第47話 葛藤はケ・セラ・セラで消される。
ジリリリリと目覚ましがけたたましい音を出した。
「う、う……」
煩すぎる。痛いくらいだ。すぐ様止めてまた眠りに付いた。
この朝の素晴らしさと言ったらなんだろうか。ピヨピヨと鳥の囀りを聞きながら寝る。
二度寝というのが俺の至福だった。
「ばーっか。お兄ちゃん」
どすんとベットが凹んで軋んだ。
文字通り腹の上に乗り込んできた妹だった。
「は、腹が死ぬ。死んでしまう」
「早く起きないお兄ちゃんは遅刻するか、死ねばいいと思う」
「なんていう二択だ。か、悲しいこというなよ……」
「じゃ。早く起きないとご飯抜きだよ」と言い捨てて、俺の部屋を出て行った。
てか、遅刻するとか言っていたけれど、今は何時だ?
俺は布団の中にうずくまりながら、手探りでスマホを探す。突き当たった。これか。
恐る恐る。時刻を確認する。
「なんだ。いつもの冗談ではないか」
拍子抜けするほど時間に余裕がある。しかし、二度寝する時間はない。くっそお。妹は将来名高い策略家にでもなるんじゃないかと思った。
これでは起きるしかないと思ったのだが、布団から出たくない葛藤でスマホをぼおっと眺める。気づくとLINEに通知があった。特に構えず、それを事務的に確認をする。
華月さんからだった。華月さんから送られてきたのは『今日の朝。屋上で待つ』なんて簡素な文章だった。果たし状かと思った。あー。朝か。うん。わかった。
俺はしょうがなくベットからおき、朝食を掻き込み、洗面台で歯磨きをして、顔を洗った時だった。
あ、あれ。まて、待てよ?
俺は洗面台の前で固まった。
頭が回っていなかったから気づかなかったがあれ?
は、果たし状なんかじゃない。バカじゃないか。そんな勘違い。こ、これこれは告白ではないか?昨日の文脈から言えばそれはもう告白だろ。
春が来た。悪くない。
「な、何してんの?お兄ちゃん」
「あ、い、いや…」
ここで悩んでいてはいけないと思った。
俺は今日は日直だとか言い訳を言って、それは「それならもっと早く起きろよ」なんて言われてしまったけれど、それに託けて家を出て行った。
華月さん……。
俺は彼女のことを考えれば考えるほど意味がわからなかった。わかるけれど、わからないというのが正しいだろう。だけど、俺がいくらあれこれ考えたところでその正解にたどり着けるとは思えない。だから、やっぱり俺にできることは華月さんに直接会って真意を尋ねるところだ。
俺は意気揚々と通学路を駆け抜ける。
その気概を危害するように学校前の横断歩道の赤信号で捕まってしまう。
俺は一歩留まった。
そういえば桜場さんはLINEだとか、なんとかを断れ。教室に居ろと言っていたのを思い出した。
誰が主権でそんなものを言っていた。と口を強く否定することはできる(心の中で)。
だが、なんだ。この強烈なデジャブ感。
言われた通りになっているのだ。
億劫になる。学校まで来てしまったのに踵を返したくなる。
桜場さんに言われた通りにするならば、葛藤もないだろう。
だがしかし、もうここまできてしまった。
教室を過ぎてしまって、後は屋上への階段を駆け上がるだけだった。
だから、もう引き返すには……。俺は都合の良い妹の案を採用した。
屋上へと繋がる扉。そこへと手を掛ける。
ブワッと春の心地の良い薫風が呼び寄せる。俺には強い嵐のようにも思えた。
自然とゴミが入らないように瞬いた。
瞬いた目を開くと眩しい光が舞い込んできた。
屋上に一人。長い髪を靡かせた少女はこちらの存在を知るや否や、翻る。
「あら。来てくれたのね」
彼女は珍しく俺に微笑みを掛けていた。らしくないと言えばらしくない。




