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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第24話 本物はヒロインは先輩(願望)

放課後。

 体育館裏に呼び出されるわけでもなく、自主的にテニスコートに赴く。

 えっと?星宮はというと。


 すぐに見つけられた。

 とても分かりやすかった。もう存在感を表すがごとく女の子が群がっている。

 それは 一週間前よりもずっと。明らかだった。

 聖良さんの迷惑行為(好意)の求愛行動はある一定程度の抑止力にはなっていたらしい。じゃなきゃ俺がこうしてここに赴くことはなかったのだろうね。


 まあ。赴いたところで、あんなに女の子が集まっていたなら、近づくのにも近づけないけれど。まあ。俺は星宮に近づけと言われているわけでもない。星宮の後を付ける者をあぶり出せば良いだけだ。


 なので、テニスコートでは定位置のベンチに座って観察することにした。

 うん。特になのもないな。何もないので、俺という部外者な存在で心が圧迫されている感じがある。絶対星宮の周りに群がっている彼女らの方が完全なる部外者であるのに。

 俺が小心者なのが悪いのだろうか。


 ソワソワしながら、星宮の練習試合を見る。

 よくわからないが、上手いということはわかる。

 得点が入ると「おおー」とミーハーなリアクションを示すのもまた一興だった。

 特にこうしてみているけれど、普通の部活といった感じだ。まあそりゃ、相談してすぐに事件が起こるほど、上手くできちゃあいない。

 そんなの名探偵コナンだけにしなさいな。


「あーら。また会ったねえ。少年!!シッキーじゃなあーいかー?」と一人でぼおっとしている中、いかにもな陽キャ民が訪ねて来た。

 その人は以前に声をかけてもらった天川要あまかわかなめ、先輩だ。


「何しているの?もしやかしてまたあたしとテニスしに来てくれたの?嬉しいなあー」

「そういうわけでもなく、まあ。あのー」


 馬鹿正直にいうわけにもいかない。ストーカー被害を受けているから、ではなんかよくはない。じゃあ。あれだ。


「見学を……」と咄嗟に出たのは普通だった。


「見学?ああ、見学ね。するくらいなら体験というか?あたしとする?」


「まあ。それもいいですけれど、着替えも何もないんで、その後も色々とあるんで、見ているだけでいいです」と早口で巻くし立てて、苦しい言い訳を並べ立てる。


「そーなの?まあ。それでもいいけど、またしに来てね」


 人が人なら不快な目線を向けるというのに笑顔を振り撒く先輩はオタクに優しいギャルという伝説的な存在なのでしょうか!?

 こんなの好きになっちゃうじゃないか!!


 こうして、先輩とスポーツ鑑賞をする。デートみたいだ。


 いやいやいやいや。俺は惚気に来たわけではない。

 星宮のストーカーなる者を探しに来たのだ。


「あ、あの。星宮の、あの感じはいつも通りなんですか?」と大分迂遠うえんところから聞いてしまうのはコミュ力がないせいだろうな。


「急に?」

「あ、いや」


 やっぱコミュ力が無かった。初め方が終わっていたんだ。ちょっと気まずい雰囲気になったじゃないか。

 もう、しょうがない。ここから弁解するとしてももっと酷くなるのはわかっている。

 丁寧に説明した方がいいかもな。


「あの、星宮の服が紛失する件で……星宮から頼まれて……」

「ああ…あれね。だから、星宮をね。なるほど」


「どんな状況だったのか、聞きたくて、見学はついでで」

「だから、口籠もっていたんだ。かと言っていうこともないけれどね。まあ。普通だよ。誰もが疑われたけれど、多分それっきり。解決も旭くんのロッカーに鍵を掛けることでひと段落着いたって感じだねー」

「そ、そうなんだ……」


「他に、あの、交友関係とかは?」

「あたしでしょ。あとはカンナ。維川カンナとか仲が良かったような…」


 維川さんはあれか、あの聖良さんの付属品みたいな軍団の一人だったと思う。

 あの人星宮と同じ部活入っていたんや。知らんかった。


「呼ぼうか?」

「いえ?別に」


「はーい?呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。維川カンナでーす」と噂をすればというやつ。


