけるからな。
加えて、体の強化。多分今の俺なら10メートルほどの高さから落ちても骨折はしないだろう。怪我はするかもしれないが、それでも大したことはない……と思う。
「なんにせよ、魔物を狩るのが楽になるのは俺にとって僥倖だな。ついでにばあちゃんの家でも行ってみるか。ここからそう遠くない距離だし」
ふと思いだす。せっかくならこのまま婆ちゃんの家に行ってもいいんじゃないのかと。
まあどうせ、海外に行ってるか友人の家に行ってるか……はたまた旅行しているか避難しているかで家にいないのは見なくてもわかるが。それでも、万が一のこともある。確認だけはしておくべきだろう。
「ちょっと憂鬱なんだな。会いたい気持ち半分、会いたくない気持ち半分。できれば既に避難しててほしい」
昔から毒親とまではいかないものの、結構厳しい当たり方をされた経験があるためできれば会いたくないというのが正直なところ。ただ、もし魔物に怯えるなんてことが万が一ーー否、億が一でもあれば見にいった方がいいだろう。一応、保険の保険って感じで。
地面に落ちたドロップ品を袋に入れると、その足で母方のおばあちゃんの家まで行くのだった。
50歩、100歩、されどその50歩は大きな差だよ。
というのはうちの婆ちゃんの口癖だった。例えばスポーツ、勉強、恋愛、ゲーム。全ての分野において、少しでも他と差をつけるように全力で取り組むんだ。と、そう言う意味らしい。
もちろんそれは婆ちゃんがそう言っているだけで、50歩が大きな差だ、なんて言葉はこの世に存在しない。実際50歩100歩ってのはどちらも大した差がないって意味で使われる言葉だから、本来の意味とは少し異なる。
しかし怖いのがその後だ。婆ちゃんの大事にしてる言葉はもう一つある。それは百聞は一見に如かずということ。実際に見るより体験したほうが経験値はでかいよ、ということだ。
うちの婆ちゃんは結構な頑固者で、自分の見たものや感じたものしか信じないという性格だった。
だから、前者と後者の二つが相まって俺がサッカーして遊んでるときに自分も混じって突進してくるし、ゲームしてるときは勝手に参戦してきて勝負吹っ掛けてくるし、とにかく私を越えて行けっと言わんばかりのお転婆アグロババアだった。その上俺の方が強いと知るとめっちゃ練習するし、その都度勝負吹っ掛けられるし、70代後半だってのにその精神はまるで若人のそれだ。
そう言うこともあってダル絡みされ続けた結果、俺は婆ちゃんにあまり近づかないことにした。別に嫌いなわけじゃない。けど、年も年のくせに全力疾走するから怖いのだ。
サッカーなんかしてみろ、思い切りスライディングとかしてくるからな。怪我必須だし、怖くて近づけないだろ。




