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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【選択権はここにあるっ!!】  作者: √宮ハルヒ
第二部

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第52話 新たな章。

 08

 

 ジリリリリ……と遠く何かが喚いている。


「ああ。うるさあいい。ねむうい〜」

 

 世界の終わりを告げるラッパだろうか。

 確かに俺は世界が崩壊しても良いくらいの選択をした。


「君はあんなことがあったというのにめつすがめつとリラックスしているようだね」


 そんな声が聞こえた。俺はややはだけた布団を引き寄せて、かぶる動作を否定した。

 それどころかうつ伏せになって、細めでその発生源を探す。朦朧もうろうと枠線が二重に見える。それが揃った瞬間。


「さ、桜場さん!?」と声を大にして叫んで、飛び起きた。


「あはは。関根四季くん。グットモーニング。いや、もうグッドアフタヌーンというべきかな?」


 屈託のない笑顔をまごうことなき俺に振りまいた。

 まだ、夢らしい。こんなところに桜場さんがいるはずないじゃないか。ここはもう現実世界で、ゲームの世界はもう、終わってしまったのだ。

 俺は布団をかぶる。できることなら、未練など残したくないのだ。


「ま、待って。まごうことなき現実だから。いや、ゲームだから」

「ゲー、ム?」


 ゲームと彼女は言ったのか?

 しかし、ここがゲームである証拠など、彼女がいるからで十分じゃないか。


「ゲームとかショッキングなことを言ってしまったのは申し訳ない。まだ、整理がついていないかもしれないかな?あんなに感動的に戻れないかもと言っておいて、こんなことになってしまうなど、私は迂闊で軽率だった」

「まあ。別に問題ないですよ」


 そう言いつつ、思うところはある。今が現実ではないのは、遺憾なことだ。ゲームであるのは幸福なのだろうか?でも気分は悪いとは思っていないのも嘘ではないだろう。

 結局どっちなのかわからない。優柔不断が俺だった。


「どっちかなんて重々悩めばいいと思うさ」


 穏やかに柔和な声で言った。

 それによって何かから解放された気がした。

 俺も考えすぎなところがあっただろう。今はちょっと棚にでも上げて置けるマインドになったと思う。


 それはそうと、


「なんでここにいるんですか?」

「四季ありところに私あり、私いるところに四季くんありってところかな?」


 白々しい。


「御託はいいですから、あの、これって不法侵入じゃないんですか?」


 土足で他人の家に上がり込むなんて……。


「あはは。そんなこと?管理者だからね。そこまで言わなくとも結局はゲームの世界だ。捕まりやしないよ」


 元も子もないことを言った。そこは魔法の言葉で、使ってはいけないメタフィクションだ。だけれど、ここがゲームの世界であると色濃く示しているようで、高揚したと思う。


「勝手に冷蔵庫からプリンを食べた」


 窃盗まで罪を重ねるというのか。それは妹のだよ。たとえゲームでも俺が怒られちゃうよ。


「あはは。一人暮らしにしてはたいそうな冷蔵庫じゃないか」

「一人暮らし?」


 俺は妹と暮らしてるのだが……。まあ。そこまでいう必要性はないだろうし、寝ぼけているので、言う呂律もない。でも、それにしてもそろそろ目覚めなければならない時間だろう。

 俺はベットから降りて、そのせいで目が覚めたのだろう。思い出したかのように桜場さんにもし出会ったらいち早く訊こうとしたことを尋ねて見る。


「で、結局、あの選択は正しかったんですか?」

「ううん……。どうだろう」


 本気で悩んでいる顔を桜場さんはした。

 現時点ではなんともいえないらしい。


「そ、そっか……」


 俺は落胆した。落胆した俺に追い打ちをかけるが如く「だってまだ時系列は直っていないもの」と平然と言われた。

 あ、あれ。こんなの失敗ってことじゃないか。


「でも、決して失敗じゃない。もしNOを選んでいたら……」

「選んでいたら?」

「分からない」


 ズコー…。

 ドリフのコントみたいなリアクションをした。タライでも落ちてくるかも。


「落としましょうか?」

「いいですよ」


 なんで心の声が聞こえるんだよ!?


「管理者ですから」の魔法の言葉でねじ付された。


 そのメタフィクションを許容できてしまうその文言はどうにかできないのだろうか。

 俺はそう思って確認したいことがあった。


「時系列直っていないと言っていましたけれど、じゃあその管理者権能を使って教えてくださいよ。今は、な、何章なんですか?」

「8章……。あなたが2年生のそして後半あたりでしょう」


 8章。10章よりは戻ったけれど、これはいいのか?

 時系列としたら4章に戻らないといけないんじゃないか。

 それに……。


「このまま進んだら、8章で9章になってまた10章が繰り返されないですか?」

「あはは。いい質問だね。10章は繰り返されるよ」

「嘘!?」

「それどころか、10章が終えた時点で8章に戻るという繰り返しの処理が施されていたなら、それは抜け出すことに注力しないといけないかもしれないね」

「エンドレスエイトさながらの恐怖感だ」

「ちょうど《《8》》章だもんね〜。あはは」


 そういう操作がされていたら洒落にならないだろうに、どうしてそんなに牧歌的に微笑むのだ?まさか涼宮ハルヒの憂鬱のエンドレスエイトを1話2話8話しかみていない民なのか?

 そうでもなければ、まさに戻らない確信があるようだった。


「それでも、さ。何もせずに10章を待ってみる。その選択も一度はやってみたいことだけれども、この章を無視していいはずはないよ。何かが起こっているかもしれないからさ」

「確かにそうですね」

「この章は意外と地味だけれど、それはそれで大事な章だったからね。まあ。違和感があったら、こうして話し合うのがベストだね」

「それもそうですね」


 俺は首が取れそうなほど、頷きを返した。桜場さんはハッとした顔で「ああ。そうだ。君の住所を教えて欲しくて」と言う。


「ここ、ではないんですか?」

「違うよ。ゲームのじゃなくて、現実世界の住所」

「何に使うんですか?」

「まあ。君が戻れるように取り計らうために必要な工程なのですよ」


 俺は意外と桜場さんに全幅の信頼を寄せているらしい。でないと、すっかり信用して、すらすらと言う必要もない郵便番号まで付け加えて、懇切丁寧に伝えるなんて赤の他人にするはずがないのだ。


「ありがとう。じゃあご褒美にこれをあげよう」


 一切れの紙が進呈された。

 若干しわくちゃの紙を開く電話番号が書かれてあった。妹、華月さん、聖良さんに続き4人目の女の子の連絡先であった。平常なら舞い上がるところだが、俺の手は汗ばんでいた。

 ようやく気軽に頼れそうなものに辿り着いた感があったのだ。まあ。こんな見るもの全てを疑ってしまうことを言われて、そんなものを1人で抱えられる程には私は強くないのだ。


「ところで、聞くのを忘れていましたけれど、その8章というやらは何が行われるんですか?」

「ネタバレ希望かね」

「どうもこうも言ってられないでしょう?」

「まあそうね。それもそうだ」


 桜場さんは咳払いを一つ。そして、息を呑んで指を空へと突き上げた。


「生徒会選挙だよ」

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