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青春のクソページ 〜3バカクソゲーマー、魔物溢れる世界を攻略する、あるいはただのアオハル謳歌〜  作者: ペアトップ
一章: 雑多なチュートリアル編

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12話 不運な男の独白


 勝手口から出ると、庭に魔物がいないことを確認し、二人と共に外に出る。夜とあって外は既に真っ暗だ。しかし、うちの庭は父さんが昔取り付けた人感センサーライトがあるため、庭に入った瞬間光がともった。

 あ、やべ、そう言えばうちライトついてるんだった。慌ててライトに視線を寄せるが、当然向こうは決められたプログラムに従って動くだけの機械。こっちの気持ちを察して明かりを消すなんてことしてくれるはずもない。


「……ごめんて。でも消し方とか知らなくてさ」


「せめてぶっ壊すか取り外すかすべきだと思うけど? これじゃあ目立ってしょうがない」


「まったくだ」


 二人が何やってんだか、というような呆れた目つきで見てくるが、仕方ないだろう。そこまで気が回るほど俺は気の遣える男じゃない。というか、二人だってうちに人感センサーがついてるのは知ってたはずだ。今まで何回もうちに泊まったことあるし。それで俺だけ責められるってのは心外だね。


「まあ、ともかく行こう。庭の塀まで」


「「了解」」


 もしテレビの言うことが正しければ敷地内には結界が張られているはずだ。そしてそれは魔物を寄せ付けない効果があると言っていた。つまり、うちで言うところの石塀のあたりまで結界が作られているはず。先ほどのヘルズの言葉から近くに魔物がいるのはわかってるし、それならその魔物がこの結界に対してどう反応するのかが肝になる。恐る恐る庭に出ると、そのままゆっくり歩いていく。下は小石で整地されているのでじゃりじゃりと音がするが、ともあれその音によって魔物が近づいてくるような気配はしなかった。石塀に着くと、早速外を見る。


 外には魔物がいた。ヘルズの言う通り、昼には見なかった魔物だ。おそらく夜行性の魔物だろう。念の為、腰に短剣を携えたまま、様子を窺う。


「……襲ってくる様子はない……か。マジであの扉効果あったんだな」


「みたいだね。というか、こっちの存在に気づいてないっぽい?」


「存在が見えていないというよりは、認識できないって方が正しいんじゃないかな。ついでに音も聞こえないみたいだし」


 こうやって俺たちが話している間にも、普通なら襲ってくるはずの魔物たちが、まるで静かな夜道を散歩するかのごとく歩いている。今目の前にいる魔物は3体、その全員が種類の違う魔物だ。人の形をした3メートルほどの細身の人影と、手をつないで歩く子供サイズの影。どちらも目が黄色でライトみたく地面を照らしながら歩いている。

 次に六本足に四つ目の猫。まったく可愛げがなく、挨拶しただけで威嚇&殺意向けてきそうな狂暴そう な生物。

 そして、狸。葉っぱを腹にくっつけて偉そうに歩いている。こいつはペットっぽい。多分20年後とかにはペット化されて一家に一台お届けされてるタイプだ。

 

 全員、こちらの気配に気づかないほど馬鹿ではないだろう。寧ろ、外の空気や気配には敏感なようにすら思う。けども襲ってはこない。こちらに気づいてすらいないのか、視線を寄せることすらない。ヘルズの言う通り、認識阻害的な何かがこの結界にはあるのだろう。


「よく見たら、ちょっとだけ結界らしきものが目視できるな。空間が歪んでる……みたいな」


「陽炎的なやつだな。たしかに見える」


 これが結界かどうかは確信できないが。言われてみれば結界と思わしき壁というか、空気の揺れ的なものは何となく確認することが出来た。もちろん、ちょっとそう見えるだけで向こう側もしっかりと見ることが出来る。まあ、めちゃくちゃ簡単に言うとガラス越しに見てるみたいなもんだ。向こうが気付かないことを考えると、結界が張られているというのはまず間違いないと見ていいだろう。


「ねぇ、ドベ。ちょっといいかな?」


「ん? 俺?」


「ちょっとここで大声出してみてよ。それでもし向こうが気付かないなら、この結界は音遮断と認識阻害の少なくとも二つの効果があることが確認できる」


「え、それ俺じゃないとダメすか?」


「だって声出すの好きでしょ? 今日もグラウンドで叫んでたじゃん」


「ちげぇよ! ありゃ別に好きで叫んでたわけじゃねえ! 色々と考えて叫んだんだよ!」


「どう考えたらグラウンドでメガホン使って叫ぶことになるのか教えてほしいけど。俺からも頼む。じゃないと今日は安心して寝られないだろ?」


「くっ……」


 ボケてんのかマジで言ってんのか分からないヘルズと、ちょっとばかし真剣な顔で言うメタクラックに一体どうこたえていいのか。しかし、考えてみれば誰かが叫ぶかしなければ確信できないというのも事実、それにこの検証は周りにまわって俺のためにもなるというのも事実だ。例えば、本来なら今日の夜俺は夜番をしなければならないという可能性がある。俺たちは全員二階で寝るつもりだし、一階と二階の階段は物で完全に塞ぐつもりだが……それでも万が一のことも考えて夜番をしなければならないのだ。それが今色々と確かめて安全であると立証できれば俺は夜番をしなくて済む。まあ夜番って言っても俺一人がずっとするってわけじゃなくて三人全員でするって形式にはなるが。


