第36話 やっぱりよく分からなくなった。
再び華月さんの元へ駆け寄る。
例の舞賀さんに弟がいるのかどうなのかを聞きに行こうと思った。
このまま、舞賀さんが去ったので、手近の桜場さんに聞こうかと思ったものの、一緒になって、誤魔化していたようなので、役には立ちそうにない。
だから、華月さんだ。
華月さんはもうあれだ。ほぼWikipediaだから。華月pediaさんに聞けば何でも返ってくるから。あと人の秘密とか関係なしにベラベラと言いそうだからという邪な思いがあるのはいうまではない。
「また。彼女の話?好きになったの?まあ。玉の輿として上出来の相手よ」なんて今度は英文法書に釘付けらしく俺の方を一瞥もせずに憶測だけで絶望的な勘違いをされる。
舞賀さんは凛々しくて、お顔が華麗な綺麗な女性でございますよ?
だからと言って、2回も話に出したからと言って好きなわけではないぞ?もしかして嫉妬とか。ないな。
「いやいや。そうじゃなくて、あの一つ舞賀さんについて知りたいことがありまして…」
「彼女にカレシはいないはずよ。勿論のことだけれど、カノジョも同様に」
「そんなことを知りたいんじゃなくて、舞賀さんに弟がいるかどうかを……」
「男性趣味なのね…ちょっと残念だわ」
「華月さん一旦それから離れませんか?」
「それもそうね。で、何だったかしら」と今度はしっかり聞く体制という感じでペンを置いた。
「舞賀さんの弟の件ですよ」
「弟?弟……。いたかもしれないし、いないかもしれないわ」と意味のわからない返答を頂いた。
俺は90度首を傾けた。
「どういうことですか?」
「そのままだわ。彼女の叔父は政治家と言ったけれど、それ以前に彼女の家は名家なのよ」
「名家……」
まあ。違和感はない。
「だからこそ、ほら、優秀な人を入れようとどこからともかく人を連れてきたり、逆に要らない子を破門だとか、そんな風で家系図が枝分かれしているから、誰がどれかわからないものでしょう?」
「なんか恐ろしいこと言いますね」
全然現代っぽい考えじゃない。もっと全時代的だ。
あの凛々しい舞賀さんの家がそんな感じなら、たまったものではない。
「あら。普通よ。そういう家ならね。男は貴重だから、自分のものにしたいというのはまあ当然でしょう」
「それは重婚で十分な気もするけれど」
「まあね。ものにしたいならそうではあるけれど、殊、あの家はそうもいかないものでしょうね」
「それは……どういう?」
「あの家……。というか、彼女の両親は諸共に死亡しているのよ」
「死亡……」
死亡……。しているなんて……。
あれどうして知ってるんだろうか。
「そうよ。同情したかしら。悲劇の若き当主の話については」
「その言いようは酷いと思うよ」
「いいのよ。私は」
そういう問題ではないと思うんだが……。
俺は顎を触って考え込む。
何だか、黒い塊が始終、複雑な感情が渦巻いていた。彼女の弟気味に興味が湧いたものだが、俄然こういう話を聞くとその本人にそれが向くではないか。
「で、他に聞きたいことは?」と睨みつけられたようでただただ怯んで「何でもないです」と言って退散した。
なんかもう舞賀さんのことは華月さんには聞けそうにはない。
今度からはいくら聞いても問題無さげな星宮に聞いてみようかな。




