第57話 俺は部活に向いていないらしい。
「なんてあいつらは卑怯なんだ」
俺は2階の自分の教室の前で、ため息を吐きつつ彼女らを眺めている。
やれやれ、呆れたものである。
さっきと同じ手口をしているのかと思ったけれど、別にそんなことないらしい。キャッチみたいにゴリ押しの宣伝だ。こっちの方がタチが悪いか?いや、どっちもか。
この世界がゲームでなかったなら、あやつらを訴えていたところである。
「訴えたところで無駄だと思うんだけれど……」と後ろから話しかけられる。
声だけで誰か分かった。利きボイスできるんじゃないか?
「天川先輩ですか?」
ぼうっと聖良さんらを眺める傍ら、話しかけられた彼女を確認する。
にこりと微笑んでアピールする。
「副会長候補なら校門でああゆうふうにしないんですか?」
窓の外を見るに聖良さんと対決するように舞賀さんが攻防を繰り広げている。
当人たちは本気なのだろうが、側から見れば滑稽で冷めた戦いだ。
それは先輩も同じなようで、ちょっと冷笑している風だ。
「しないよー?生徒会長が強烈だから私のインパクトなんて微々たるものでしょうし。それに副会長候補なんてほとんど代役みたいなものだし。大体私は三年生なんだよ?」
「そう言うのって制限ないんですか?」
「さあ。私にはわからないかなあ。舞賀ちゃんがチャチャっとしちゃったものだからさ」
真面目そうに見えて意外と強引らしい。なよなよとした彼女らしくない意外さだ。
その性格との乖離が甚だしいなあと思う限りだ。
「俺から謝っておきます」
「それなら、私の代役としてシッキーがエントリーすればいいよ」
「代役の代役は流石にでしょう」
「あはは。まあ。シッキーに副会長は似合わないか」
「そうですよ」
「ほら、やるべきことが出来なさそうじゃない」
「先輩にその評価はちょっと心に来ます」
なぜなら先輩だけが、この世界でももっとも素晴らしい性格なのだ。
持ち上げすぎな評価なんかではない。周りが勝手に評価を下げているだけなのだ。
その彼女に評価を下げられたら俺は奴らと一緒じゃないか。
「だって、テニス部。最近来ている?」
先輩は小悪魔的微笑でそう尋ねた。答えられないのを知りながら。
ははは。俺は奴らと一緒らしい。
「まあ、最近忙しくて」
「忙しいって?」
「それはまあ」
ゲームの世界だとか言われて、それの突破口を探すなんて言わずもがな言えることじゃない。
「ふーん」と全てを見透かしたような目をして、「まあ。いいよ。事情はでも来てね。ほら私もシッキー来ないと楽しくないからさ」とドキッとするようなことを言ってくれる。
俺も来たいのは山々なのだ。だって、ヒロインはここにしかいない。ちょっと華月さんに傾きかけたけれど、やっぱりあの性格だ。どうもこうも慣れなん。俺は一般的な恋愛観で、一般的な女の子が好きなのだ。分かってくれるか?
だとしたらこのゲームのコンセプトとしては1人でもマッチしているから成功と言うわけで……。
じゃあ成功でいいよ。俺は天川要を選ぶさ。
「じゃあ。あの今日、今日来たいです」
「今日期待してもいいの?」
「はい」と頷いた。
「本当はそれを聞きたかっただけなんだ」と先輩は俺の肩を掴む。
ドキッとする。
そうじゃないか。三年生が、二年生のところにふらっと現れるわけないじゃないか。
一年とか俺の知らない空白期間があったから、先輩と距離がいつの間にか縮まっていたのかと思っていたのにそんなことなかった。
「じゃあ。ね」
屈託のない笑顔で手を振った。
俺も振り返す。
ああ。距離が離れていくう。俺は馬鹿みたいに手を伸ばしていく……。
「何してんのよ」
「そーだよ。何してんのよーww」
こんな滑稽な様子を見るのは分かる。華月さんだ。
すぐ居直り、ニコニコと見る。
あれ?華月さんの隣には聖良さんがいるのはどう言うことだ?
「どうして聖良さんがここに?」
「どうしてって?別に学生だから、学校に通っているのは普通ではないかなあー?」
いや、そうじゃなくて、そう言うわけではなくて、形容し難い違和感が渦巻いているのだ。その違和感は華月さんには感じ取れていないらしい。何を馬鹿なことを言っているのだ?と思っていることだろう。
なら、可笑しいのは俺なのか?となって仕舞えば「な、何でもないです。だから、さよならッ!」とポッキリ折れて恭しく退散をした。
「なんだ?あの四季くんは」
「さあ?」




