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滅びと救いの彼方まで  作者: ナザラ
軍事国家アガン
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アガンという国 1

アガン王国。

軍事国家にして八王国の一つ。

人王が死んでも人が生きていけるようにと建国されたこの国は人類絶対主義を掲げており、今は他種族との戦争中だそうだ。


「この時期にアガン王国に行くなんて相当な物好きか力自慢と見ましたよ」


馬車を操りながら話す騎手は整地された道を進んでいた。

国と国とを繋ぐ道は常に整備されており、それによる物流の流れは活気に溢れている。

特に八王国同士と人王国を繋ぐ道は別格で、馬車の往来や商人の団体はもちろんのこと道に沿って村や街なんかもあるくらいだ。

カンバロッタ街がそのいい例である。


「いや、俺達はアガンに情報収集をしに行くだけだ」


ザルドがそう答えると「はぁ…?」と何処となく納得してない感じの返事が返ってきた。


「情報収集ですか?……アガン王国で手に入る情報なんてほとんどないと思うのですが?」


軍事国家アガン。

強さが正義の国であり弱さは罪とされる単純極論の分かりやすい構図となっている。

それゆえに商人やらはあまり近付かず、情報や物が入りずらい。

物価が高いのはそのせいであり、だからこそポーションを買ったわけだ。


「はむ…はむ…ぼりぼり…、なにザルド?このクッキーは上げないからね。私が買ったんだから」


「いや、俺の金…」


先ほど寄った村で買ったチョコクッキーをネズミのように食べるカリーナはプイッとそっぽを向いてしまった。

カンバロッタを出発してから2日が立つ。そろそろアガン王国が見えてくるのに俺達の仲は治ってはなかった。その理由はあの後さらにヒートアップしてしまい、オルウェン王国の時の鬱憤を吐き散らすまでに及んでしまったからだ。


「あぁ……そろそろ機嫌を治してくれないか?」


「別に怒ってないけど」


と言いながらも美味しそうなクッキーを頑なに譲ろうとせず黙々と食べていってしまう。

ハムスターのようにクッキーを口に沢山含んで膨らんだ顔を動かすカリーナに内心少しイラッと来ているがここで何かを言ってしまうと機嫌を損ねてしまうので我慢する。


「情報収集と言っても普通には広がんないやつだ。七色宗教についてだ」


「七色宗教ですか…。何やら奥深そうな話で」


カリーナの事はほっておいて情報収集について馬車の人に話す。

アガン王国は表向きはあまり情報が行かないとされているが、裏向きは違うらしい。

そういう理由でアガンに行くことにしたと話すと騎手は少しの間を開けて口を開いた。


「アガン王国には闘技場があります。そこで勝ち続けてください」


「どういうことだ?」


「…ささっ、見えてきましたぞ」


何かを隠しているのが分かるくらいの話の切り替えだが、そこはあえて触れないことにする。

きっと圧力や暗黙の了解もあるのだろうと自分の中で納得する。


「あれがアガン王国なの?」


クッキーを食べていたカリーナが馬車から身を乗り出して目先にある光景に目をやる。


まず目に写るのは巨大な壁だ。

白色の外壁に錆びた茶色の綻びが目立つ大きな壁。

まるで仁王立ちする巨人のような威圧を感じさせるその壁は「不落」と呼ばれており、建国されてから一度も敵に破壊されたことがない所からこの名前で呼ばれている。


「アガン王国は幾度の進攻を受けていますが、どの国もアガン王国の敷地内入った事はありません。その理由は主に四つあります」


騎手がアガン王国の強さについて語った。


一つは「不落」の存在。

高さ30メートル、厚さ15メートルの分厚い壁は敵の攻撃を全て無力化させる。


二つ目は壁の上に設置された様々な遠距離武器。

近づく者を全て蹴散らす圧倒的威力で敵を粉砕する。


三つ目はその立地。

アガン王国は山頂364メートルのドーム状の山の上に立てられた国であり、四方全てが坂道である。このため天然の要塞が出来上がっているわけだ。


そして最後の四つ目はアガン王国の個人の武力。

アガン王国は人類絶対主義の他に武力主義も掲げており、武力が高ければ富を手に入れられることや戦や闘技場で名を上げると多額の金を貰える事から一人一人の力が別次元なのだ。


