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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【選択権はここにあるっ!!】  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第46話 二者択一。文字通りに。

 騒動は終わらないうちに舞賀邸を去った。

 華月さんはのちの処理をするために舞賀邸に戻ったのだろう。

 まあ。それは口実であって、聖良さんにあんなことを言われてしまえば、会わせる目がないということだ。しかし、いつもなら戯言ざれごと戯言たわごとと言い捨てる華月さんがこんな風に脱兎の如く逃げるものだから拍子抜けしてしまったのはいうまでではない。


「図星だったんでしょ」

「そ、そうなんかな?」

「そうよ。或いはわたくしが決めつけてしまったのかも。あなたが決めつけたみたいに」


 ああ。一番最初のことだろうか。

 妹の知識を借りて、半ば言いなりのようだったけれど……。


「決めつけたから、そちらへ流されていく」

「それはまるで後悔しているみたいじゃないか」

「していないわ。というか出来ないわ」

「出来ないって?」

「いやあ。最近は結音ちゃんがとんでもなく好きなの。それは《《今は》》不変なの」と含みのある言い方をして今日は別れた。


 ああー。よくも分からない。

 華月さん。俺のこと好きだったんかなあ?しかし、逃げられたし……。いやいや。あのキャラクター像こそまさしくツンデレとでもいうんじゃないか。

 難攻不落のツンデレキャラを始めに落としてしまった俺はなんというか……。魅了的なのか?


 俺は帰路。岐路に立たされた俺はそのことについて想いを巡らせ、思索に耽っていたなら、何も考えを纏める暇もなく家に着いた。


「ただいまー」

「あ、お兄ちゃん。岡絵里」

「カノジョかっ!?」

「それ前にも一回したノリじゃんか」

「それはそう。ネタのリサイクルってやつだよ。エコだ」

「エゴでしょ」


 クスリと眩しい笑顔を見せる妹はピースをした。可愛いやつめ。


「夕食出来てるから。早く準備して。料理冷めちゃうから」

「はいはい」と適当にあしらいつつ、靴を脱いで、リビングへ向かう。


「なあ。今日はなんかあったのか?ちょっと豪勢だぞ」

「いやあ。楽しくなって、作りすぎたんだよねー」

「ははは。二人しかいないのに……」

「いいじゃないか。お兄ちゃん。心なしか嬉しそうだけれど」

「う、う、嬉しそうか?」


 あれ。俺、表情に出ていたかな。

 ベタベタと頬を触り、こねくり回すと妹は指を刺して俺を嘲笑った。


「で、出過ぎ。出過ぎ。幸せが溢れすぎだよお」とバカにした口調で揶揄からかった後に「何かあった?」とにんまりとした笑顔で言われた。

 事情聴取をする刑事の圧力と、恋バナを聞く女子かのような、そんな無邪気さがあった。

 それにその態度わかっていて聞こうとしている。悪どい限りだ。


 まあ。妹なら。さっきの一部始終を事細かに語ることは厭わない。

 聖良さんの時にも世話になったし、今度も何か、アドバイスをくれるかもしれないだから、俺は適当に話をした。


「へえ。お兄ちゃん。それは……。なんだか、いいものだね」

「なぜだ?」

「それはまあ、お兄ちゃんずっとカノジョ欲しい欲しいって散々喚いていたからさ」

「まあ確かにさ」

「お兄ちゃんはさ。妹じゃあダメだったの?」

「毎回言っているけれどさ。兄弟はダメだ。それにお前にはカノジョがいる」

「別れたよ」

「はあ?」


 それは衝撃だ。え?

 

「なんかね。合わなくなってさ。方向性の違い?」

「バンドの解散理由みたいじゃないか」

「恋愛ってそんなもんだよ」と悲痛そうに妹は言い放った。


 少し場の空気が冷え込んだ気がした。

 会話も途切れてしまったから、余計そう感じられるだけなのかもしれない。

 この部屋に響くのはトンカツを頬張る咀嚼音と、味噌汁を飲み込む嚥下音えんげおんだけだった。

 

 気まずい。そんな空気をぶち壊すかのようにピロンと分かりやすくLINEの音だった。それも通話の方で、食卓がわずかに震えた。

 俺はしばらくそれを眺めていた。


「出なくていいの?」

「ああ。で、出るよ」と言ってダイニングから退場して、電話に出る。

 俺を見送る妹が寂しそうな空気を醸し出した。すまねえ。食事中に退出して。


『あはは。タイミング悪かったかいー?』


 陽気な声で電話に出たのは桜場さんだった。


「ええ。悪かったですよ」

『あはは。それはすまないね。それはまた埋め合わせするから』と電話越しでもわかる謝るなんて微塵もないお茶らけた抑揚だった。


「で、なんですか」

『あはは。申し訳ないんだけれど……。一つお願いがあるんだけれど……』


 さっきとは打って変わって、しょんぼりとした声をする桜場さん。余程シリアスな話をするのだろうか。俺はちょっと構えた。

 

「何?」

『申し訳ないけれど、明日というか、重点的に明日。LINEとかメッセンジャーアプリとかで呼び出しがあったら行かないで欲しいのよ』

「……」


 開いた口が塞がらない。

 あんまり意味がわからなかった。どうして明日だ?それになんの意味が……。いいや、意味があるのだろう。俺も薄々気づきはする。嫌な意味だとしても。それでもどうしてそんなことを言い出すのだろうという困惑感で一杯だった。

 どうして。すらも言い出せずにものを言わなければ、『当惑を隠せないだろうけれど、これは必要な忠告なんだよねー。因果律を戻すとか、そういうのに……。まあ色々とは言えないけれど、必要なことなんだ』と訳のわからない論理を組み立ててきた。


 出会って来てから桜場さんというのはこういう訳のわかないことをいう人だった。

 いつものことだろうと若干高をくくって俺は「うん」と適当に流して、通話を終了した。


「何話していたの?」


 リビングに戻ると妹がそう尋ねてきた。

 あんなにあった食事の結構が食べ尽くされていて、太るなと思いながら席に着く。


他愛たわいもない話」

「それはどんな?」


 ここで俺はいう必要も無いだろうに、口が滑ったのだ。


「なんか、明日に送られてくるLINEは鵜呑みにするなとかなんとか」

「へえ。ふ〜ん」


 まだ食べるのかと、俺のおかずまで箸でつつく。


「それはね。お兄ちゃん。幸せって言うんだよ。多分嫉妬か、何かじゃ無いかな」

「嫉妬?」

「ほら。今日、聖良さんだっけか。その人が華月さんにお兄ちゃんが好きなのを自覚させたんだよね。その今、掛かってきた人はさ。これに危機感を覚えたんだよ。だから、その、そう言ったことを言ったんだ」

「ああ。なるほど」


 俺は言われれば腑に落ちたような感覚になった。

 しかし、納得のいく答えを出されたとて、これは果たして正しいのだろうかとすら思えた。


「だからさ。お兄ちゃんはしたいようにすればいい」


 食事の時、妹に言われたこの言葉が、寝室に入ってもなお心の中にわだかまっていた。考えても晴れやしない。

 俺はもう疲れ切ってしまった。そうだ。そんなことは明日にでも考えよう。

 俺が後することと言えば、ひとえに微睡まどろみに身を任せるだけだった。

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