「カンナちゃーん」

「要ちゃーん」


 キャッキャッと女の子が戯れている。


「で、なんで呼ばれたんだ?」

「あれだよ。星宮くんの交友関係をとある事情で調べているらしいんだ」

「へえー。あやしー」


 ジト目で俺を見つめてくる。なんかいいね。


「まあ。良いけれど。対価は払って貰うからね」

「いいよ。いいよ」と適当に流す。


「まず、私でしょー。部長の要ちゃん。あと副部長。そこの女の子3人とも仲良いね」

「3人はなんかあるの?」

「いいや、特に何もないらしいけれど、ああ。その3人の中の一人は好きとかなんとかと言っていたような忘れたなあ」

「そうなんだ」

「まあ。大体女の子とは仲良いねー。それでなきゃ。あんなふうにならないだろうし」と、星宮の方向を向く。

 女子人気は衰えることなく、見守っている人がどんどん多くなっているようだ。


「こりゃ。近づくことすらできない訳だ」

「でも、一緒に帰るぐらいはできるんじゃないかなー。そこまで一緒にいたいわけではないだろーし」


 まあ。質問攻めされるんだろう。そんなことしてたらいくら聖人の星宮でも疲労感で死んでしまうんじゃないか?

 

「いつもは星宮一人で帰っているんですか?」

「いや?大体は華月さんと帰っているんじゃないかな」

「華月さんと?」

「そー。なんかいつも帰っているね?彼女とか、尋ねたけれど、否定されたね。完全に」

「そりゃそうでしょう」

「あんまり喋ったことない人をけなすのは良くないんだけれど、ボディガードだよ。あれは」


 数多の女性を目力だけで蹴散らす姿を想像してしまった。


「じゃあ。あれで帰路だけは安全を保てているんだ」

「そういうことになるねえ」


 新たな抑止力の確保は進んでいたということなのだろう?

 なら、いらないんじゃないか?とは思ったけれど、別にそれで解決は進んでいない。華月さんは公言として“求愛”をしているわけではない。“迷惑”と叫んでいるだけなのである。


 それは愛ある人からすれば、恋は盲目というし、迷惑とも思っていない。


「でも、ここは安全じゃあなさそうだ。女子は多いし、実際被害もあったし、あたしも十分気を使うからさ」

「あ、ありがとう」



「じゃあ。ここで精算をさせてもらおうか。ね。要ちゃん」

「そうだね」と言って先輩はどこからともなく紙を取り出した。


「な、何の紙なんですか?」

「ここの書類にサインをしてくれたなら」と差し出された紙を一瞥して受け取る。


「入部届じゃないか」

「部員は多い方がいいのですよ?使えるお金は部員の数ほど比例式で増えていきますからー」


 ぐへへ。と目をマネーに輝かせて、下卑た笑みを浮かべた。


「結局お金ですか」

「それは冗談。旭くんが入って来てくれたおかげで旭くん目当ての女の子たちが大名行列作って入ったからもうたんまりとあるんだよお。ねえ。要ちゃん」


 目をそらす。助かっているなんて毛ほども言いたくないのだろう。


「なら、俺なんてねえ……」


 入れたってしょうがないでしょう?


「いやいや。そんなことないよお?体験入部の時来てくれたでしょう?あの時すっごく良かったから、練習すれば結構いい筋まで行けるって。だから、思い出にどうだい?って話」と先輩はフォローをする。や、優しい先輩だ。


「あ、そうなんだ。ふーん」


 これは褒められているという認識でいいんだよな。

 この契約書にサインしてもいいんだよなあ?

 いいじゃん。悪魔の契約だって、こんなに可愛い子に迫られたら。


 ドクドクとした心臓。それを抑えるように契約書にサインをする。

 優しい先輩のために。

 

「じゃあ。ありがとーね。これで晴れてシッキーもテニス部員だ!」


 にかりと笑みを作る先輩。

 ここに本当のヒロインがいたんだと思った。

 

 ああ。決して維川さんの方じゃないよ。決して。

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