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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【アイスピックでそれを突き刺せよっ!!】  作者: Nomulesse oblige
第三部

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第96話 隣に頭の良い人がいるのは大分幸福である幸福である。

「グゲえ」


 俺はペンを握ったまま、机に倒れ伏す。

 昨日と構図は全く持って同様だった。

 ただ、やっている場所が違うと言うだけだった。

 聖良さんは相も変わらず、ゲーム三昧。華月さんと四戦ほど交えたと言うのに、まだソロプレイを敢行中だ。それもちょっと飽きて星宮を道連れにして一緒にプレイしている。星宮も頭いいものな。俺みたいに勉強しなくても大丈夫だものな。聖良さんは勉強しなくても大丈夫なのか?と思ったけれど、しかし、昨日と違って華月さんは分かりやすく怒鳴ったりはしなかった。


 曰く、彼女は勉強をしていないだけで、頭はそれなりに物覚えはよかったらしい。

 俺とは別の世界の生物だったらしい。ふざけんなよ。仲間じゃなかったのかよ。

 その絶望感で勉強なんてやってられもしないさ。


「ねえ。貴方ってどうやってこの高校に入って来たのよ」


 華月さんは俺が解いた練習問題を見て唖然とした。

 しょうがないだろう。俺は長らく不登校児だったんだ。そりゃ、勉強なんてできるはずがない。況してや、進学校の勉強なんてな。


「得意科目は算数です。よろしくお願いします」

「得意にも見えないわ。ここの数式普通に足し算、引き算の間違いだもの」


 得意科目がなくなった。


「昨日やったのに、もうやり方忘れたの?」


 ははは。忘れてしまったよ。

 一つたりとも思い出せない。


「数学だけで、夏季休業期間が終わってしまうわ。あと、英語もやらさなければ、ならないから、夏休みが二つ要るわね」

「Eigo……?」


 俺は首を傾げる。

 英語なんて一つもできないんだけれど。


「英語で数学やりますか?De Morgan's laws are rules in set theory and logic that describe the union (or), intersection (and), and complement (negation) relationships of sets.」


 右から左に抜けていく。ああ……。何言っているか分からない。数学のページをペラペラとめくって書いていない答えを探そうとする。

 完全に頭を抱えられた。


「その顔で分かったわ。貴方、この学校に入ったのは推薦ね」

「推薦は頭悪いという先入観をやめて下さい」


 そもそも何で入ったのか見当も付かねえよ。そういうことは桜場さんに聞いてくれよ。


「それもそうね。結果はどうであれ、結局、貴方はおつむが弱いもの」


 致命的なダメージをグサリと刺すのはいつもの華月さんだ。

 それに反発できない。だって事実だ。

 俺はまたぐったりとしたくなる。それに鞭を打つように彼女は睨みつけるので、脅されれてペンを動かした。彼女が監督する目がなくなると、怠けてしまうのは言う必要もなかったけれどね。


「ねえー。ダーリンまだ終わらないのー」

 

 わざわざ、奥の俺の部屋を開けて聖良さんはそんな抜けた声を言った。


「見ての通りよ。彼はバカなの」


 はっきりと言うのもそれはそれで傷が付く。


「ダメだよ。そんなはっきり言ったら、できることもできないから」


 星宮は分かってくれるらしい。それなら、星宮に教わりたいくらいだ。星宮型なら華月さんみたいに毒っけ(いつものことだけれど)ある教育じゃなくて、よくある塾のキャッチコピーみたいに褒めて伸ばしてくれるだろう。断然そっちの方がいいよ。


「ははは。褒められても僕からは何も出ないよ。というか、結音ちゃんに教えてもらうのが一番いいよ。入学してからずっと学年一位らしいんだろう?定期テストも模擬テストであってもさ」


 まあ。納得である。

 1章目の華月さんの印象なんて図書館で、教室で、勉強しかしていない。一章後としてもである。


 その努力は認めようと思うし、能力も認めようと思う。

 その手腕は強引だと思うけれど……。


「何よ。不満があるわけ?」

「………。ないです」


 俯いて首肯した。


「じゃあ。この問題解いて」

「はい」


 俺は疑問を呈することもなく、必死に白紙に数字を書き込んだ。

 不正解だった。


「この調子じゃ。だいぶ掛かるわね。明日も来るわ」


 分かっていた。分かっていたけれど、来る?


「ええ。貴方呼んでも必ず起きないでしょう?」

「あ……。まあ」


 そんなことないけれど?とは否定できなかった。


「だから、夏季休業期間が終わるまで毎日毎日教えに行くわ?いいでしょう?」

「本当に言っている?」


 図書館とかなら構わないけれど……。本当に家庭教師じゃないか。


「旭くん。明日もここに集合ね」

「あ……。うん。そうだね」


 星宮は口を歪ませた。思うところがあるらしい。俺の部屋そんなに居心地悪かったのかな?と、不安になった。

 とんでもなく居心地が良さそうにしている聖良さんと対照的だ。もう、自分の部屋の如く、くつろぎ倒している。

 おい。俺に勝手にコーヒーを淹れるでない。許諾を取れ。許諾を。


「何を別のことにうつつを抜かしているのよ。四季くんが見てもいいのは数字だけよ。0と1だけの世界で生きるの」

「コンピュータじゃねえかよ」

「じゃあ。コンピュータに勝ちましょう」


 俺はノイマンにでも育てようとしているのか?

 

「まずは、チャートを終わらせましょう?」


 一冊分全てと付け加えて。あれ。それ華月さんがやっていたチャートじゃありませんか?

 それやり終わるのに、一週間程度かかっていませんでした?華月さんよりもスペックの低い俺が7分の1で終わらせられる訳ないじゃないか。それこそチャートじゃなくてチートを使わなくてはいけないじゃないか。


 この後、膝腰が壊れるまで、解き壊された。

 明日も家に来るらしい。もう勘弁してくれと思う勉強会2日目だった。



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