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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第5話 負けヒロインとかいう女。

 まあ。だろうなとは思っていた。

 時は変わって放課後。


 あれから喋った人はいない。俺はもう男女比の狂った世界でモテモテハーレムになるという夢は潰えたらしい。ははは。あそこで、女の子と戯れている星宮ほしみやを見て悲しくなる。

「部活見学一緒にいきましょーよっ」とクラスを二分していたあの女の子に話しかけられている。目に毒だ。毒。毒だとわかっているのに見てしまうのはただのさがなのだろう。


 いや、待てよ。俺の当初の夢は別にハーレムじゃなく、彼女を作ると言う目標だった気がする。


 そして、友達を作るという元の世界の初期目標はすでに達成してしまったわけではあるから、これは進歩?


 そうだな。大進歩じゃないかっ。星宮というイレギュラーがいるから狂うんだ。

 俺は大成功街道を威風堂々と闊歩かっぽしているではないかっ。

 ルンルンと気分が良くなった。


「ははは。どうしたんよ?そんな上機嫌で」

 

 そんな浮かれた俺に華月かづきさんは一番最初と同じ絡み方で口を割った。


「えっと。以前の自分と比べれば、成長を実感して感動している最中です」

「そう。それは他人と比べる状態よりも幾らか健康的ですよ。自分との戦いが最も己を成長させますから」

「なんですか?その格言みたいなのは」

「偉大な私からの格言よ」

「そんな性格がきついから友達ができないのではないですか?」

「最も禁忌に触れたわね。kinkyよ」

「kinkyは良くないですよ」


 変態なと言う意味の形容詞なのだから。


「確かにね。男性にそんなことをいってしまうのは、セクハラだわ」

「そうなんですか?」

「何を今更」


 うっかり、前の世界の価値観で語ってしまった。え、じゃあ。あの、今の世界、女子にセクハラしても特に罪に問われないのでは……。

 違うな。こんな顔の造形が平凡な俺がしたら取り返しのつかないこと間違いなし。ただしイケメンに限るだ。どの世界でも。

 どこの世界にも俺の威張れる場所はないらしい。怖いよー。


「表情筋が豊かなのね。調子に乗ったり、落ち込んだりと」

「まあ。事情がたくさんあるんですよー。ははは」

「まあ。いいわ。時間もあるだろうし、部活見学いきましょうか」

「そ、それもそうです」


 ぎこちない返事はいつも通り。ご覧の通り。

 ぎこちないまま、立ち上がって華月さんの後を着いて行くように教室を後にする。


「で、あの。どこの部活行くんですか?」

「あー。特に何も決めていなかったわ。テニスでも、野球でも、サッカーでも、特に何でもいいのだけれど」

「そのチョイスは地獄ですね」

「ああ。確かに男子はあまりできないものね」


 そうか。男女の価値観も反転気味だから出来なくても、特に問題はないのか。

 これは素晴らしい世界だ。ドジを踏んでも男子だからと言う理由で許される。最高じゃあないか。


「華月さんはあれ?スポーツできるタイプなんですか?」

「ええ。そうよ。というか、私、天才だから何でもできるわ」


 うわー。ものすごい自信。俺もその自信をわけ与えてもらいたい。


「じゃあ。どこの部活でも引っ張りだこじゃないですか」

「まあ。初めはそうでしょうね」

「最初は?」

「出来すぎるから意外と嫉妬するのよ。これは誰彼構わずね。それ以外の要因かもしれないけれどね」


 それ以外の要因?