「私は正直この国は好きではありません。良い噂も聞きませんしね。そちらのお嬢さん、決して一人では行動しないように」


「大丈夫よ、私強いですから」


騎手の忠告に、ふんすっ!とふんぞり返って答えるカリーナは無視して辺りを見渡す。

先程までの野原や自然はなく、硬い茶色の土だけが残ったハゲ山は幾つもの戦闘をしたことを物語る。


「さぁ、着きましたぞ」


大きな門の前で止まった騎手は一言二言、道を塞いでいた門番と話すと道を開けてくれてそのままアガン王国に入っていく。


「アガン王国…あまり変わらないな」


ザルドが見た光景は6年前と何ら変わらない沢山の酒場。

大門と同じ程の通りが一直線に伸びており、その左右に大小様々な酒場が店を開いていた。

もちろん酒場だけではなく、少し目を違う所に向ければ武器工房があり、また違う所を見れば奴隷売買がありとむさ苦しさのオンパレードのような国だ。


「食べ物で言ったら茶色の食材だけを集めたみたいね。胃もたれ起こしそう」


「ははは、お嬢さんは例えがお上手ですね。的を得ている」


笑う騎手は馬に鞭をうち雑踏する人々を掻き分ける。

波のように横切る人々や建物を目にする度に眉を細め嫌そうな顔をするカリーナは出していた顔を引っ込めて、ドスンッと深々と座った。


「私この国嫌い」


早く出たいと子供みたいに不機嫌になる。

城育ちのカリーナにとってはここは居心地の悪い所なのだろう。

先程までの強気のふんすっ!はどこへ行ったのだろうか…。


「安心しろ、俺もだ。用が済んだらさっさと出る」


しかし、居心地が悪いのは俺も同じだ。そもそも一般的な人はこの国を居心地の良い場所とは思わないだろう。

そんなことを口にすると目の前の赤い目が少し見開かれ、まるで驚いたような顔つきになった。


「へぇ…、ザルドってこういう所は平気かと思ったけどダメなんだ」


「逆に何で平気だと思ったんだ?」


「んー……顔からして?」


「てめぇ、人を見た目で判断するな」


「あはは、ごめんごめん」


喧嘩中なのに楽しくてつい笑ってしまった。

何故かは分からないが、先程までの居心地の悪さがザルドと話しているだけでなくなった気がした。

何事もない日常会話だけど、それがとても楽しい。

そう思うと胃もたれのような感覚が薄れて消えて…。


「……シャンプーはごめんね」


「は?……なに急に?」


顔を少し赤くしてモジモジし出すカリーナに最初はトイレかと思ったが、「シャンプー」という単語からそれは違うとわかった。

シャンプーと言えば2日前の事しかないがそれであっているのか。

いや、あってるか。


「いや、だから……お風呂長くてごめんって言ってるの」


「え?…」


謝ったのか……?あの頑固姫が。

俺はその真実に固まってしまう。

それはオルウェン王国で有名な話だ。カリーナ·オルウェンは悪いことをしても謝らない、謝ったとしても心からの謝罪とは思えない程の軽さ等々、優しく元気なのだが返事が軽いと有名なのである。


「長旅になるだろうから念入りにしておこうと思って……、道中臭いってザルドに言われるのは嫌だなって」


「おう…」


そんな陰キャのような返事しか出来なくなってきたザルドの頭は恥ずかしいながらも謝るカリーナにどう反応したら良いかという回答を出すために思考回路を全開にして回していた。

そんなことをしているとザルドもおどおどし始め、互いに口が開かない状態になる。


「合コンか」


騎手のおじさんもつい丁寧口調も忘れツッコミを入れてしまった。

しかし、ここで口を刺してはいけないと黙って馬車庫まで移動する。


「で、許してくれるの?」


「えっ?いや、許すも何も……俺もポーションの件があるから……ゴホンッ!遅刻はお前だけのせいとはいえねぇわな」


咳払いをして陰キャ口調から通常の口調に戻したが……なんか格好悪いことをしてないかこれ?。

なんて思ってるとカリーナがクスクスと笑い始める。


「目も会わせないで……くっふふ、私が正直に謝ったからって動揺しすぎよ。いひひ、でもこれで仲直りってことでいいよね」


くったくのない笑顔を向けてくるカリーナに俺も少し微笑んだ。

こうなってしまえば遅刻で喧嘩をしていた事が馬鹿に思えてきて、笑ってしまう。


「いやぁ、仲の良いカップルですねぇ…」


互いに仲むつまじく笑ってると前から面白そうに騎手がヤジを飛ばしてくる。

それに再度顔を赤くしながらも俺達は仲直りした。















































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