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第十章 四十人の出会い旅

第十章 四十人の出会い旅


企業間交流マッチング企画の第一回イベント。


その名も、


「乙女婚 企業交流ふれあいバスツアー」


参加者は男女それぞれ二十名。


合計四十名。


参加企業は五社。


メーカー、IT企業、金融会社、医療関連企業など、普段なら交わることのない人たちが集まった。


集合場所の駅前には、大型バスが一台停まっていた。


朝八時。


参加者たちは少し緊張した表情で受付を済ませる。


「本当に出会いがあるのかな。」


「仕事関係ではない人と話すのは久しぶりです。」


そんな声が聞こえる。


乙葉はマイクを持った。


「本日はありがとうございます。」


「今日の目的は、無理に相手を決めることではありません。」


「まずは、普段出会うことのない人と話し、その人の人生を知ることです。」


参加者たちは静かに耳を傾けた。


「結婚は、条件表から始まるものではありません。会話から始まるものだと、私は思っています。」


バスは出発した。


最初の目的地は、郊外の観光農園。


男女混合のグループに分かれ、果物狩りを楽しむ。


最初はぎこちなかった会話も、次第に笑い声へ変わっていった。


「同じ会社の人とは、仕事の話ばかりになります。」


「休日は意外と料理をするんですね。」


「私も自然のある場所が好きです。」


プロフィールカードには書かれない、その人らしさが少しずつ見えてくる。


昼食では、席替えを行った。


乙葉は一人ひとりの様子を見ていた。


無理に盛り上げる必要はない。


ただ、誰かが一人にならないように。


緊張している人が自然に会話へ入れるように。


それが、結婚相談所を運営してきた乙葉の経験だった。


午後は展望台へ向かった。


夕方、帰りのバスでは最後のイベントを行った。


「もう一度お話ししたい方がいる場合は、専用カードに記入してください。」


参加者は静かにカードを書いた。


結果発表。


第一回ツアーで、


交際希望成立――八組。


連絡先交換希望――十二組。


乙葉はバスの前で深く頭を下げた。


「本日はありがとうございました。」


参加者から拍手が起こった。


その夜、事務所に戻った乙葉は、参加者アンケートを一枚ずつ読んだ。


「久しぶりに休日が楽しかった。」


「会社以外の自分を見てもらえた気がする。」


「参加してよかった。」


その言葉を見ながら、乙葉は微笑んだ。


企業の名前も、役職も、年収も関係ない。


バスの中では、みんな一人の人間だった。


誰かと出会いたい。


誰かを大切にしたい。


幸せになりたい。


その気持ちは、どんな人にも共通している。


乙葉は新しい企画書を開いた。


次回開催予定。


「第二回 企業交流ふれあいバスツアー」


小さな結婚相談所から始まった挑戦は、少しずつ多くの人の人生を動かし始めていた。

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