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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第6話 部活の先輩っていいよね。

 どこの部活に行きたいかは、星宮が勝手に決めてくれた。


「どこの部活入っていた〜」みたいな話になって、俺が帰宅部、華月さんはオールラウンダーというのは知っていて、残りの星宮がテニス部だった。


 野球やら、サッカーからは女の子が主流のスポーツだが、テニスやら、バトミントンやら男子に人気らしい。前世界の逆転現象だ。


 まあ。それは置いといて、他力本願な俺はその話題が出た途端「テニス部行ったらどうですか」なんて言った。


 星宮は若干引きった表情をしていたことに察知した俺だったが、「まあ。いいんじゃない。私はなんでもできるから」とだけ華月さんが承認したことで、学校裏、一人苦い顔をしているけれど、テニスコートに赴かざるを得なかった。


 この学校は意外と設備の良い私立の自称進学校である。だから、テニスコートとは言わずもがなで、グランドを見るとその競技専用の設備が多数備え付けてある。

 どこそこの国立競技場並みの供給過多とも言える設備だった。


 この光景に当然のように圧巻される。


「す、すごいですね」と思わず声が漏れる程度だった。

「そう?学校の説明会とか行かなかったかしら?」

「い、行きましたけれど……」


 前の世界のその私立よりも大規模なような……。


「まあ。あれじゃない?実際に学生生活を送ってみると、それはイメージが違うんじゃない?」

「まあ。星宮の言う通りですかな…」

「そう。じゃあ。運動が苦手な四季くんだとしてもやってみれば案外楽しいかもしれないわよ」


 いやいや。そんな訳。そんな訳。ブンブンと横に手刀をぶん回した。

 しかし、その否定虚しく、いつの間にか華月さんはテニス部員に話をつけていた。えっ?何を?


「四季くん。よかったわね。体験させて貰えるらしいわ。まあそれは託けなのだけれど、正直最近運動してなくて、誰彼構わず戦って圧倒的に勝ちたいだけだわ」


 ははは。こいつロクでもないやつだ。


「苦手だから、む、無理ですよ」

「あら?別に負けてもいいわよ。天才に凡人が勝てる訳ないじゃない。だから安心して負けるといいわ」


 な、なんですか。そんな誘い文句。いや、まあ。陰キャはそっちの方が楽だけれど。全部負けた方が、後々の非難がなくていいのだけれど。

 てか、俺テニスの授業とか余りってた部類だから真面目にやったことがないのは内緒。


「じゃあ。僕がやるよ」


 迷いに迷っていた俺に助け舟を出すのは星宮。もうテニスラケットを借りてやる気満々だった。


「へえ。私に挑むのね。軽く運動と、スカッと雑魚狩りでもしたかったのだけれど、貴方がやる気というのならやぶさかでもないわ」


 どうしてそんなに悪役令嬢みたいな文言がつらつら出てくるのか訳わからなかった。

 

「今度こそ結音ちゃんに勝ちたいんだ」

「そう、努力目標ね。それは」

 

 そんなことを互いに言って、星宮と華月さんはテニスコートに入って少年漫画の正念場みたいな空気感に飲まれた。


 俺はもう蚊帳の外だった。

 3人の集団なら、あまりが出るのは仕方がない。でも、いつも俺なのは悲しくないですか?