 ただ問題は夜番の時間が絶対今日負けた俺が一番長いということ。何度も言うようだが、俺たち三人にとってドベってのはそれだけ悲惨な対応を迫られる。つまり、今ここで叫んだり結界の強度を調べたりと検証しておけば、それらがなくなり俺もハッピーとなるわけだ。


「魔物来ても知らねえぞ。今の俺は見てのとおり体がズタズタだからな」


「それはモーマンタイ。ってか今思ったけど傷治ってきてない? さっきまであった小さな切り傷がなくなってるよ」


「え、マジ? ちゃんと効果あったんだな」


 今頃気づく回復ポーションの効果。スライムから落ちた質の悪いポーションだからなのか、どっかのハンターさんみたいに一気に体力満タン!とはならないものの、じわじわと効果はあるみたいだ。見てみれば両手の擦り傷が塞ぎかかっていた。治る時に痛みはないみたいだ。けど、傷がそのままふさがるって感じっぽいからばい菌とか心配だな。そのまま飲み込むように治ったら後々悪化しかねないし、かえって傷口抉ることになりそうだ(物理的に)。ま、そう言うところも要検証ってことで。


「とりあえず、叫んでみて色々と検証だな。もうやっていいか?」


「どうぞ、こっちは軽く耳塞いどくからいつでもいいよ」


「私はあえてしっかり聞くよ。一体どんなことを叫んでくれるのか楽しみだから」


「別に変なことは言わねえよ。俺のことなんだと思ってんだ?」


 今回検証するのはこっちがどれほど大きな音を出しても結界の向こう側には聞こえないのかということだ。内容に関しては何でもいい。別に、「あー!!」とか「えー!」とかでも問題はないのだ。

 とはいえ、せっかく叫ぶのなら俺も俺なりの不満や怒りを叫びたいもの。こういっては悪いがこいつらは今日のドロップ数戦において負けた俺をこれでもかと煽っていたからな。その上、仕事は増えるわ雑用は任せるわ、おまけに叫べとか。俺は召使かペットかですかい?っていう。まあ、負けたこと自体は事実ですし、今に始まったことじゃないと言えばそうなんだけどさ。俺だって負けたことに対しては血涙で今日飲んだ回復ポーションくらいは作れるくらい悔しかったわけで、それを追い打ちかけるのもどうかと思うよ。そう言ったら、向こうも「俺の立場になったときお前も同じことするだろうが」、と言われればたしかにするが。めちゃくちゃ同じことするし、何ならあらゆる理不尽を押し付けてこき使うくらいはするが。でもやっぱりだからこそその機会を逃したことに対する悔しさも後悔もあると考えれば俺が一体どれほどのマイナスエネルギーをため込んでいるか。


 メタクラックは耳を軽く塞いで空を見ている。空綺麗だなぁとか思ってそうだ。ヘルズは得意げな顔で魔物に視線を寄せている。おそらく心の中では魔物を餌にしてもっと魔物おびき寄せられないかな、とか残虐なことを考えているのだろう。まあ何でもいい。とにかく、全力で叫んでやろうじゃないか。

 大きく息を吸う。今日の昼グラウンドで叫んだ時同様に、精一杯。流石にメガホンで叫ぶと、結界を突き抜けてしまった場合また昼みたく大乱闘してしまうので流石に使わない。とりあえず今の俺の不満でもぶつけてやろう。というわけで、早速天高く叫んだ。


「このッ、クソ女神(あま)がぁああああああ!!!! 運の女神は平等に微笑むんじゃねえのかぁあああ!? 地味面には面食いの女神は微笑まねえってか!! ここに不運な男が一人いるってのに、目にも入らねえってことかぁああ!!??? ざっけんじゃねえええ!!!! 泣いてねえで!! 苦笑いでもしてみろやぁあああああああ!!!!」


 中指を天高くつきあげて、まるで煽るようにポーズを決める。不満といえばこれだ。そもそも運が良けばこんな仕打ち受けてないからな。だって一番魔物倒してんだぞ?だったら運が平等理論なら一位だろうよ。でもそうじゃないってことは何が悪いって、誰でもない運の女神だ。運を手繰り寄せるためにも数倒したってのに、最終的に微笑まなきゃ話が変わる。特にこの地域で尤も有名であると言っても過言ではないどっかの性悪モデルには明らかな贔屓がされている。そいつとの違いなんて顔くらいだ。隣の茶髪チャラ男にも同じことが言える。


