第91話 夜遅くに帰るのも青春でしょう。だから、怒らないで。
カノジョと帰路を別れて、日も落ちて、街灯が街を照らすような頃に自宅へと舞い戻った。平穏な我が家である。ふうと気も抜け落ちていくものである。
浜辺で目を覚ます驚きの事件はあったものだから、余計にそう感じてしまっている節もあるだろう。今日はゆっくりとベットで休養を取るべきだなと、玄関の扉を開けた。
開けたのに閉めたくなった。
「えっと。お、お兄ちゃん。帰るの遅かったけれど、何していた訳?」
妹は玄関に立ち塞がるように仁王立ちをして、完全にご立腹なご様子。
今は大体11時程度。そんな時刻まで起きて、なぜ俺が入ってくるタイミングが分かっているのだ?
「い、いやあ……。友達と、ちょっとそこまで?」
「友達ぃ……?いつものあれ?聖良さんとかいう人?」
なぜ妹がその聖良さんを知っているのか甚だ疑問であったけれど、コクコクと首を縦に振ることでしか、逃れられなさそうだったので、そうしておいた。
「へえ。恋人とか?」
どうしてこんなにピンポイントで正解を引き当ててくるんだ?まあ……。心情的にはうんともすんともしたくない関係性なのだけれどさ。しかし、妹というのは兄と少なからず遺伝子を共有してるからという単純明快な答えでは導き出すことは不可能に近いと言うのに……。
「そう言う訳じゃないよ……」
俺はやや、下方に俯きながら、否定をした。
「それならいいけれど……」
全てを見透かした目でこちらを覗き込んでいるように感じる。俺を試していると言うのだろうか?それなら選択肢を大幅に間違えてしまったのは言うまでもないのだが。
「でも、うちはてっきり、お兄ちゃんはさ。華月さんみたいな人が好きなんじゃないかと思ったいたよ」
またまた話したかどうかわからない人が話題として壇上に上がった。
「ど、どうして?」
「いや、聖良さんってなんて言うかお兄ちゃんが好きそうじゃない。チャラそうな人じゃなくて、おとなしい黒髪の委員長とか好きそう」
その好みの分析は清々しいほどに当てっている。
だが、おとなしい黒髪の委員長は絶対に華月さんではない。言うなら、舞賀さんでしょうに。
「いや、好きか、好きじゃないかで、話していないけれど、友達とちょっと行っていただけであるし……」
「はいはい」と流していう。俺のことを話半分で聞いているようだった。
「じゃあ、聖良さんは好き?」
「は?」
「なら、華月さん?」
俺は困惑と、ついさっきまで体験した甘々な恋人生活を思い出してしまって照れてしまった。おい、妹に華月さんが好きだと思われたじゃないか。
「はははっ。キモぉ。お兄ちゃん」
見下して目を向けてくる。
妹から聞いたと言うのに、引くんだよ。引かない覚悟ぐらいは持っておいて欲しいものだ。心底傷ついたではないか。もう一人で隅っこで三角座りをしたいと思った。
「はいはい。キモいお兄ちゃんだから、もう自分の部屋に戻っていいですか?」
「いやいや、いやいや。ダメだから。ストップ」
大の字に手を広げ、もっと進路を塞ごうとする。
「何?」
「いや。まだ話が終わっているようには感じなかったでしょう?」
「まあ。そうだけれど……」
「じゃあ。ちょっとばかし喋ろうじゃない」
どうしてこんなにも念押して、俺を足止めしようとしてくるのだろうか。
大分、鬱陶しいというか思っているぞ?
「もう疲れているから……」
「それなら、最後に一つだけ、質問してもいい?」
「何?」
「お兄ちゃんはさ、ツンデレドライの黒髪清楚か、ツンデレ不条理の金髪ギャルならばどっちが好み?」
なんだか、容易に想像ができてしまうラインナップなのは、言うまでもなかった。
そして、俺が回答に迷うこともなかった。
すうっと息を吸い込んだ。
「どっちもお断りだ」