 そこに呆然と立って置くのも恥ずかしくなってきたもので、端にあるベンチへと身を潜める。


 え。早くない?男女比の壊れた世界で、俺のボッチムーブなどいらないのだけれど。

 ベンチで三角座りでもして可哀想なオーラをもっと醸し出そうか。

 男女比の壊れた世界なら誰か一人は話しかけてくれるだろう。そんな甘い見込みで。


「おいおい。何してるんだよっ。少年」


 ばんっ。と思いっきり背中を叩かれた。あれ?俺の甘えの甘い見込みが引っ掛かった。

 おまけにみればとても可愛いスコート姿の女の子だった。


「い、いやあ。あの……」と話始めた瞬間。

「ああ。知らないやつが話しかけてきたらセクハラ認定よな」

「えっ。ああ。そうですね」

「あたしは天川要あまかわかなめ。2年。テニス部部長」

「あー。関根四季です」

「シッキーね」


 シッキー?俺のあだ名?あだ名なんて初めてつけられたぞ。えっ。嬉しい。明らか完全陽キャなんてバカにしてたけれど、呼ばれてみれば舞い上がっちゃうものだなあ。

 情緒不安定だなあ。俺。


「シッキーはしないの?テニス」

「テニスねぇ」


 3人の中で余りになっちゃったけれど、まあ。積極的じゃなかったからそうなのだけれど、かといってしたいという訳でもない。


「テニス。まあ。あんまりやったことないんですよ」


 そう無難な返しをするのが、ちょうどいい。


「じゃあ。あたしとしよっか」

「え、あ。あー。うん」


 これは星宮と華月さんが二人で行ったのを見越しての配慮だろうか。それだとしたら辛い。先生と組むぐらい辛い。


 それでも推しに弱いのは、俺だった。断ることができないのが俺だった。

 レジでレジ袋入りますかー。と言われたら正直に5円払ってしまうのが俺だった。


「じゃあ。そこにラケットあるから」

「はい」


 ラケットね。ラケットを持った瞬間、体育の授業並びに苦行が思い起こされる。いやいや。でも一人じゃないから。優しいこの先輩。うわ、今思えば先輩とかできたことないわ。

 帰宅部だったから。いやあ。悲しいほど限りなし。


 でも、今先輩いるし、成長じゃあん。

 調子乗ってきたあああ。

 潔いくらい飛ぶ鳥を落とす勢いで、上機嫌でコートへ入っていく。

 それで定位置に適当につく。


「じゃあ。はーい。投げるねー」

「あ、はーい」


 てか、1 to 1 でやったことないんだけれど。俺の相手は大体壁なのだけれど。

 なので、急に来たボールに当惑を隠せなかった。


「わ、わ、わ、わ」


 わっ。打てた。


「おー、いいフォームだね。テニス才能あるんじゃなーい」と言いながら天川さんは平然と打ち返す。


 そんなお世辞を吐かれて気持ちよくなっちゃうよ!?気持ち悪くなっちゃうよ!?


「へえー。あ、おろごとおごぞおもそ」


 多分相当、気味の悪い笑みを浮かべて「ありがとうございます」の母音が全部Oになるくらいに動揺していた。


「はははー。変なのー」とクスリと天川さんは笑う。

 陽キャの笑いだった。


 その後二、三回テニスのラリーと、会話のラリーが続けられた。

 これはもう穏やかで、日常系アニメの一部分だった。いわば、貴族のテニスだ。

 そして、隣を見ると、それとは別で、オリンピック並みだ。



「貴方やるわね。天才の私にラリーを続けさせるなんてね」

「ほら。僕、男子だから」

「あら。女子みたいなこと言うわね。モテるから、モテないこと言って調整でもしているとか?」

「結音ちゃんはいつもいつも毒が強い」

「あら。そんな私に中毒ってね」

「自信過剰って言うところも結音ちゃんっぽい」


 なんだ。あれは。星宮と華月さんの掛け合いは良く聞こえないからともかくとして、周りの人たちはなんだ?


「キャー。旭くーーーん」

「こっち向いて。旭くーーん」とか。女の子たちのあの陽キャを応援する時の黄色い声がした。不快不快。不快千万。そう思っても陰キャの耳はいつ如何なる時何が起こっても対応できるように肥えているのだ。

 だから敢えて言う。華月さんの応援がなくて可哀想。

 

 女子に嫌われる女子ってこんな露骨なのか。男女比が狂った世界で女子の嫌な世界を見せられるのは予想外だった。


 それにもっと予想外の出来事が起こった。いや、この状況下から予想できるのだけれど……。


「ちょちょちょお。あ、旭くーん?ど、どうしてえー」


 群れなして、星宮たちを応援していた女子たちが割れていく。そこに登場したのは、星宮に誘いを断られたはずのあのクラスを二分した女子がゾロゾロと来た。


 派閥を作るのはどこの世界でも瞬足らしい。

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