「た、大変ですね」

「そうね。部活なんて、進学のための加点を狙っているだけだもの。そこまで本気でもないわ。でも出来てしまうのも悩みね。貴方、四季くんは嫉妬する?こんな私を」


 できるものでも苦悩がある。理解はできるが、理解されないだろうな。

 俺もそうだ。


「嫉妬こそすれば、そこまでですね。近づけそうなら、近づけたらいいと思いますけれど、圧倒的な差があれば、諦めてしまいますね」

「そう。それは申し訳ないね」


 華月さんは悲痛な目をした。それは華月結音という歴史を表しているようだった。


「でも、四季くん。長年友達ができなかったといっていたわね。長年できなかったものができるようになるなんて案外あっさりでつまらないものというものも覚えておくといいわ。こんな私みたいにつまらない人間だからかもしれないけれどもね」


「そんなことないですよ。華月さんは面白いですよ」

「面白いと言われるのはなんだか不服ね」

「なんでですか。全然分からない」

「IQって20違うと話通じないらしいわよ」

「俺がバカって言いたいのかっ」

「そうよ」

「そんな直球に言わなくていいだろ」

「まあ。こうしてどこへいくのか分からずのこのこついて行く管理能力はバカじゃないのかしら」


 ははは。それはもう反論の余地はないけれど、火力高すぎるだろ。

 で、ここどこだ?特に昇降口でもなく、部室棟でもないよく分からないところで華月さんは立ち止まっていた。そして、スマホを触っていた。


 あ、あれ?俺。会話出来ていなかったのか?違うよね?

 ブルブルと震えが止まらなくなる。

 そんなところに後ろから誰かから抱きつかれた。


「やーあ。四季ー」

「う、な、何。えっ」


 星宮旭だった。な、なんでここに?


「あら。今から私が連絡しようと思っていたのだけれど、都合良く登場って。見計らっていた訳?」

「まあ。ね」


 軽やかな笑顔を見せる星宮。


「はあ。貴方って結構ちゃっかりしているところがあって苦手だわ」

「いいや。そんなことなよね。ねえ四季ー」

「あーはい。そうです。あ、あの?で、星宮はどうしてここに?」


 それはそうである。この感じ偶然という訳でもなさそうだ。


「それはねー。僕は四季と部活見学したかったんだ」

「へえ」

「だから、結音ゆいねちゃんが誘っているところを見て僕も割り込ませてもらったのだ」


 俺、華月さんと、星宮から誘う意思があったとは引く手数多じゃないか。嬉しいねえ。

 でも、星宮は他の女子が果敢に誘っていたイメージがあったのだけれど、え?それは大丈夫?俺殺されない?

 そんな不安感を覚えつつ、割り込んだという言葉に疑問を抱いた。


「えっと。あれですか?華月さん。星宮とは知り合い?」と恐る恐る聞き及ぶ。


「腐れ縁の幼馴染みたいなものよ。ラブコメでいうと負けヒロインだから、後腐れなく仲良くできる男子よ」

「酷い言い様だな。いつも通りだけれど」

「貴方に対してだけではないわ」

「だから、友達があまりできなかったんだ」

「それで困ったことはないわ」

「そおーなの?」


 星宮と華月さんの会話。俺が入れないのは勿論のこと。俺がいない方がいいのではないか?と思う。

 そんな俺を見て悪いと思ったのか、星宮は「あー。ごめんな。僕来るの急だったな。連絡もしないでさ」と拝した。


「あ。まあ。いいですよ。あっ」と陰キャ特有の返答をしてしまう。

 俺きしょ過ぎる。


「そうなら、連絡交換した方がいいよね。LINE ID教えてー」


 う、うわっ。こ、このオーラはあれだ。陽キャだ。分かりきっていたことだが、眩しすぎる。こんなのなすがままにされるがままにされるだけだ。


 LINEの友達追加欄、分からなかったけど、(いや、友達がいなかった訳では。嘘です。すいません)一応なんとかできたわ。ついでに華月さんも追加できた。母さんと妹以外で初女の子のLINE GETー。キモいなこれは。

 まあ。クラスLINEでハブにされないことに安心を覚えようか。


「よし。これでいいね」

「そうですね」

「ええ。こんなくだらない茶番はいいから。早く部活見学いきましょう」

「「はーい」」


 男子とLINE交換をして表情筋が一切合切動じない華月さんを見てこの世界にモテモテハーレムがあるなんてもう思わなくなった。

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