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青春のクソページ 〜3バカクソゲーマー、魔物溢れる世界を攻略する、あるいはただのアオハル謳歌〜  作者: ペアトップ
一章: 雑多なチュートリアル編

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10話 吠え面、負け犬、遠吠え、煽りカス


 それからどれほど経っただろう。周辺の魔物を軒並み連れてきた二人に巻き込まれ、俺たちは追加の魔物を倒し続けた。流石に最初の魔物60体抜きのせいで体の動きは鈍っていたが二人のサポートくらいはできる。魔物を倒すことはほとんどせず、二人が戦いやすいようにヘイト役として立ち回った。全ての魔物を制圧後、疲れて地面に倒れる。


「いやーいい汗かいたね! 運動不足解消にはちょうど良かったよ」


「大分しんどかったけど……レベルアップしたし悪くなかったね」


 二人は汗を拭いながら笑顔でそう言った。まるで現場仕事をやり切って気持ちよくなったような顔をしている。何とも憎たらしい顔だ。これが人を巻き込んだ奴らの顔とは誰も思うまい。


「あれ、どうしたのキュウタくん。倒れるなんて珍しいね」


「サポート役に回ってたのにね。もっと普段から運動しな?」


「テメェら……擦り付け(タブー)しといてよく言えたな? その面覚えたぞ?」


「「わぁ~こわぁーい!!」」

 

「ケッ」


 反省はなしと。よし決めた。いつかこいつらを同じ目に合わせてやる。絶対強い魔物とか連れてきてタイマン張らせてやる。


「まあ、正直本当に悪いとは思ってるよ。けど、一応弁解するならキュウタのせいでもあるからね」


「ああ? なんでだよ」


「だって俺もヘルズもキュウタのことが心配でここに来たからさ。ほら、お前ここで拡声器使って叫んでたでしょ? あれ俺たちにもはっきり聞こえてたんだよね。それでやばいって思って念の為助けに来たんだ」


「そしたら驚いたよ。家からここに来るまでの道中握手会みたいに魔物の行列ができててさ、正直キュウタくんは絶対死んだなって思った。けど一応生きてるかもしれないってことで追加の魔物がそっちに行かないよう誘導しまくってたってわけ。多分私らが来なきゃあと120体くらいはこっちに来てたよ。感謝してほしいね」


「ま、マジか。それはすまん。助かった」


 まさかそんなことになっていたとは……たしかに集中してたから気づかなかったけど、最初の魔物の群れから魔物の数はずっと変わっていなかった。あれは単に近くにいた魔物が来て、あとの魔物は興味を無くしたからだと思っていたが……実際は二人がひきつけてくれたおかげで俺の負担が下がってたようだ。それを聞いちゃ頭の上がらない。正直ありがとうと言うほかないな。


「まあ、結果的には強くなったしドロップ品も取れたからいんじゃない? それより追加の魔物が来る前に早く帰ろう」


「だな」


 第三ラウンドはいくら何でもきつすぎる。お茶ももうほとんど切らしたし、何より体が動かない。こりゃ明日は筋肉痛で家から出られないだろう。俺たちは家に帰るのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 時刻は夕方18時。

 夜の帳が下りかけて、顔を暗くするそんな時間。血と汗と疲れを風呂で流した俺たちは絶賛リビングへ集結中だ。念の為カーテンは閉め、電気をつけている。魔物が来るかもしれないが、まあそれはその時ってことで。

 ちなみに俺は相当無理したから全身が傷だらけだ。特にオークにやられた横腹とバウンドしてできたところどころの切り傷。あと何度もぶつけた背中は慣れない痛みに格闘中だ。ゲーマーとしては爪の甘い傷、男としては名誉の傷だろうか。跡は残らないだろうが、治るまではそこそこ時間がかかるだろう。


 さて、それはともかくだ。傷だ何だという問題は俺たち三人の中じゃどうでもいい。傷なんざ寝てりゃ直る。それよりも確認すべきことがあるのだ。


「結果発表!!!!」


 例にもれなくソファに座る俺とヘルズ、前に立つメタクラック。そのホワイトボードには報酬品総数結果という文字が並んでいる。

 そう、報酬の確認だ。帰って早々で忙しないが、俺たちはこの報酬品で争うために戦ったのである。


 報酬は隣のリビングに詰め込んだ。何分(なにぶん)数が多かったので運ぶのに苦労したうえ、場所をかなりとるのでどうしようかと悩んだものだが、一旦はリビングだ。時間がある時に屋根裏か二階の押し入れに入れるつもりである。一階には魔物が来る可能性があるからな。


