第67話 そろそろラブコメイベント発動。
図書室に半ば強引に連れて来られると、全員集合していた。
星宮、聖良さん、日御池さん、維川さん、舞賀さん。桜場さんが足りないけれど、オールスターである。ああ。もう一人足りなかった。
「あれ?天川先輩は?」
「何を言っているの?去年卒業して行ったじゃない」
「ああ。そ、そうなんですか……」
メインヒロインの喪失だ。
せ、先輩って…言っているぐらいだから当然といえば、当然なのだけれど……。
俺は桜場さんがいないとか、キャラが二人いるとかもうどうでも良くなるくらいに絶望した。天川先輩編はいつなんだ?
「何をどけ座しているのよ。滑稽千万だわ」
「いやあ。天川先輩に別れの挨拶もしていない」
「何年前の話よ」
「一年前ですねえ」と聖良さんが残酷な事実を注釈を入れてくれた。
「その一年前のことに思いを馳せずに、これからの計画をすべきだわ」
「それもそうですね」
「じゃあ。皆様、どこへ行きたいの?」
パチパチと華月さんが音頭を取っていく。
「僕はどこでもいいかなあ。みんなが行きたいとこに行きたい」と星宮。
「旭くんが行くならどこへでもです。逃避行でも可です」と日御池さん。
「右に同じく」と維川さん。
「じゃあ。右に同じく」と舞賀さん。
協調性はあったが、意見はなかった。
舞賀さん。あなたは右に同じくじゃダメでしょう。逃避行したいんですか?
「おい。これでは何も決まらないことは分かっているわね?無理矢理でも意見を出しなさい」
華月さんはその態度にご立腹な様子で、圧をかけてきた。
「それでも、急に行きたいところはあるかと言われて何も出て来ないよねえ。修学旅行の京都で、結構楽しんでしまった感じがするし」
維川さんがぶっちゃけた話をした。
でも、俺その修学旅行の記憶がないんだけれど。俺も行きたかったんですけれど。金閣寺とか八橋とか食べたかったんですけれど。
「なら、その近くの、奈良とか大阪とか神戸にしますか?」
「それでいいと思う」
「私も」
「みんなが言うなら」
誰も意見がない。
意見を出してくれそうな舞賀さんは陰キャだから役に立たないし、主人公の星宮は優しすぎて、自分の意見をいうことがないし、どう収集つけるべきだよ!?華月さんが匙を投げそうだ。
「四季くん」
「はい」
「どこに行きたい?」
「俺地理わからない」
頭を抱えた。バカに聞くんじゃなかったという後悔だった。
いや、仕方ないじゃないか。まず、ここが何県なのかすらわからないんだよ?何星五月雨とか?人生で聞いたことない地名だろうがよ!!!
「じゃあ。どこか行きたいところないかしら?」
「う…ん…。温泉とかしか思いつかないんだけれど……」
「エッチ……」
胸を守りながら、赤らめた頬で俺を覗いていた。
なんだそれは。つ、ツンデレ営業なのか?なのか?不意にも可愛いとか思ってしまった自分もいた。いや、ずっとこのままで十分じゃないか。
「それ、賛成です。いや、強行で挙行したいです!!」と変態の日御池さんが言った。
「じゃあいいね」
「僕も君たちが言うなら……」
なんだこれ。雪崩式に決まって行ったのだけれど。
そうか、反対機構もないから、意見は全通過なんだ。形式だけの円卓に何の意味があるって言うんだ。
華月さんは頭を抱えて、呆れたため息を吐いた。
「私たち二人で決めればよかったわね」
「そうかもしれません」
「だ、か、ら。宿とか全部丸投げするわ」
「「「はい?」」」
「じゃあ。私勉強するから、あとは決めておくといいわ」
嫌気がさしてしまったのか、華月さんは図書室から退室してしまった。
残ったのは指揮系統の崩壊したクソ雑魚軍隊だった。
誰も指揮は……と思ったけれど、いるじゃないか最高の指揮者が。
星宮は「えっと……。宿どうしたい?みんな?」といえば「ラブホテルがいいです」と日御池さんが言うだけで、他は黙りこくった。
おい。誰もが黙りこくってしまったら、集団ラブホ宿泊とか言う意味の分からない奇特集団と成り果ているけれどそれでいいのか!?
次に場を回してくれそうな聖良さんへと目を向けて見たのだけれど、ぷいっと明後日の方向を向いてしまった。それはかなり意図的ではないか!?
進行役も現れないまましばらく、その空気が流れ、しかし、この空間に耐えられないのが陰キャの性である。その陰キャは小さく、気づくか気づかないくらいに小さく手を伸ばした。
「あ、あの。ボクの家の別荘が温泉地近くにあったと思いますから、そこに泊まれるか。掛け合ってみます」
舞賀さんがようやく口を開いたかと思えば、有益な情報を吐いてくれた。
みんなの顔が明るくなった。
「いやあああ。あああ。ほんとありがとう。いやああ。期待していたよ。マイシスター。さああって解散。解散」
みんな解散して行った。
あいつ謀ったな。
華月さんが告白してきたあの世界線と繋がっているなら、聖良さんは舞賀家には潤沢な資金繰りがあることを知っているのだ。それを引き出そうと黙っていたわけだな。
肝心の舞賀さんは呆然で、騙されたあとの人だった。
「ねえ。アイツ。殺していい?」
おいおい、舞賀さんがしないような文言を吐いている。ダメだよ?ちょっと衝撃を受けているよ?
あとは温泉編を待つだけだった。まあ。よくあるラブコメのお色気回である。
それが、血の色に染まるなんてことあっていいはずがない。




