第55話 家内物色も犯罪にあたるだろう。
さて、その即断即決を「まあ。その適当さは思い入れがなくていいと思う。5秒で考えても、30分で考えても結果は約90%同じというファーストチェス理論に基づくならば」と苦笑いで桜場さんに受け取られた後、俺は寄るべも無しに帰宅した。模範的な高校生である。
決して、友達がいないからと言う訳じゃあなかった。
てか、本来なら俺は部活をしていた時間だ。生徒会選挙期間中であるから天川先輩に会うことが叶わなくて残念だから行かないなんていうことはない……。ないはずだ。
どうせ。向かないスポーツをやっていたところで…。なんて冗談だ。
ほら冗談はさておきと靴を乱暴に脱ぎ捨てて、自室へと急いだ。が、しかし、いつもは聞こえる喧騒が今日はない。少しリビングを覗き込んだが
リビングは忽然と静まり返っていた。
いつもは妹がテレビにゲーム機を繋いで遊んでいるか、パソコンで難しいことをしているというのに。珍しく自室で何かをしているのか?
「やけに今日は妹と合わないんだなあ」
今日一日会わなかったというどこにでもある1日だが、俺は一目ぐらいはみたいと思ったのだ。シスコンなんて騒がれるかもしれないけれど、この胸のざわつきを抑えられるのならば、妹の愛のある攻撃は可愛いものだろうし。
「お〜い」
俺は妹の部屋の前まで来て、そう呼びかけて、ノックした。
返事はない。返事がないからと言って日和る態度を妹に持ち合わせていない。だから躊躇もなくドアノブに手を掛けた。
「あ、あれ?いないのか?」
もぬけの殻。とは言っても物はある。
妹が趣味としているゲームの収集物だとか、大体白一色で統一された衣装や帽子などがひっきりなしに整頓されている。
男の子の部屋と女の子の部屋を混ぜ込んでみたいな部屋だ。
それを十数年も見れば、違和感なんて抱かない。しかし、俺の知らないゲームタイトルがしこたま抱え込んでいる。
「兄の特権だよな」
俺は声に出して確認するかのように高らかに宣言を施す。
応答はなし。
GOサインである。
「さああって。どこかしこ、あなかしこから物色していきましょうかねえ」
腕を捲って意気揚々と宣言した割には全くいいものは出て来なかった。
女の子は誰しも隠し事の一つや二つ、部屋の中から出てくると思うのに……、何もない事はない。
恥ずかしそうな下着、人によっては恥ずかしそうな幼少期の写真、支離滅裂なストーリー漫画が書いてある黒歴史ノート、黒い用途のわからない機械類、女性版NTR兄弟もの(色々と詰め込みすぎ)のエロ漫画群だとか。それは多分収穫だというのだろう。けれど、俺はそれにまた違和感があった。これはなんか規則に基づいて《《配置》》されている感が強かった。
多分本当に見られたくないものをカモフラージュするために。
何をだろうか。もうすでに見つけてしまっているのかもしれない。殺人?こんな全てが上首尾によくラブコメゲームで?ないない。
ないよなあ。
しかし、ゲームにバットエンドがないとも限らない。イケメン聖人君主星宮がサクッと殺されてしまうかも……。
そう思うとゾッとしてきた。鳥肌が立ってきた。
そんな最悪を想像するけれど、それに準じる何かがあるかもしれない。悍ましい限りだ。だからか。俺は自然とこのひっくり返しに、返した残骸どもを騒々しく片付けに移行する。さっさと撤退した方が身のためだと思った。
「お兄ちゃんなにやっているの?」
とんでもなく冷ややかな目線が俺に向けられている。俺が片付けようとしたのは、下着だった。
「あ、ああ……。堪忍や。妹よ」
「はあ。ちょっと、コンビニまでアイスを買ってきたというのに……。お兄ちゃんがシスコンだったなんて………。まあ。それはそれでありか」
「何がありなの!?」
「何でもない。それよりもなに?それは弁明の余地ないんだけれど。誰彼構わずやっていなよね?」
「いや。断じて否。否なのだよ。妹」
「そう」
妹は軽く頷いて、自室を見渡した。
そして、何かに目が止まって、「ねえ。他のも物色した?」と眉間に皺を寄せヒステリックに叫んだ。
「ぶ、物色したけれど、な、なにもしていないから」
「で、」
「で?」
「出ていってええ」
雄叫びが広がった。音波で飛ばされた。壁に激突した。妹の部屋が閉じた。
そ、そこまで琴線に触れるようなことだったのかな?
「おいおい。これじゃあ。アイスがもらえないじゃないか……」




