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『伝説の英雄たちは田舎で静かに暮らしたい ~25年前に魔王を倒した俺たち、村の子供を普通に鍛えたつもりが全員規格外になっていた~』  作者: オレンジペコ


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第36話 集積地を叩く

 翌朝。


 ギルドは、次の輸送隊をすぐには襲わなかった。


「今日は追う」


 ダリオが地図を広げる。


「荷物を止めても、また次が来る。だったら出てくる場所を潰した方が早い」


 ルークたち4人に加え、今回はギルドから冒険者が12人ついた。


「戦うかもしれない?」


「多分な」


「よし」


「だから嬉しそうな顔するな」


「してないって」


 もう誰も信じなかった。


 輸送隊は昼前に現れた。


 荷車3台。護衛は20人ほど。


 こちらは距離を取り、そのまま半日追う。


 やがて輸送隊は街道を外れ、山の中へ入った。


 その先。


「……多いな」


 ダリオが低く言う。


 谷間に古い砦があった。


 前に入った拠点より小さい。


 だが、人が多い。


 魔族だけで70人以上。


 荷車は10台を超えている。


「全部、魔王城へ?」


 ミナが聞く。


「そうみたいだな」


 フィンが目を細める。


「ここで集めて、一気に送るつもりだったんだ」


 ルークが剣に手をかける。


「じゃあ」


「ああ」


 ダリオも大剣を抜いた。


「叩くぞ」


 作戦は単純だった。


 正面はダリオたち。


 別の冒険者が左右を押さえる。


 ルークたち4人は、荷車へ向かう敵を止める。


「燃やされる可能性あるからな」


「了解!」


 号令。


 一斉に突入する。


「敵襲!」


「人間だ!」


 砦が騒然となった。


 すぐに30人ほどが正面へ出てくる。


 その中から盾兵5人がルークへ向かった。


「止めろ!」


「5人か」


 以前なら、正面から全部吹き飛ばそうとした。


 今は違う。


 ルークは最初の盾へ拳を当てる。


 ドッ!


 盾は壊れない。


 だが、中の男だけが崩れ落ちた。


「なっ――」


「次!」


 2人目。


 また盾だけが残る。


 3人目が止まった。


「何だ、その技……」


「まだ練習中!」


「練習でやるな!」


 敵の方が怒鳴った。


 エマは荷車へ火をつけようとした剣士を追う。


 男が振り向きざまに足を払った。


 体勢が崩れる。


 だが、エマは戻さない。


 そのまま地面へ手をつき、低い位置から斬り上げた。


「っ!」


 剣が弾かれる。


 さらに回転。


 立ち上がる途中でもう1撃。


「そんな姿勢から!?」


「私も最近できるようになった!」


 相手の剣を落とし、そのまま柄で気絶させる。


 ミナには魔術師4人。


 一斉に障壁を張る。


「正面は無理!」


「じゃあ曲げる」


 火球。


 放つ。


 途中で風へ。


 軌道が曲がる。


 さらに、壁を越えたところで再び火。


 ドンッ!


「術式が変わった!?」


「もう1回!」


「待て!」


 2発目は途中で土へ変化した。


 足元が隆起し、4人まとめて転倒する。


 フィンが遠くから見ていた。


「……5日前までできなかったよな?」


「多分」


 カレンが答える。


「考えない方がいいわよ」


 そしてノア。


 ほとんど治癒を使っていない。


「ルーク、左!」


「おう!」


「エマ、次は後ろ!」


「了解!」


「ミナ、3秒待って!」


「分かった!」


 傷つく前に避ける。


 崩れる前に支える。


 4人の動きそのものが、少しずつ変わっていた。


 戦闘開始から十数分。


 砦の中央に、ギルドの旗が立った。


 敵は降伏。


 逃走した者も、外周を押さえていた冒険者が捕らえた。


 死者は出ていない。


「終わった?」


 ルークが息を整える。


「ああ」


 ダリオが周囲を見る。


「集積地は潰した」


 荷車14台。


 魔石。


 魔道具。


 武器。


 これで大量の物資が魔王城へ届くことはない。


「結構大きいの止めたよな」


「かなりな」


「じゃあ今日は褒める?」


「調子に乗るな」


「やっぱり!」


 その時。


 砦の奥からカレンの声が飛んだ。


「ダリオ!」


「どうした!」


「こっち来て!」


 地下。


 倉庫。


 そこにあったのは物資ではなかった。


 壁一面に。


 1枚の地図。


 魔王城。


 その周囲。


 いくつもの赤い印。


 そして中央には。


 大きく1つだけ。


 日付が書かれていた。


「……何これ」


 エマが聞く。


 フィンが読む。


 顔色が変わった。


「出発日だ」


「何の?」


「ここにある物資全部」


 その日付は。


 3日後。


 ダリオが地図を見る。


「これ」


「この砦だけじゃない」


 他にも。


 まだ集積地がある。


 そして3日後。


 各地から一斉に。


 魔王城へ向かう。

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