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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【選択権はここにあるっ!!】  作者: √宮ハルヒ
第二部

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第58話 衝撃的なことがあると尿意は無くなるらしい。

 キーンコーンカーンコーンという音が鳴るなり、俺は授業の前にトイレに行こうとした。 

 どうなっているのかわからず、怖気付いてトイレに行きたくなったわけではない。普通に習慣的に、トイレに赴くだけなのである。その道中に聖良さんと鉢合わせしてしまった。

 さっき会ったというのに、“さよなら”とかはっきり言ったというのに。ばったりとでくわすのは気まずい他ない。他ならぬ俺ならば。


 直立不動で、目だけ合わせて、声をかけないのは余計に気まずくなる。

 しかし、俺には彼女が聖良さんには見えない。気に纏っているものが違うというか……。まあこれも言い訳だと片付けられて仕舞えば、それまでなのである。俺は謙りながら、声に出す。


「ああ……。ついさっきぶりですね……」

「ついさっきぶり?ああ。確かにさっきビラ配りしてましたから。もう授業始まるでしょう?だから、帰ってきたの」


 ん?ビラ配り?ビラ配りって。していたけれど、違うんじゃないか。

 ちょっと困惑しつつ、辿々《たどたど》しい言葉をつむぐ。


「え、さっき会わなかった?廊下で喋っていなかったか?」

「廊下?」


「いや、だからさ。華月さんと一緒にいたよね?廊下でひざまづいている俺をおちょくったりしてさ」

「それはとっても面白い状況でその場に居合わせたかったわ。しかし、話が噛み合っていないように感じるんだけれど。四季、頭がおかしくなったのかしら?」


 どういうことなんだ?

 俺の本当に頭がおかしくなったのか?

 でも、よくよく見れば彼女は生徒会会長候補というたすきをかけている。俺の記憶ではこんなのはしゃべっていた時はかけていなかったはずだ。結構大きなものだ、明確に覚えているのだ。 


「これが異変というやつか?」

 

 8番出口とかやっているのだろうか。それなら引き返さなければならないのだろうか?

 いいや、そんな冗談ではなくて、桜場さんに連絡をしなければならないんじゃないか?

 いや、でも、まだ思い違いかもしれないからいいか?なんて我を忘れて熟考をしていると、怪訝な目つきで俺を眺める顔がある。


「どうかしたのですか?」

「な、何でもないです。だから、さよならッ!」


 俺は焦って逃げ出してしまった。デジャブ満載の言葉を放って。

 その言葉がまるで初見のように、キョトンとする彼女を置き去りにして。

 そうだ、俺はトイレに行きたかったんだ。そんな話をしている場合ではなかったのだ。だから逃げるのは、違う違う……走るのは正当なのであった。

 そしてトイレに駆け込むのは様式美だろう?


 俺はすぐさまトイレ前まで来た。来たというのに……。

 現実はそこにあった。


 女子トイレがタイミングよく開くなり、「四季?狭い日本そんなに慌ててどうしたーw?」と昔の標語ばりの文言を吐いた。


 それはさっき出会ったはずの神々聖良その人なのであった。俺は固まった。

嘘ではなかった。見間違えでもなかった。

しかし、万が一、万が一があるやかもしれない。


「お前はさっき会ったか?」と恐る恐る聞いた。


 クススと笑う。


「そりゃ、会ったよ?」


 ホットする。安堵する。やっぱり俺の勘違……。


「華月さんと一緒に喋っていたじゃない」


 俺の額から汗が一筋零れ落ちた。

 やっぱり何かがおかしい。何も食い違っちゃいない。まるで、神々聖良が二人いるかのような言動である。


「双子とかないか?」

「私はもちろん一人っこだけれど」


 わずかな可能性はなかった。背筋が凍った。見たくない現実を見てしまった感覚だった。

 えっと。二人いるのか?

 すぐ近くにトイレがある。振り向けばもう一人が……。


 俺はゆっくりとくるりと翻ってみる。

 そこには誰もいなかった。観測することは叶わなかった。

 それで良かったのだ。そこでようやく安堵ということか。たとえゲームの世界だとはいえこうして全く同じ生身の人間に見えてしまうのは健全ではない。その生身の人間が二人いる感覚がどうにもこうにも慣れる気がしない。慣れてはいけないのだろう。双子だと思えば慣れるのか?いやいや。そういうことではないのは分かる。誰のせいだ?世界が、社会が悪いのか?


 これが桜場さんのいう《《違和感》》なのだろう。

 違和感を感じたならば、相談しようと言っていた。流石にここまではっきりならば、思い違いなんじゃない。もう気がついて捜査を始めているかもしれない。だから朝会った以来行方ゆくえくらましているだとか。有り得る。


 そうこう考えていれば、キーンコーンカーンコーンなんていう授業開始のベルが鳴り響いた。これがこの思考を止める有効な手であった。いや、もっと有効な尿意というものに支配をされていた。


 やや、仕方がなし。ちょっと遅れることになるが、トイレにでも行くべきだなと思ったものの、「おい。どこへ行く?授業は始まっているんだぞ」なんて余計なことを見回りの先生が言った。俺は連れさらわれる。


 俺は当初の目的であるトイレに行くことはできなった。

 ははは。最悪だあ。


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