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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第9話 GLに希望を。

 残された敗者に構ってやるほどに俺はその敗者の神々聖良みわせいらと仲良くない。

 できることなら仲良くはしたいが、先に華月さんと友達になってしまったので、その線は薄い。


 それどころか、特に何もしていないはずの俺が、背筋が凍りついて後遺症を残しそうな勢いの眼力をお見舞いされていた。

 これはどう転んでも仲良くできなさそうな人種だ。


 その人はいまだにテニスコートの地面を這いつくばっている。負けた味を噛み締めている。だからと言って群衆が彼女に石を投げつける意思を持っている訳でもなくて、同情とも取れぬ気まずい雰囲気を纏っていた。


 それもまだはるかに良い方なのかもしれない。強者に噛み付く小物や悪い言い様だが、いじめっ子ムーブをかましているようなイメージで、あっけなく惨敗したものの末路は決まって次のターゲットだ。それだけは見ていて後味が悪い。


 陰口を叩かれているか?その取り巻きたちが切り離すような動きを見せていないか?

 うん。問題ないね。


 そんな問題を起こすことができないくらいこの華月さんという存在は偉大で眩しすぎたのかと考えれば、それはそれで悲しかった。

 まあ。これも勝手な推測、憶測でしかない。

 

 とりあえず、じゃあこの場の神々さんのアフターケアに最も適任な星宮に全部まるっとなんとかしてもらえば良いとして、俺は堂々去っていった華月さんを追うことにした。


「おっ。シッキー。こんなことなったけれど、問題が収集ついた後、また来てや」と唯一無二で明るいスコート姿の女子。


 ははは。こんな暗い雰囲気で送り出せるとか彼女はどんなメンタルをしているのか。そこが気になったところであるので、スポーツ嫌いの俺でもまた赴こうと思った。


 また今度ね。俺は今すぐに向かわなければならないところがあるからね。

 あ、あれ?それはどこなんだ?


 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


 華月さんの居場所はどこだというのは多分人に聞けばすぐに見つかるのであろう。

 だが、そんなこと無理だ。

 陰キャにそんなハードルの高いことはできない。


「ああの…えっと…」と拙い言葉を発して、女の子に遠い目をされて爆殺される自分が想像できて心が痛い。


 廊下を歩くたびに女子たちから好奇の目にさらされる。視線が針のように痛くたまらない。

自意識過剰かもしれないが、こんな自分が誰にも聞けるはずなく、一人見知らぬ校舎を徘徊はいかいした。


 こっちの方が不審者極まりない。

 あっちこっち漁って空き巣みたいだ。こんな気分になるなら早く帰りたい気持ちが湧き上がってくる。もう、華月さんとかどうでも良いじゃないか。てか、もう流石に華月さんは帰ったんじゃないかと思った。俺ならそうする。そうじゃん。じゃあ。帰るべきだ。帰るかと、きびすを返して俺は来た道を辿たどろうとした。


 しかし、行けども来た道ではない気がする。あれ?俺どこから来たっけ?左右確認。さっぱりわからない。ここは通った気がするし、しないし。


 あ、迷子だ。

 高校で迷子だ。え?なんで。抜け出せないのは迷宮とかじゃないの?だとしたらこの高校広すぎるだろ。ここがどこなのか行方不明になる程とか限度を知らないだろうこれは。


 いや、違う。俺がヘンゼルとグレーテルの彼ら彼女らのようにパンで道標を作らなかったからだ。と実現性の低い後悔をしつつ、しょうがないので当てもなく歩く。


 歩いて、歩いて、たどり着いたのは図書室だった。

 図書室か。目的とは別だが、図書室の場所くらいは初めに把握しとくのもいい。これからここにお世話になるだろう。一人でいてもおかしくない素晴らしい場所だからね。中学の昼休みはほとんどここにいた気がする。それかトイレ。

 ああ。嫌な思い出は封印しよう。そうしよう。目の前の扉を開こう。


 俺は適当に扉を開く。

 わあ。内装は意外でもなく広く、蔵書の数だって半端じゃないだろう。国立国会図書館並みにありそうだ。これは三年間の暇つぶしに事欠かない。

 この高校に入って初めて、嬉しくなった。


 いや、待てよ。漫画やラノベのない蔵書なら地獄だ。

 そんな地獄を回避するかのごとく前方。一番目立つところにライトノベルの文字が鎮座していた。

 

 えっ。まじーっ。俺は真っ先に走って飛びつく。

 そのおぞましいほどの量が整列しているそのラノベの棚に食いつく。


 そして適当な本を選んで、開ける。パラパラと吟味する。あ。ん?な、何これ。

 いや、違うよね?と思って別のタイトルを開ける。あ、あー。もう一つでも、二つでも見てもさほど変わらなかった。


 主人公が女。ヒロイン。ヒーローというべきかな。一人、二人、その多数。男しか出ない。

 あーれ。これ前の世界のライトノベルの価値観が反転しているようだ。どうして反転しているのだろう。別に男女の価値観が反転しているわけでもないのに。需給の差なのだろうか。男が圧倒的に少ないから女向けが多いとか。そんな具合だろう。


 この作品も価値観が反転しているだけ、そう。反転しているだけ……なんだけれど、なぜだろう。全く受け付けない。

 パンチラとか男のパンチラとか見られない。吐き気する。


 え。こ、この世界は俺に逃避先がないのか。そういうお色気系のラノベが受け付けないとか……。嘘だろ。嘘お。これが一番の絶望だった。

 床に手をつき、絶望感を表現したいと思ったが、ラノベ棚の前でそんなことしているのは変態ほかない。

 この本当の絶望感に苛まれている俺。二度とあの面白いラノベたちを読めないのは最悪だった。


 まあ。この機会に世界の名著を読むべきか。

 落胆しつつも、俺はそのコーナーへと赴こうとした。あっ。

 ラノベの棚。光り輝く世界の名著よりも名著に感じたそれ。


 ページを恐る恐る捲る。これで前の世界とは違ったら、それはもう救いようがない。

 ペラペラペラ。絵を中心に見る。

 はっはっはっ。さ、最高。よ、良かったあ。

 狂喜乱舞である。俺に読める素晴らしき作品群はあったのだ。


 それは百合作品群だった。

 どうして学校の図書室にあるのだ?前世界で言うならBLコーナーが設立されているみたいな。

 まあ。そんなことは気にしても仕方がない。

 気にせず、百合作品群を見るけれど、どれも最高だった。

 ははは。これは読みふけらざる得ないなあ。

 俺は気になる作品を数点抜き取って、手頃な椅子に腰掛けた。


「あら。驚き。四季くん、貴方姫男子だったのね」

「え、あれ?華月さん?」


 ぎくっと。親にえっちな本が見つかったみたいに。

 百合作品の俺とのマッチの嬉しさを越して、俺の信頼感が音をたてて崩壊していく。


 絶望的な表情を浮かべる。

 対照的に華月さんは机に勉強道具を広げて俺の方を向いて微笑む。

 もちろんそれは皮肉たっぷりで。

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