第31話 ゲームは一人でやるものじゃないんだね。
昨日のことはは忘れよう。
そして、あちらの方は見ないでおこう。
維川カンナと日御池海桐花が星宮に必要以上にくっ付いて所有権を主張し、従って他の女子は敵意を向けて新たな火種が生まれそうな地獄と化している。今度こそ俺は関係ないから巻き込むなよ。
結局昨日の抗争で破れたズボンは俺が弁償したんだからな。
はあ。こんなことも考えることもなく、昨日消えてから何があったのかは知る余地もないんだが、イチャイチャとしていたのは予想できる。
いやまあ。変態の維川さんとヤンデレの日御池さんだもなあ。全然嬉しくないんだがっ!?
……。
嘘です。羨ましいです。
ははは……。悔しいなあ。隣では華月さんが聖良さんからアプローチを受けていて、俺は一層クラスを直視できそうにないよ。
唯一直視できるのはスマホの中さ。ははは……。
「あはは。機嫌が悪そうじゃないですか〜?元カレくん」
「あ、ん?」としかめっつらをして、顔を上げる。
珍しい人だ。名前は確か桜場さんだったと思う。
「ほら〜。綺麗なお顔が台無しだよー」と特に仲も良くないのに頬をつっついてくる。
2回しか喋ったことないのに、だからこそそれは意外な行動だったので心臓の鼓動が速くなって、紅潮する。
「可愛いねー。あははは」
「な、何。を……」
「何をって?ナニを」
「ナニをって!?」
「あはは。元カレくんは面白いねえ〜」
「日御池さんもカレシくんとか言ってくれますけれど、俺誰のカレシでもないですよ?」
「じゃーあ。私のカレシとか?」
「え?」
「あははは。冗談だよ。元カレくんにはもっといい人がいると思うから。思うから」
「……?」
それはどう言った意味なのだろうか。
そのままの意味だとしたら、そのままいいように振られただけじゃないか。
まあ。どうせ。一種の揶揄いなのだろう。聖良さんの友達だ。同種だろう。同種。
「てか、なんですか?急に」
「連れないなあ。釣れないし。ただただ元カレくんで遊びたかっただけだよー」
「で、という助詞は気に入らないのですけれど、急は急ですよ?何の用ですか?」
「用がないと来ちゃダメ?」と唇に人差し指を当てながらあざとく頼み込む。
「ダメって訳では…」
そう。ダメって訳ではない。拒否なんてできない。
だって俺は数年来女の子と関わっていないのだ。だからこそ、俺に近づく女の子は少なからず理由や打算があると思ってしまう性分なのだ。
それは今において八割方聖良さんのおかげなのだろうけれど。
「どうしてなのか知りたいかな……」
「うーん。まあ。単に揶揄いたかったからかな?」
「なんて不純な理由」
「後は聖良も、海桐花もカンナもほら、盲目じゃん。私なんてもうすでに眼中にないわけよ」
「つまり、誰もかまってくれないから手頃な俺で暇つぶしを?」
「あはは」
「図星かいな」
なんて、打算まみれなんだ。いや、ある意味そっちの方がわかりやすくて好きだ。
「でもでも。元カレくんだってさあ。華月さんにも旭くんにも相手にされなくて暇でしょー」
「別に相手にされないって訳でもなくて……」
「あはは。それが物語っているよお」
とても飄々とした雰囲気を醸し出しているのに洞察力は華月さん並みだ。勝てそうにない。
「私だってなんかハブというか話について行けそうにないからさ。新たな友達を模索中なのです。ほら、まだ始まって二週間とかそこらじゃないですか。だからねー。作りやすいと思うの。あはは」
「確かにそうですね」
「それで出来なかったら、リセットボタンですよ」
「それは怖いこと言いますね」
「リセットボタンを押せたら、どんだけ楽なんだろうね。こうして東奔西走しなくていいのにさ」
「どういうことですか?」
「なんでもなーい」と陽キャのように明るく微笑みを返した。
もしかして断捨離癖でもあるのだろうか。すぐ友達になっても捨てられてしまわないだろうか。と若干不安になったものだ。
「それに。元カレくんに声をかけたのはそれだけじゃないんだよ」
「な、何ですか」
もしかして、俺のこと……。
「それ、それ」
それって何だ?
彼女が指差す軌道を辿ってみる。
「あ、ゲーム?」
「そうそう。私、女の子であるんですけれど、大のゲーム好きでして、そのゲームしているんだよね〜」
「ま、まじ。え、ほんまに?」
おっと。オタクのよくないところだ。興奮しすぎて関西弁になってしまった。興奮しすぎて、席から立ち上がってしまった。
一瞬で冷静になって座り直す。
「だからさ。もし良かったらフレンドにさ。どうだい?」
「是非。是非。俺、恥ずかしながら、友達がいなくて……、フレンドが妹ともう連絡を取り合ってもない友達だけなものでして」
「あはは。妹さんもやってくれてるんだ。へえ。いい妹さんじゃない」
「そ、そうなんかな?」
まあ。ぼっちなことをいじってくるけれど、それを除けば、まあ。意外にいいやつだよ。聖良さんよりは。
「まあ。あんまり妹はやらないから、手応えはないけれどね。接待だよ。ほとんど」
「ははは。私は結構やり込むけれど、流石に元カレくんほどではないよ。ナニこれ強すぎじゃない?ステータス画面狂ってない?」
「はっはっはっ。少々の課金を楽しむんだ」
「まあ。しかしあの人以上ではないけれど。またあれだね。教えてあげるよ」
「ほう強い人はいいね。歓迎だね」
「じゃあ。フレンドコード送るねー」と、そんな感じで雑談を交わしていた。
ここ最近で一番楽しい時期だった。ゲーム友達ができるというのはこういう感じなのか。
いいものだ。
その後、この桜場さんとはやっているゲームが意外に被っていた、五、六個ほど。
その全てでフレンド交換をするという面倒なことをしたけれど、それも苦ではなかった。
俺に日常が訪れた気がした。




