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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第10話 図書室はお静かに。

「勉強してるんですか?」

「あら。見て取れない?国語力の欠如が酷いわね」

「いや、ほら分かるんですけれど。な、なんでですか?」

「そりゃあ。いくら私が天才だからと言って勉強せずに満点を取れる教科などせいぜい四つか五つなものよ」

「満点を目指しているのですか……?」

「当たり前じゃない。満点を目指さない人はいないわ。七割、八割取ったらいいと満足すれば後は現状維持というじゃない。現状維持は後退よ」

「それはまあ。志が高いことで」

「あら、全然普通ではあるわ。私が直々に四季くんに教えて差し上げましょうか?」

「いいや。良いです」

「断らなくても良いのに。せっかく私が教えてあげると言ってあげているのに。こんなこと言うの点がひっくり返っても言わないことなのだけれど。それともあれかしらそのG Lを読むのに忙しいのかしら。さっきから気持ちの悪い笑みを浮かべていたけれど、ここは公共よ。公共の場でお盛んになるのだったら視界から消えてくれないかしら。目に毒だわ」


 酷い言いようだな。相変わらずの毒舌に流されてしまっていたけれど、なんでこんな当たり前に何事もなくちゃっかり図書室で勉強しているのだ?

 そういえばそう。


「俺は華月さんを探していたんだよ」

「何?やっぱり勉強を教わり来たんじゃない」


 どんだけ教えたいんだよ。華月さんはそうやって知識をひけらかしたいタイプじゃないでしょうに。


「まあそれはもう、別の機会に考えるとして、あれだよ。華月さん。テニスの件」

「ああ。そうね」


 スンと態度が引いていくのがわかる。よく動いていたペンがぴたりと一刹那止まった気がしたが、すぐに数式をならべはじめた。

 友人としての俺から、敵としての俺のようなそんなモードの切り替えを感じた。

 軽い気持ちで冗談を言ってはならないような厳かな空気。


「神々さん、すごく落ち込んでいました」

「そう。それは自業自得ね」


 そう。自業自得。彼女が勝手に突っかかって自爆をした。華月さんは加害被害の話をすれば白確定被害者の地位を獲得できる。


「それは、そうなんだけれど……」

「それで終わりでしょう?」

「お、終わりだけれど…。終わりじゃないって言うか」


 なんとも言えないんだよな。責めるのも責められない行動。頭のおかしな女子が突っかかってきたなら、そうして毅然と屈することなく対応する。それは正しい。


「ほら、あれですやん。そんな正論ばかりで殴っていたら、彼女みたいなのが生まれるのですよ?」

「あら、あんな化け物が生まれるなら気をつけようからしら」


 一つも面白くもないものを見るように脳内の台本を棒読みで読み上げた。

 反省の色ぐらい演技でも良いのに見せれば良いのに。そうすれば俺一人ぐらいなら簡単に騙せて、そこまで煩わしそうな顔を浮かべることもなかったのだろうに。


 だが、その演技をするだけでも、無理と拒否感を露わにするほどか。


「な、なんでそ、そんな頑ななんですか?大人らしく謝れば良いのに」


 俺はその態度にバカらしくなって声を荒げて聞いてしまう。それはもっと直球なことだった。


「ほう。もう初日で私にそんな態度を取られるのは流石にあの星宮旭でもしなかったわ。四季くん。貴方が初めてよ」

「それは話題逸らしですか?やめてください」

「説教?説教したいならやめなさい。私より四季くんが正しくなれることなどありもしないから」

「いや……」


 俺はこの後口をつぐんでしまう。ちょっと冷静になって考えてみる。だって別に責めるところはない。完璧だ。天才的だ。


「まあ。説教したいことにするよ」

「あら。呆れた。貴方がもう少し賢いと思って勉強に誘ったのに、そんな頭ではどうにもならないわ」

「そーですか。なんでも言っといてください。でも俺は言いますからね。華月さんは正しいです。ですが、正しいだけでは人間関係なんて破綻しますよ。そんなの誰が見たって明らかじゃないですかっ」

「そう」

「わかっているでしょう?こんな初日に出会ったやつにだって異常性がわかるんですよ?」

「ええ。そうね」


 ペンを動かす。シャッ。シャッ。とうるさいと感じるにはその音は五月蝿うるさかった。

 聞き入れてもらえるのだろうか。

 わざと聞こえなくしているようなそんな悪あがきに思えて他ならない。


 だから、俺はいらないことをあーだこーだと言う。

 それはもうつらつらと、彼女の正しさについて正しくないことを。

 すると、手を掴まれる。


「黙ってもらえる?消えてもらえる?ここは図書館なのよ?百合本でも眺めていれば良いわ」


 ぎろりと睨みつけられた。

 おっと……。俺が調子に乗りすぎたようだ。こんな隙のない彼女の隙を正すのに躍起なのは間違いないが、やり方は重々間違えたらしい。


 それはもう話を聞いてもらえなさそうな体制ではあった。

「あの」なんて言ってしまったら、どう足掻あがいたって俺の力では信頼の失墜だ。

 仕方なしと言った形で俺は図書室を後にするのだ。


 その時GL作品を数冊借りるちゃっかりさも忘れずに。

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