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『伝説の英雄たちは田舎で静かに暮らしたい ~25年前に魔王を倒した俺たち、村の子供を普通に鍛えたつもりが全員規格外になっていた~』  作者: オレンジペコ


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第33話 真似しない

 翌朝、村の訓練場にはいつもより早く4人が集まっていた。


 昨日、先生たちの“今”を見た。だから今日からは、それをそのまま真似するのではなく、自分たちの形に変えていく。


「まず誰からやる?」


「別々でいいんじゃない?」


 ミナが言うと、エマも頷いた。


「その方が早そう」


「じゃあやるか」


 少し離れた木陰では、アルドたち4人が見ていた。口は出す。ただし、答えまでは教えない。それが今日からの方針だった。


 最初に動いたのはルークだ。昨日のバルクを思い出しながら、目の前の岩へ拳を打ち込む。


 ドンッ!


 岩は派手に割れた。


「できた!」


「できてない」


「え?」


「外に逃げすぎだ」


 バルクはそれ以上言わない。ルークは少し考え、今度は力を抜いて拳を当てた。


 コツン。


 何も起きない。


「弱すぎた」


「そうだな」


「難しいな、これ」


「だから自分で探せ」


 ルークはもう一度構えた。今度は全身を力ませず、足から腰、肩へと力を繋ぐ。


 表面に小さなヒビが入る。


「さっきよりは?」


「近い」


「よし」


 それだけで、ルークは嬉しそうに笑った。


 エマはレイの前で、わざと体勢を崩していた。


 片足。しゃがみ込み。地面に手をついた状態。


 どれも最初は遅い。


「レイみたいに綺麗に斬れない」


「だから真似しなくていいのよ」


「でも強いじゃん」


「私の剣は私の身体に合わせたもの。あなたはあなたで作ればいい」


 エマは少し考える。倒れそうになった体勢を戻さず、そのまま回転して下から剣を振った。


 シュッ。


 木の棒に浅い傷が入る。


「今のは?」


「私ならやらないわね」


「じゃあ私の?」


「まだ全然だけど」


「そこは褒めてよ」


 レイが少し笑った。


 ミナは1つの火球を浮かべていた。


「火から風……」


 術式を変えようとして、火球が消える。


「また!」


「作り直そうとするからだ」


 アルドが言う。


「じゃあどうするの?」


「作り直さない」


「そこから先教えてよ」


「そこを考えるんだよ」


 ミナは火球をもう一度作る。今度は全部を変えず、外側の流れだけを変えた。


 火球の周囲を風が回る。


「できた」


「早いな」


「本当?」


「うん」


 嬉しくなったミナが、そのまま雷まで足そうとする。


 バチンッ!


「痛っ!」


「欲張るからだ」


「……はい」


 ノアは3人を少し離れた場所から見ていた。


 治す前から、戦いを見る。


 昨日セリアに言われたことだ。


「バルク、ルークと少しやって」


「おう」


「え?」


 ルークが振り向いた時には、バルクがもう動いていた。


 拳を避ける。次も避ける。


 ノアはルークの足を見る。


「右足、危ない」


「え?」


 次の踏み込みで、ルークの足首がわずかに崩れる。


 その前に、ノアの治癒が飛んだ。


「あれ?」


「今、先に治した?」


「多分」


「多分って」


 セリアが頷く。


「それでいいわ」


 ノアは少し考えた。


「でも、分かるなら避けさせた方がいい時もあるよね」


「そうね」


 ノアの目が少し変わる。


 治すだけじゃない。


 戦いそのものを崩さないために見る。


 昼前には、4人ともかなり疲れていた。


「全然できない」


 ルークが座り込む。


「でも朝よりはできる」


 エマが言う。


 ミナも頷いた。


「次にゼルガと会うまでに、もう少し形にしたい」


「同じままだと、また読まれるからね」


 ノアの言葉に、ルークが笑う。


「じゃあ次は、知らない技を持っていこう」


 4人はまだ完成には遠い。


 それでも、もう先生たちの真似だけをしてはいなかった。


 29年前の英雄とは違う。


 自分たちだけの戦い方が、少しずつ形になり始めていた。

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