第70話 脇役どものチームワーク。
「えっと。俺はどうして連れてこられたんでしょうかね……」
後頭部を掻きながら周囲を見渡すと、ここはどうやら体育館らしい。
私立のそれにゲームの中の学校だからか、普通の体育館よりも広く感じた。
「そりゃあ。手伝ってと言ったじゃないか」
「言ったけれど、何を手伝うのかそこがはっきりしていないだろう?」
「生徒会選挙の立会演説会の設立準備。現生徒会全員と、生徒会候補では人手が足りなくてね。四季を駆り出したわけ」
「それなら、捻くれた連行方法じゃなくて、ちゃんと言ってくれたら、手伝うくらい義理ありますよ」
「連れ出されてからならいくらでも言えるんだよ」
嫌な返しをするなあ。仮にも手伝いに来てもらっているのに奮起させる気は無いのか?
もう、すでに帰りたくなっているのだけれど。
「あ、シッキーじゃ無いか。どうしたの?手伝いに来たのかな?」
あ。天川先輩。そういえば、先輩がいなくて嘆いていたけれど、こっち側では先輩がいるんだった。俺は最悪な絶望感を跳ね飛ばせる気がした。先輩がいるんだったら、その鬱陶しい聖良さんというマイナスがあってもプラスにできます。腕まくりをして頑張っちゃうぞアピールをしてみた。
「何を惚気ているんだか。わたくしと付き合った時みたいな顔しているわ。きっも」
「な、な、なちゃうわい。ちゃうわい」
「仲良いね」
「「よくない」」
以心伝心のコールをしてしまったことに苛立ちを覚えつつ、早くこんな奴から逃れたいので、役割を与えられたかった。
「えっと俺は何をすればいいんですか?」と聖良さんをおざなりにして先輩に聞いた。
「まあ。これと言って役割は決まっていないんだけれど、倉庫にある台をステージまで運んでくれない?」
「わかりましたー」
「あの。重たいから、3人、4人ぐらいで運ぶようにしようか。えっと。日御池さーん。来てほしーんだけれどお」
「はいはーい。はいでーす」と笑顔で素早く変態は登場した。
「うわっ」
「なんですぅ。Gでもみたような蔑んだ目をしてさ」
「Gのようには思っていないけれどNGなのは変わらないよ。何?その神出鬼没さは星宮をストーカーして身についたのか?」
「あはははは……」
そうなのか?そうなのか?そんな笑って誤魔化すのはそういうことなのか?
そしたら聖良さんと同じ立ち位置まで転落するけれど、よろし?
「まあ。生徒会選挙の入り用で来ているから呼ばれたら颯爽と現れるんですけれどねえ」
「でも、手持ち無沙汰だったと」
「嫌ですねえ。2:6:2の法則、通称働き蟻の法則を知らないんですかー?割がよく働いて、六割が普通で、また二割が働かないんです。つまり私は大丈夫ということなんですね」
「それ結果論でしょう」
「はいはい。ほら、へらへらしていないで、持ちましょうよ。終わらないですよー。シッキー?」
パンパンと先輩は柏手を打って、場を制した。
なんで具体名が俺なんだよ?
先輩に名前を呼ばれるのは嬉しいけれどもさ。
俺の指揮は四季だけにぶち上がっていて、一丁前に腕まくりなんてして、気合い入れて台を持った。それに続いて先輩が。仕方なくと聖良さんが。
(星宮がいないから)やる気のない日御池さんが最後に台を持った。
「ちょ、ちょっとカレシくん?高すぎやしないですかー?私の方に傾斜ができていません?」
「な、なんだよ。そこまでしたら持ちにくいんだよ」
「みんなペース早くない?わたくし、ついていけないんだけれど」
「……」
みんなバラバラに文句を垂れ流している。
呉越同舟の中にいるみたいで、あのさしもの先輩でも黙っちゃったじゃんか。
なるようになれって、もう俺らを観察対象としかみていないその目は背筋が凍りついて仕方がない。
「カレシくん?改善もしないで、押し黙るのは違うんじゃないですぅ?」
いや、先輩がちゃんとしようと言っているのがバッチリと見えてさ。怖いんだよ。
「黙ったままです?」と日御池さんが俺の足をガンガン蹴り上げてくる。その様子を面白そうに聖良さんはみていた。最近思うんだが、皆んな俺の扱い酷くないか?
その俺の扱いに心を痛めているのは俺だけではなかった。
「ねえ。真面目にしようよ」と流石に先輩は口に出した。
言われたことが、ショッキングらしく日御池さんはしおしおに萎れていった。
「おい。ショックを受けるのはいいけれど、手を離すなよ。四隅で支えているというのに、支柱を一つ失えばカクッてなるからさ」
「あははああ」
日御池さんが壊れた。
「あそこに星宮が!?」
「え?どこ?私変じゃないですか?」
「はい。復活したね。じゃあ持ってくれる?」
人を殺す目をした日御池さんを片手に使役をした俺は、日御池さん、先輩、聖良さん、そして俺のチームワークの悪さに絶望をしつつ、ステージに運ぶまで曲がりなりにも円滑に進められた。
その後は詐欺師に詐欺罪を働いた罪でボコボコにされたのは言うまでもない。




