32、夢幻
「カイト!無事ですか!?」
どのくらい意識を失っていたのか、目を覚ました瞬間先程の光景がフラッシュバックし、カイトの安否を確認してしまいました。
しかし、そこは何もない空間。
見渡せど見渡せど、あるのは空間のみ。
ここは一体どこなのでしょう•••?
私が意識を失っている間にどこかへ連れていかれてしまったのでしょうか?
それにしても、空も木も土もないここは現実とは思えません。
"風の精に愛されし人の子よ、ここは生と死の狭間。黄泉の岸"
突然聞こえた男とも女とも、若いとも年取っているとも感じる何とも不思議な声。
けれど、決して不快ではなく安心さえ感じる声の主は続けておっしゃいました。
"そなたは今、魔力の喪失により身体より魂が抜け出た仮死状態となっている。
本来ならここではなく、天上に行くべき魂だったのだが、そなたを引き止める者達に邪魔されここへ留まっているのだ。"
仮死状態•••!?それに引き止める者達??
突然の言葉に何の事かと思ったのですが、あぁ、そうか•••
あの時確かに自分の生命を糧に魔力を放出しました。
はっ、私がここにいると言う事は結界が消えている?カイトは!?皆さんは無事なのですか!!?
"安ずるが良い。みな無事だ。
そして、ほら•••聞こえるだろ?"
焦りの中で声の主より齎された内容に安心しましたが、一体何が聞こえると言っているのでしょう??
『姫様!リアンカ姫様!!目を開けて下さい!お願いします•••お願いします!!!』
『姫様ー!目を覚まして下さい!!』
『『姫様ーーーー!!』』
たくさんの声が聞こえてきました。
あぁ、良かった。本当に皆さん無事だったのですね•••
カイト•••私は、あなたを守れたのですね。
私はこらからどうなるのでしょう。
死んでしまうのでしょうか•••?
これから先カイトと共にいられない事を想像した途端、死を受け入れるなんて出来ないと拒絶の心が強く出ました。
カイトと会話も会う事も出来ないなんて•••嫌です!共に歩けなくても良い!カイトの生きる世界で私も共に月日を過ごしたい!!
騎士伝のあの少女のような潔さなんて私にはありません!!
あなたに会いたい。カイトに笑顔を向けられたい••••!
"ふむ、会いたいか。身体から抜け出てしまった魂であるそなたが、自身の身体に戻るのは容易ではない。
だが、それでもやると言うなら下界へと送ってやろう。
ただし、長い時間身体から抜け出たままになると、消滅するやも知れぬ。
それでもやるか?"
!?それでまたカイトに会えるなら。
「やります!お願いします、また共にいれるためならば•••!」
"良かろう。ならば行きたいと願う場所を思い浮かべるのだ。"
私が願う場所は、ただ一つ。カイトの元です!
リアンカの魂が下界へと降りていくのを見送り声の主は独りごちた。
"ふむ、会いたいとの気持ちは消滅すら恐れぬものなのか。
誠、人の心理とは面白い。
人の子の思いが勝つか、リミットが勝つか•••見ものだな。"
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