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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【アイスピックでそれを突き刺せよっ!!】  作者: Nomulesse oblige
第三部

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第89話 ビーチなんて気分じゃない。

 桜場さんなんか言う別の女の子の名前を出したからか、露骨に聖良さんの機嫌は悪くなった。


 彼女はカノジョらしい。

 何が罷り間違ってそうなるんだ?一時期、擬似カノジョとして、彼女は俺の隣に君臨していたのだけれど、それはやはり擬似の域を出なかった。擬似から始まる物語など、ラブコメでもあるまいが、存在しなかった。なのに、この状況はなんだ?これはどう考えても、俺の知らないところで一番最初から路線変更が行われているに違いない。


 さっき急に桜場さんの話をしたら、こんなに不機嫌になっているのだ。その上に俺たちどうやって付き合ったの?とか質問を繰り出せば、鈍器で殴られたとて、反論の余地なしだ。

 

 そういうわけで俺は口を噤まざるを得なかった。口を噤んだまま、適当に状況に適合させるしかない。


 えっと。俺と、聖良さんが恋人だっけ?

 うん。あり得なさ過ぎて無理かも……。

 俺は一歩だけ、後退した。


「ほらぁ。ボサッとしてないで、早く海で遊ぼー」


 遥か彼方の水平線でそんな声が聴こえる。

 もう、向こうの海まで駆け出している。


「はあ、やれやれ元気なものだ」


 俺は仕方なく、本当に仕方なく、機嫌を損ねてしまった後始末に聖良さんを楽しませる義務感で、とぼとぼと彼女の元へ歩き始める。


 そうして、波が爪先つまさきに当たるか当たらないかぐらいの位置で静止した。


「えっと。何をするんですか?」


 俺がボサッとした顔で尋ねたところ、彼女は寝ぼけ眼にちょうどいい水を浴びせた。


「冷たっっ!!」


 気温は夏。冬に比べて温度は高いだろうけど、冷水なのは変わらない。

 

「あはは」


 はにかんだ笑顔で俺を笑う。本気で本当に恋人のようだった。

 なら、恋人である俺がしなければいけないことはこれだ。

 波の中に入る。腰を低くする。手皿でカノジョに水をかけた。


「やったなああ」


 聖良さんに水をバシャッとかけ返された。

 俺も負けじと掛け返す。彼女も掛け返す。俺もかけ返す。ムキになった彼女が俺を追いかけていく。

 燦々《さんさん》と照らす太陽に向かって、駆け出してる。


 ああ。典型的な青春をしているようだ。

 

「はあはあ、はあはあ。結構疲れたもんだね。バカみたいに走り回るからさ」

「俺も疲れたさ。結構……」


 散々走り回ったからか、砂浜には俺たちの足跡だらけだ。それに達成感を抱かないわけはないが、普段1つも運動してない俺だから、こんな少量で一週間の体力を消耗してしまったみたいだ。俺は前屈みになって、息を整える。

 

「ナヨナヨしすぎ(笑)」

  

 パンと背中を叩かれる。


「疲れたんだったらさ。あそこの店でジュースでも奢ってくんない?」


 聖良さんは無邪気に向こうの方を指差した。

 海の家って言うやつだ。

 大体、そういう店は観光地価格なもので、奢るにも抵抗がある。

 聖良さんはそう言うことをわかっているのだろうか。いや、わかっていない。分かっていたなら、そんな上目遣いをしない。パチパチと瞬きなどしない。

 そう言うのに俺はめっぽう弱い。


「ああ、しょうがないなあ。買うから、買うから勘弁して」

「やったああああ。じゃあ。早く行こう。さっき通りかかった時に目星をつけていたんだよねぇ……。限定かき氷」


 え、え。俺がそう言うことを予期していたみたいじゃないか。押せば負けることを知っているような……。そんな感じで、強制的に引っ張られていく。

 一瞬で先ほどの言動を後悔した。


「はーい。お兄さん。この限定かき氷くださーい」

「はいよっ。1200円」

 

 またまた後悔させる値段だった。


「あれ。ダーリンは何か頼まないの?」

「頼めないから」


 俺のおこづかいなんて雀の涙以下だから。いい歳して妹に管理されているバカな兄貴だからさ。


「あっそお。じゃあ、半分こする?」

「まあ。俺のお金だから……」


 当然……。

 いや、待て、半分こ?半分こというのは子供の喧嘩を収めるときの伝説の技じゃないか!?それかカップルが何故かするやつ。見てて恥ずかしいやつ。俺はそれになりたくはなかった。けれど、すでにカップル限定品を共に食べていたことを思い出す。だからと言って、これを口実にこれもいいやと雪崩式に妥協できなかった。


「いや、やめておく」

「なんでよお。いいじゃんか」

「無理なんですから……」

「もおっ」


 プクウッと頬を膨らませた。

 シャコシャコとかき氷を掻き回して一杯掬すくう。


「これでも喰らえっ!?」

「!!」


 口に含まれた冷たい氷は茹で蛸のように茹で上がった頭にように瞬時に溶かされた。

 間接キッスの嬉しさなんて一つもない。むしろ狂気に染め上げられた。


「あああああああああああ」

「ははは。可愛いー」


 いじらしくはにかんだ聖良さんは俺の頬をツンツンと突いた。

 バカにしているのか弄ばれているのか。

 俺の頭の中も知らないで。おかしくなりそうだよ。


「でえ。これ食べたらどうするー?」

「いや。もう帰りたいんだけれど」

「いやいや。まだ夏は終わらないからああ」


 また腕を引っ張られる。今日は腕が引きちぎられても、おかしくない日だっ

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