「くっ。あはははははははは!!! 相変わらず最高だねキュウタくん! 期待を裏切らない減らず口だ!」


「聞くに堪えない負け犬の遠吠えとはまさにこれだな。ま、聞いてて不快じゃないのは俺がこいつより上だからか」


 上とか下とか言うの今日はもうやめないっすか?せっかく叫びまくって気持ちよくなってるのに、またナイーブな気分になっちまう。


 とまあ、とりあえず息を荒げるくらい不平不満ぶちまけタイムに入ったわけだが、いつまでも引きずってちゃあテンションも下がるので一旦このくらいにしよう。問題は目の前の魔物が今の俺の奇声(暴挙)をどれだけ認識することが出来るのか、ということだ。もし今の声が少しでも聞こえているならこちらを見るなり歩いてくるなりするだろう。あるいは、あまりの聞くに堪えない言葉の羅列に日本語でもしゃべりだすか。なんにせよ、何かしらの反応がなければ、この結界はカラオケ店も羨む完全防音施設ということになる。笑うヘルズと呆れて苦笑いのメタクラックを尻目に魔物へと視線を寄せた。


「……特に反応なし…か。驚くこともなければ、こっちも見る様子もない。マジで何も聞こえなかったんだな」


「今のが聞こえないとなると、完全に防音ってのは立証されたね。ってことは、家でバカ騒ぎしても気づかれないわけか」


「たしかに。中々面白い結界だ。加えて、音の反響もなし。一体どういう原理かは分からないけど、魔法ってことなんだろうね」


 摩訶不思議な非科学的な現象。それら全部を”魔法”って言葉で片づけられるのは何とも都合がよくて便利なことだ。しかし、立証は立証。この結界は音を通さない。


「あと残るはこの結界が他を寄せ付けるか否かだ。強度に関しては確かめたところでキリがないし、確かめるのは向こう()結界内(こっち)に入れるかどうかでいんじゃないかな」


「同感。多分だけど俺らが向こうから結界叩いてもしょうがないと思うんだよね。そもそも触れられるかどうかも分からないけど、どっちみち今調べても時間の無駄かな」


 魔物が入ってこれるか否か。争点はそこだ。強度に関しては確かめたところでわかるのは傷がつくかどうかだ。でもおそらく俺たちの推測ではほぼ傷はつかないという見解が一致している。何故ならば、先程音を完全に遮断しているということを確かめた時点で、この結界は”音を遮断する”という効果に対して絶大な効力を持っていることが確かめられたからだ。このことから”相手の攻撃を防ぐ”という効果もまた相当な効力が見込めると考えられるため、強度を確かめるのは時間が無駄だと二人は判断した。結局のところ傷がつかなきゃ強度がどれだけ高いかなんてわからないしな。そこに労力を割くのは流石に面倒だ。


 それより知りたいのはヘルズが言った”魔物が結界内に入れるのか”ということ。いくら頑強な結界だろうと中に入れちゃ意味がない。そこら辺はサクッと検証だ。


「んで、これまた誰がすんの? やれってんなら別にやるけど」


「いいや、これは俺らのどっちかがやるよ。流石に怪我人を戦地に行かせるのは忍びないし」


「じゃあ私に行かせてよメタクラックくん。君は怪我すると危ないからさ」


「はぁ? なにそれ心外なんだけど? 誰に言ってんの!?」


「だって二位でしょ? 結局のところ、二人は私より下なんだよね。50歩100歩ってやつ。というわけで行ってきまーす!」


「あっ、ちょ、ちょっと! 待てよヘルズ……! ……ったく。自分勝手にもほどがあるな。まあ俺からしても汚れなくて済むからいいけど」


「仲間だなメタクラック。底辺同士仲良くしようや!」


「うわぁムカつく。下から見下されてる気分」


 別に見下してなんかいないさ。でも、どうせヘルズからしたら俺たちなんて両方敗北者。今日一日ずっと心狭しな運命にあるのだよ。


 その後色々と試した結果、結界は予想通り魔物が入れないという結果になった。ヘルズ曰く、向こうからしたら結界は高い壁みたいに見えているんじゃないかと。まあ、どう見えようがそこはどうでもいいが、とにかく結界の効果はこれではっきりした。


《結界の効果およびシラトの効果》

1,家の敷地内に防音の効果を付与する。→効果はキュウタが全力で叫んでも問題なし。

2,結界内には魔物は入れず、人間は通過することが出来る。→向こうからは壁に見えている(?)。人は難なく素通り可。

3,強度は恐らく高い。1の法則で考えると性能は高いが、未知数。何かしらの代償がある可能性も有。


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