「え~皆さん。ここまでご苦労様でした。正直ここまで大量のドロップ品が集まるなんて思いもしなかったよ。原因はどっかの誰かが無鉄砲にヘイトかったせいなんだけど……まあそれは結果オーライってことで、ここからはドロップ品の総数を比べていきたいと思います」


 ちなみに、ドロップ品は俺たちがちゃんと倒した分で三等分しているので、公平に数えている。あと魔物を殺しきった人が報酬品を受け取るってルールなので、傷を負わせたとかは関係なしだ。一々そこを入れるとややこしくなるからな。あくまで倒した人が報酬を受け取れるというルールで行っている。


「ちなみにだけど、三位の人(ドベ)は三割貯金してもらうからね。二位の人(中途半端な人)は二割、一位の人も一割は貯金してもらうから。そこはご理解してください」


「「異論なし」」


 報酬品を保管するにあたって、色々とルールを取り付けた。中でも特筆すべきは、報酬品の分配だ。これからこの報酬品の処遇にあたって色々と考えていくのだが、とりあえず決めたのは今回の競争における分配(ゆくえ)と、簡単な方針。

 前者は単純に一番凄い奴がいい思いすべきだってことで報酬品の一割を三人の貯金箱に投入することにした。二位と三位はそれよりも大きな分配率。まあこれは何かしらの旨味があったほうが盛り上がるってことで当初決めたものだ。

 後者に関しては、これからの報酬品についての処遇である。報酬品は基本的に個人の分と共有(三人)の分で分けることにした。例えばいらない武器やらモノやらを共有部分にぶち込んでおけば誰かが使うかもしれない。これは基本的に使用権は三人全員にあり、許可制だ。俺の場合槍がドロップしても使わないから共有部分に入れてヘルズに使わせようって感じ。使いたきゃ二人に声かけてオッケー出せば使用権はそいつに渡る。逆も然り。まあ、緊急時やどうしても使いたいときはその限りじゃないけどな。全然勝手に使っていいし、壊しても気にしない。

 そんなルールのもと今回の報酬品の総数比べが始まるわけだが……


「さて、早速だけど誰から発表する? 誰からでもいいなら俺からするけど」


「こだわりは特に。順番で結果が変わるわけじゃないからな」


「私も異論はなし。正直一番の不安要素はキュウタくんだ。メタクラックくんとはほとんど数が同じだろうからね」


「了解。それじゃあ俺から発表するね」


 最初はメタクラックから。ヘルズの言う通り二人はおそらく似たような数のドロップ品になりそうだ。二人とも最初は街の方に出かけて、その後坂野原運動場にやってきたから、境遇的にはほぼ同じ。よって俺の数が二人より多いかどうかが肝になるだろう。メタクラックはわざとらしく咳払いした。


「俺のドロップ品の数は……!」


 心なしかドラムロールが聞こえてくるのは気のせいだろうか。ドキドキの発表タイムに俺は身を乗り出しそうになる。メタクラックはホワイトボードに書くと、大声で言った。


「総数126個!!」


「「おおおお!!!!」」


 多いッ。

 しっかり多いなこいつ!

 思わずヘルズと一緒に歓声を上げてしまった。


「運がいいのか悪いのか。この数を見るだけじゃ判別はできないけど、126個って数は決して少なくはないんじゃないかな」


「たしかに。数は相当だな。正直何個かくすねたい気分だ」


「中々だね。ま、私に比べれば……かもしれないけど」

 

「ええ!? なにその反応!? まさか負けてる!? ちょっと萎えるんだけど!?」


 この発表会の面白いところは発表後に相手の顔色を窺うところだろう。発表者側は自分の数が周りと比べて自慢できるかどうか分からないから不安だが、発表される側は自分と比べられる。例えばヘルズみたいにいかにもな反応をされると、何とも萎えるのだ。まあ、こいつは偶に負けてもこういう反応するから分からないけどな。モデルは演技力も高い。ちなみに俺はソファに思いっきり垂れかかって偉そうにしている。


「次はキュウタの番だよ! 一体何個取れたんだよ!」


「ふふっ。まあまあ落ち着けよメタクラック。慌てたって結果は変わらないんだ。ほら、一旦座りな? お前はもう……俺を見下ろす価値はないんだからよ」


「……っ。お前まさか!」


「どけっ。俺の番だ」


 メタクラックに変わって俺がホワイトボードの前に立つ。こいつには悪いが、俺も一芝居打たせてもらおうじゃないか。


 今回の勝負は主に二つ重要な要素がある。まず、数えるのが魔物の討伐数ではなくドロップ品であるということ。そしてそれは、実力ではなく運も必要であるということだ。

 どういうことかというと、魔物のドロップ品はおそらく確率によって変化する。したがって一体倒したときのドロップ品は場合によって1つの時もあれば3つの時もある。はたまた相当運が良ければ4つなんてこともある。それはもう完全に運なのだ。もちろん、倒した数が関係ないとは言わない。倒した数が多ければそれだけガチャを回したということなのだから。加えてドロップ品に0という概念はなく、魔石は確定でドロップする。そして、この三人の中で最もガチャを回したのは紛れもない俺だ。それだけでも俺は有利だった。


