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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【選択権はここにあるっ!!】  作者: √宮ハルヒ
第二部

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第71話 陰陰、陽陽が一番良い。

「ごめんね。台持ってきて貰ってさ。《《男》》なのに、非力でさ」と凛々しい顔つきのまさに美形好青年の舞賀さんが申し訳なさそうに慇懃に一礼した。妙に男を強調した物言いだったことを突っ込むのは野暮だから精一杯スルーした。


「そうそう。もっとお礼を言って貰わないとわたくしは敵に塩を送ったことと変わらないからさ」

「ははは。ありがとう」


 どこからともなくひょっこり現れて、しゅうとめみたいなねちねちした小言を聖良さんは吐く。舞賀さんは圧倒されてそんな言葉を言わされた。陰キャは陽キャに逆らえない。それが体現されているようだった。こいつは殴らないといけねぇと拳を握った。


「そんなやつには礼をする必要はないから」

「でも……」


 舞賀さんははっきり言わずにそれで止めた。

 モゴモゴといじけた態度だった。取り繕っているつもりでも、本質はやっぱり舞賀さんである。変わりに俺がはっきりと言うべきだろう。


「あのですね。綺麗事の道徳は綺麗なやつに使いましょうよ。人間の対応なんて鏡写しでいいんですから」

「そう……なの?」

「心理学には相手の動作を真似ることによって親近感を与えるミラーリング効果という手法があります。ぞんざいに扱っても好意を持たれますから」

「わたくしの貴方への好感度は降下中だよ」と呆れたように聖良さんは言った。

 呼応するように、舞賀さんは絶望的な表情になった。


「舞賀さん、それ冗談だから、ね。大丈夫だから」

「あ、ああ……」


 完全に萎縮してしまっている。

 生まれたての子鹿よりも震えていらっしゃる。


「わたくし、ほんと変なこと言ったのか?なんか思っていた反応と違う」

「やめてくださいよ。舞賀さんは弱いんですから。人に話しかける時は何か用がないと喋れないんですから」

「そーなの?いつもいつも威張り倒している五月蝿うるさいやつという認識しかないんだけれど」


 人に恐怖を抱かない聖良さんのその無頓着な態度は舞賀さんを壊すのには十分すぎる威力を持ち合わせていた。

 もっと萎縮して、萎れて、縮んで、枯れてしまった。


「舞賀さああん」


 本質陰キャの弱虫の彼女には聖良さんは早かったみたいだった。

 泡吹いて倒れてしまっている。


「アホらし。わたくしは別の人を手伝って来ますわ」と俺らの茶番に嫌気がさしてどこかへいってしまった。そして入れ替わるように舞賀さんが体を起こした。


「行った?」

「行ったよ?」


 舞賀さんは露骨に胸を撫で下ろした。


「いやあ。ああいう人がいるのは、緊張してしまうよ。でも、あなたは自然とそういう気持ちにはならない」


 それは安易に俺を陰キャだと言っていることになりませんか?まあ。その通りなんですけれど。


「そんなきみにお願いしてもいいかな?」

「何をですか?」


 上目遣いで、近づいてくる。俺は不覚にもドキッとしてしまった。


「生徒会選挙の原稿用紙だよ。ボクさ、あの……あがり症だから、ちょ、ちょっとあの……。練習したくて……。私の家でさ……」


 家!?家で?なぜに……。

 放課後教室で練習するのは何気に雰囲気の魔力はあるけれど、相手の家で、というのはありえないくらいの魔力があるのだ。


 しかし、俺しかしらない秘密がある。舞賀さんは男の子じゃなくておとこの娘。つまりは女の子なのだけれど、えっと。女の子に誘われているということなのだから……。え?不味くない?


「あの。でも……」と俺がそうしてやんわり断ろうとすると、「大丈夫だぞ?男の友情じゃないか」と自信満々にそう言ってくる。


「違うじゃないですか」

「言って初めて気づきたよ」


 なんて抜けている人なんだ。それでよく品行方正なんて看板を掛けようと思えたな。


「だったら、やめます?」

「いや、でも……。ボクって男ということで通っているじゃない……」

「そうですね」

「それに、ボクってば、舞賀家の当主って立場じゃないですか……」

「そうですね」

「でも、周りは女の子だらけですよね?」

「そうですね」

「それで、下手に女の子を連れてきたら、ほら、色々と野次を飛ばされる訳ですよ」

「そうですね」

「けれどね……。そうしてグダグタとうだうだとしていたら、誰も連れて来れなかったので、舞賀本家の方々からはボクはお友達がいないと思われているのですよ」

「そうですね」

「泣いちゃうよ」


 そう言いながら、わんわんと泣き始めた。男ということで通したいとしているのにどうして、女々しい態度を取るんですか。めんどくさいなあ。もうめんどくさくて“そうですね”botと成り果てたかったというのにさ、そんなに泣かれたら、俺はこう提案するしか無かった。


「じゃあ。俺が友達ってことで良いですか?」

「はい。《《男》》友達として、ついでに本家の人に紹介します。いえ、それがメインです」


 また男という言葉を強調した。

 もっと男らしくしろと何遍思ったものか。


「ぶっちゃけたね」

「ぶっちゃけました」


 まあ。そうされた方も楽なのは陰キャだからであった。

 目的意識がわかると一直線になれるものだからである。友達付き合いもそれくらい打算の方が分かりやすくて良いかも知れない。


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