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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【アイスピックでそれを突き刺せよっ!!】  作者: √宮ハルヒ
第二部

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第61話 不気味な人はどこにもいない人と言う。

 桜場さんの住所は星五月雨ほしさみだれ5丁目なんていうギャルゲー全開の住所だった。勿論のこと聞いたことは一つもない。


 キラキラとした高級住宅街のような地名ではあるけれど、それは7丁目だったりする。余談、それは聖良さんの住所でもあるのだ。

 聖良さん、桜場さん、キャラクターの性格というか、グループというか、名前からも合致している町名だ。


 もし桜場さんの住所が天神筋橋6丁目とかだったら、一気にギャルゲー感はしないだろう。大阪の地名とギャルゲーというのは相性が悪いように感じるのは俺だけだろうか。


 ずいぶんと関係ない話だったが、本題に戻すとして、星五月雨5丁目は閑静な住宅街には程遠い、商店が連なる下町感のある街であった。


「えっと。どっちにいけばいいのだろうか」


 下町と表現したが、ちょっとは新興のショッピングモールも出店する賑やかな街だ。しかし、下町のあの入り組んだ迷路のような道路は健在で、未知の道に慣れることはない。


「そこの突き当たりを真っ直ぐ行って、曲がって、曲がって、直進で、?」


 矯めつすがめつ地図なんて読めない俺は、Googleマップを頼りに、進んで行く。


「あれ?そこの道曲がるんだ」「あれ?さっきの道?」


 なんてことをしていたら、道をことごとく間違えて良くわからなくなった。

 嘘だろ?Googleマップを持ってしてでも、道に迷うだとかどんだけ方向音痴を極めているんだ?俺はそこまで方向音痴ではなかったはずなんだけれど……。でも実際問題、困ったものである。


 方向案内が使えなければ、あとは普通に地図を読むだけ、うん。無理だ……。

 てか、諦めるには元の道に戻れない。なんか永劫のラビリンスの閉じ込められたんじゃないかと錯覚する。

 で、次もまた間違ったのだから。じゃあ無理じゃあん。辿り着けなし。

 草臥くたびれ果ててこうして、手近にあった公園のベンチに座った。

 住宅街だというのに、木が乱雑に生え、薄気味悪い公園だった。草臥ていなかったなら、近づこうとすらしなかっただろう。さて、休憩もできただろうし、探しましょうか。


 そうして、立ち上がった瞬間。気づきもしなかった。

 真正面に人がいることが。


「どうしたんだい?少年。ちょっと早いけれど、登場だ」


 冷や汗をかいた。人に言うべきではない言葉なのだろう。だけれど、はっきりと言う。不気味な人だった。関わりたくないという感想が第一だった。

 クネクネと、黒一色の喪服に包んだ薄気味悪い人だった。


 その場から駆け出したい。そんな失礼なことを思ったし、それでもどこかで親しみを覚えていた。完全に矛盾する感情である。この人に聞けば、間違いないというどこから湧いたのかわからない確証があったのだ。


 だから、俺は「あの、道に迷っていて……」と恭しく尋ねてみる。


「知っているよ」

「?」


 軽やかな声で男とも女とも取れない人は“知っている”なんて、およそ聞いたことない言葉に俺は横転してしまった。


「だから、案内してあげる」


 この確証は本当だったんだ。道に迷っていた時、手を差し伸べてくる人はそれはもう、親切な人だった。しかし、思っていた優しさとは違うような気がした。この人からはそういうのが、感じられなかった。その漆黒の眼球に惰性というか打算というか。そういう八方塞がりになったところで、登場してやったりみたいな思惑が感じられた。


 だって、目的地を知っているのは不気味誰がそう考えたって不気味だろう。この惨状に飲み込めないまま、その人は手招いた。

 こういう場合はついて行くべきではないだろう。この感じはただの不審者についていく無垢な少年じゃないか。イカのお寿司、イカのお寿司。俺は断りを入れて退散しようとした。


「もちろん」


 あれ。俺はなんでこんなことを言っているのだ?

 確かに断ろうと試みたはずだ。なのにどうして、こんな威勢のいいことを言ってしまったんだ?


「じゃあこっちに来て」


 妖艶に、しかし、奇怪に気味の悪い笑みを浮かべたその人の絶妙な魅力のせいであると、気づくにはここでは遅かった。

 俺は有無も言わずただ、その人に腕を掴まれて為すがままに赴くだけだった。


「ここら辺の路地はわかりにくいだろう?」

「そ、そうですね」

「時たま、地元の人であっても迷ってしまうことがあるのさ」

「えっと。地元の方ですか?」

「いいや。そういう訳でもないのだよ」

「じゃあ。どこの人なんですか?」


 そんな不気味な人は見たことはない。どこの世界にもいて欲しくはないのだ。


「どこにもいない人さ」

「どこにも?」

「そうさ。どこにもいない人。正確に言えばここにはいない人かな」


 結局、地元の人ではないってことだろうな。

 言い回しも不愉快で不気味だ。どこもかしこも不気味。

 ただ苦笑いするしかない。


「ははは。一つもわかっていないだろう」と俺の唇に人差し指を当てた。そして、顔を近づけた。


 目線が合う。頭を掴まれ、かっちりと合わせられる。その人の真っ黒な眼球に圧倒された。その人に何かを見透かされているようだった。全てが取られてしまったような……。

 しばらくすると解放された。


「まあ。まだわからなくてもいいだろう。まだ、彼女を導かなければならない」


 彼女?カノジョ?誰のことだろうか。


「まあ。君が気にするべきでもない。適当に、君が信頼する人に言われたままにするのが、一番正しいのだから。正しくするから。それが面白いから」

「そうなのですか……?」


 面白いから?意味の分からない表現だ。けれど、前半部分はもっと掘り下げたいアドバイス?(俺からしたらそうだけれど)なのだけれど、それは叶わないらしい。その人は急に立ち止まった。


「面白いものなら、面白いシナリオだよ」


 にかりと不可思議な笑みを浮かべて、こちらに振り返った。

 ん?


「じゃあ。こうして駄弁、詭弁を続けていたら、到着してしまった」

「ああ、そうなんですか」


 ここらしい。若干古びて、ひなびた文化住宅のような家に案内された。

 不気味で信用度の低い人だから、適当なところに案内されたかもと疑ったけれど、しっかり表札には“桜場”と掲げられていた。そこで俺は初めて安堵した。

 疑っていたけれど、ちゃんと案内された。だから、感謝の言葉を述べようとその人の方へ振り向いたが、その人はどこにもいなかった。


「あれ……」


 俺はぞくっと背筋が凍る感覚があった。幽霊、この世界はゲームだからバクかも、そんな思考は消し飛んでいた。

 どこにもいない人とはそういうことなのだろうか。

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