第7話 どこの世界でもウザい女はいるんだよ。
「あ、あ……。聖良ちゃん」
狼狽えるほど気が動転する星宮がいた。華月さんが打ったボールを取りこぼす程度だった。さっきまで白熱していた試合が一気に白けているのがわかった。
特に華月さんが打ったきり、応ずる体制も取らないで、腰に手を当て訝しんだ顔を彼女へ向けた。それに返答がごとくその彼女も睨み返していた。
星宮には媚びうった態度で、華月さんには軽蔑した態度は対照的だった。
「あのー。旭くーーん。テニスしてるんですかー。わたくしも混ぜてくださーい」
かわい子ぶった作った声。まさに厚顔無恥。厚かましいし、圧もすごい。
そんな圧に周囲の人は負けて、さあーと引いていく。それを堂々と派閥の奴らも引き連れて、最終的に星宮の腕を組む位置に入った。
「いや、あの聖良ちゃん?」
「はい。わたくし聖良です」
「聖良ちゃん。部活見学断ったのは悪いと思っているけれど、でも今は結音ちゃんとやっているから……」
義理には固い男だ。俺は流されてそのままなすがままにされるのみ。今、尊敬した。
俺の好感度は上昇しただろうが、その聖良と呼ばれる彼女の好感度は超絶的に下降傾向だった。されども、星宮に強く当たらない。代わりと言ってなんだが、華月さんが目の敵にされるのは、まあ当然の流れだった。
「華月さーあん?わたくしが先に誘っていたのですけれどー」
「いや…」
「いいわ。貴方は。この方は私に用があるみたいだから」と星宮の弁明を遮って、手でも遮って、自分の戦いに変えた。
これはもう女子の嫌な喧嘩が始まるんだと誰が見たって直感する。直諌したい。やめとけと。
「へえー。何?華月さん。この人は私のものだからーとか。寒いですよー?」
「いやいや。そんなのないわ。こいつが私のものとか笑わせないで。貴方のムーブの方が寒くて、笑わせるのだけれど。で、何?誰?」
「誰ってひどくなーい。わたくしは神々聖良って名前があるんですぅ。同じクラスです。わたくしはあなたをよく知っているのにっ。どうしてですかっ」
「知らないわよ」
「知らないって……」
「ほぼひとりぼっちの私に集団戦術する人などいちいち覚えてられないわよ」
「あら?そう?そんなことないのだけれどー。この子達は友達よ。貴方にいないからわからないのでしょうけれど、目とか腐ってらっしゃる?」
「貴方ほどではないわ。腐った私であっても貴方をみればまだまだと言うことが気づけるわ。感謝しても仕切れないのじゃないかしら」
「まあまあ……」
可哀想に。星宮が完全に彼女らの板挟みだ。この二人どこからどう見ても仲が悪いのは一目瞭然だったけれど、一日二日でそこまでの関係悪化に繋がるのだろうか。どう見たって幼馴染とか…。
「あの人たちどうなんすかね。先輩」
「さあ?全然、一年の事情は考慮できないけれど、そのあれだね。あの華月さんって人だっけ?テニスのセンスはいいね。テニス部員に欲しいくらい」
そういうとあの人はなんでもできますからなんていう言葉を彼女は吐くのだろうなと思った。
「あの、聖良さんと呼ばれている人は?」
「さあ?特段何も知らないけど。あの二人今初めて知ったもの」
あら。別にライトノベルとか異常に知れ渡っている犬猿の仲というわけでもないらしい。
その点でこの先輩から色々話を聞こうとする試みは外れたわけだ。情報収集して、穏便に済ませる方法を模索しようと思ったが、どうやら叶わないらしい。
「まあ。でもあれが正常じゃないっていうのは関係のない2年の先輩から見ても明らかだから」ととっくの前に終了していた俺とのテニスを、完全にやめて、彼女らの元に割り込んでいく。
あーだこーだと生産性のないいけず言葉を量産している彼女らはそのスコート姿に目を落とした。
「ほらほらー。口喧嘩ばっかりしてるでない。ここはテニス上だぜ。お嬢さんたち。ここはテニスで勝負をつけるのがここの習わしだ」
「それもそうね。無駄な口論よりわかりやすい敗北を与える方がはるかに楽だわ」
華月さんはラケットを向けて宣戦布告をする。
ああ。オーディエンスが沸いている。これは本気の勝負になりそうだ。
なんだこれ。なんで女同士の仁義なき戦いになっているんだ?
もっと男女比謳歌したいんだけれど。