「そんな俺がドロップ品を発表しよう! 俺の総数は……!」


 ホワイトボードを力強く叩いた。ドキドキ発表タイムだ。いいや絶望タイムだ!慄け、メタクラック、そしてヘルズ。いいや、雑魚共ッ!!大きく息を吸うと、俺は言った。

 

「118個! それが俺のドロップ数だ!!」


「お前負けてんじゃんか!! 十中八九予想通りだわ!!」


「キュウタ君があの反応するときは大体分が悪い時だからね。相変わらずの悪運に乾杯!」


「クソがぁあああああああ!! 何で負けんだよ!! 俺が一番倒したのにぃいいい!!」


 魔物を倒した数:

 メタクラック……65体

 ヘルズ……67体

 キュウタ……71体


 これが運という名の乱数である。運の女神はキュウタに微笑まない。そう、それがこの世界……否、俺の人生のすべてだった。だからいつもやる。負けても勝った雰囲気出して発表までの間だけは二人の悔しがる顔を見て優越感に浸ってやろうと。もはやこれは恒例行事だ。最近はメタクラックもそれを察して確定演出とか言う始末。これだから運ゲーは嫌いなんだ。メタクラックもそれをわかってドロップ数とかにしたのかもな。


「いい加減運どうにかしなよ。昔から悪すぎてこっちが忍びなくなる」


「どうにかしてどうにかなるもんじゃねえだろ! どうしろってんだ!?」


「普段の行いを見直すとか? いや、それこそ負け犬の行動か」


「ああん?」


「ぷっ。ああいや、ごめん。想像したら笑えてきて……ふふっ……」


「テメェ!」


 なんともまあ俺の心を揺さぶらんとする煽りカスーーメタクラックの一挙手一投足には、憎しみすら抱かせる何かがある。もしこいつがゲームキャラだったら今頃思いっきりコントローラーを投げつけていただろう。響く。心に響く煽りカスだ。


「やめときなよメタクラックくん。負け犬は負けた瞬間どんな顔しても負け面だし、何を言っても遠吠えなんだ。それが弱者たる所以なんだよ」


「え、お前の方がひどくない? 流石に可哀想」


「どっちも変わんねえよ。さっさと書け性悪(ヘルズ)。お前が最下位の可能性もあるだろ」


「可能性はね。君からすれば……だけど」


 まだ負けたわけじゃない。というのは先に言っておく。まあ、この感じを見るにヘルズもかなり自信があるようには見えるが。さっき言ったようにドロップ品ってのは完全に運だ。仮に10体倒したメタクラックと20体倒した俺がいたとしても運によって俺が負ける可能性は十分ある。

 今回ヘルズが倒した魔物の数は67体。メタクラックの65体は超えているが俺の71体は超えていない。となればこの4体の差で俺がどれだけアドバンテージが取れているかが肝になる。いや、アドバンテージというよりは運の補填か。なんにせよ、こいつの運によって変わるわけだ。ヘルズは自信ありげにホワイトボードの前に立つと、早速数を書く。


「聞いて驚くといい。私のドロップ品の総数は……」


 再び心の中でドラムロールがなる。負けろ!負けろ!悪運引いて70個とかであれ!心の中の俺が何度も叫ぶ。そう言うところだぞ、と隣から聞こえた気がした。あ、声に出てたかな?まあ隣の茶髪も結局同じこと思ってるだろうから、普段の行いはトントンってことで。ヘルズはホワイトボードから手を放すと、マッキーを置いて胸を張った。


「総数136。私の勝ちだ!」


 そして言った。総数136個と。136……


「うそ!? マジ!?」


「不当だ!! こんなの不公平だろ!!」


「ハハハハハ! なんとでも言えよ負け犬ども!! 遠吠え気持ちいい!!!!」


 超ハイテンションのヘルズの顔に、更なる敗北感と無力感を感じた俺はもうそれらしい言葉を見つけることができなかった。彼女の言う通り、負けは負け。負けたやつは何を言おうが負け犬の遠吠えであり、負け面なのだ。ヘルズはさぞかし気持ちのいいことだろう。結局俺は今回の戦いでドベという結果になったのだった。


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