第25話 相手の事を配慮したら解決が遅れる。
「ご、ごめんね。折角来てもらえたのに、肝心の僕が何もしないなんて…」
「いや、いいよ。いいよ」
優しい先輩によくして貰ったからね。
ふふふ。
あのあとも色々話した。女の子と話して楽しいと思えたのはこの世界に来てから先輩が初めてですよお。
「気持ち悪いわね。何かあったかしら?」と華月さんは毒付いた。
なぜここにいるかといえば、単純で、テニス部が終わって華月さんが迎えに来たのだ。
華月さんが星宮の取り付く女の子たちを蹴散らしていたのは圧巻だった。これが先輩が言っていたことなのか。
「いや、何もないんだけれど」
「あっそう。そこで女の子と喋っていたじゃない。そこで舞い上がってんじゃないの」
「いやああ。別にそ、そうじゃなくて///」
隠せない照れ。
「気持ち悪いわね」
「ど直球!?あの人は一緒じゃないんですね」
勿論あの人とは神々聖良のことだ。
「あの人は殺したわ」
「え!?」
グッパイ。いい奴ではなかったけれど、元気でな。(笑)
「てか、なんで四季くんがテニスコートにいるのよ。勉強は?勉強した方がいいんじゃないかしら」
「華月さんは妙に俺に勉強を勧めてくるけど、俺をどうしようとしているんだ」
「それは、良い大学入ってほしいでしょうよ」
「華月さん。俺をそんなふうに」
「私の友達は全員生活に困らない程度でいてほしいわ。なぜなら、私は成功してしまうから、寄生されたらたまったものじゃないじゃない。特にあなたとか」
「その自信過剰と俺への信頼度の低さをなんとかしてほしいなあ」
「あら、意外に好感度は高いはずよ」
「そうは思えないのだけれど……」
「こうして話している間に巧みに話を脱線させられてしまったわ。結局なんでここにいるのよ」
「それは俺がテニス部員になったからですよ」
「本当?」と星宮の方を向いて、確認をとるけれど「本当だろうね」と満面の笑みで言った。
「四季、入ってくれたんだ。嬉しいよ。これから一緒に切磋琢磨しようね」
「あ、うん……」
そこまで、ニコニコと微笑みを見せてくれるのに、打算塗れで入部させられたのが申し訳なくなってしまうなあ。
「へえ。こんなゲームばかりしている人がスポーツを?頭でも強打したとしか思えないんだけれど」
「そりゃ、劇的な変化があったんだよ。誰にだって、気が向く時期はあるだろう?」
「そうかなあ?四季くんに限ってそんなことないんじゃないかなあ」と疑り深い顔を近づけてきた。
近い。ほんと近い。吐息が当たるほんの数センチ。全て言ってしまうよお。と苦しそうにしていたなら、星宮は「僕が無理言って入ってもらったんだ」と言ってしまう。
あら。言って良かったの?
「ああ。なるほど。納得したわ」
「そこで納得されるのは結構癪に触って仕方がない」
「もっと触ってあげましょうか?触られるのが好きなんでしょう?」
「そんな、いやああ」
まあ。星宮が頼んだからと言うわけでもないって言うのが俺のもっとダメなところ。
「冗談はさておき、どうしてそんなことしてもらう必要があるの?」と鋭い質問をついてくる。
しかし、別に星宮が華月さんに隠している素振りを見せているわけでもないので、ことの経緯を事細かく、説明した。
「まあ。説明のとっ散らかりようは許容したがいものがあるが、まあ。大体分かったわ。血液鑑定をして、まっすぐに警察に行きなさい。そんな犯罪者は然るべき機関に突き出すべきだわ」
あら。予想通りじゃん。あれ説明は下手だったかもしれないけれど、なるべく穏便に事を運びたいという意思を伝えたつもりなのだけれど?
「いや、結音ちゃん。穏便に」と反射的に星宮が声を荒げるぐらいにはそれは暴力的だったらしい。
「何か。間違っている?」
「間違っていないけれど……違う。その上でのアドバイスを」
「そう。なら、あなたは優しすぎるわね」
華月さんは嘲笑したように見えた。同時に呆れたように。
まるで、結末が見えているかのように。
三歩ほど、俺たちよりも前進した。人差し指を顎に当てて、数秒考えるようなポーズを取った。
「じゃあ。護衛をつけましょう」
「ああ。護衛ね」
華月さんと一番最初に話した時に話題に上がったものだ。
護衛がいるから男は友達が出来にくいとか何とか言っていた気がする。
結果。いなくても友達は少ない。
「護衛制度よ。あなたの知らなかった」
「いらんこと言わんでいいよ」
ついぞ誰かを攻撃しないと済まないのかよ。
その性格治せよ。だから友達が少ないんだよ。
「旭くんみたいな性善説の男子や四季くんのような間抜け以外の男子は大体つけている国家公務員だから、身を挺して守ってくれるはずよ」
改めて聞くといいじゃん。それ。今の星宮にぴったりな制度じゃないか。
と、俺は護衛をつけることに賛成するが、肝心の星宮は「まあ、うん」と苦々しい顔で乗り気ではない。
どうして何だろう。
「それは根本的ではない気がするから、さ……」
「それもそうね。検討するくらいはしてほしいわ。旭くんそう言って毎回はぐらかしているもの」
「善処するよ」
これは一つも考えないと言った表情をしていた。
そこが頑なだと自然と気になってくるものだ。
「じゃあ。そんな旭くんの要望に応えて、ストーカーを前提にして考えよう。ストーカーは意図してストーカーになるわけでもない。気が弱いだとか、そんなのもあるかもしれないけれど、スタンダードとしてはその前に告白でもするんじゃない?ほら、ここ最近よく告白されているじゃない。旭は」
え?知らないけれど。そんな話。
いや、でも確かに告白される回数が多いような。
「だから、告白された人に焦点を当てて見るのはどう?その人たちに今の事一通り言ってさ。ほら、それで見つからなくたってそいつを探すために睨み合うんじゃないですか?それ以上は思い付きやしないけれど。じゃあ。私はこの辺りだから」と言って道を別れた。
突飛じゃないアイデア。別に悪くはないとは思った。
「いいや。よくないよ。大事になるでしょう?」
「ああ。確かに」
確かに華月さんの案はただの炙り出すための案だ。
特に事後処理を考えてはなさそうだった。
余計難しくなったな。はあ。と溜息をついて、気晴らしに空を見上げた。
夕焼けが綺麗な住宅街だった。
ふとスマホを見ると明日は、雨らしい。
血が洗い流される日だ。




