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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!  作者: √宮ハルヒ
第一部

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第18話 多分彼女は千里眼持ち。

 引きられて来たのは図書室だった。

 昨日と今日で華月かづきさんのお気に入りの場所になったようだ。

 それはよかった。とてもよかったと思うよー。俺。


「じゃあ、俺。帰りますんで」

「何を言っているのよ。これからでしょう?私がこうして強引に連れて来た理由を」


 いや。それは華月さんの悪役令嬢っぷりから、違和感はない。華月さんだからという理由で十分だ。

 なら、そ、そういうことで。と俺は扉を引こうとする。

 その前に椅子を引かれて、座らされた。


「逃げるべきではないわ。これはあなたにとっても有意義になるはずよ」

「有意義ね」

 

 はっきりと有意義と言う。俺を引っ張り出して、後で聖良さんに絞られる覚悟をしてもいぐらいさぞかし有意義なことを言ってくれるのだろう。


「四季くん。早くやめるべきね」

「何をですか?」

「あいつのカノジョをよ」


 それはまた直球な願いだ。いや、俺も望むところではある。

 だって、彼女にカノジョとしてのあるべきはずの愛情は皆無だ。愛のないお付き合いはただの政略でしかない。俺が政略など、望まない。だが……。


「無理ですよ。どうしたって聖良さんは折れませんよ」

「でも、あなたの人生よ?そんなふざけたやつにわずかでも奪われてはならないわ」

「で、でも」

「私が折れれば、折れるんでしょうね」

「え。折れるんですか?」

「そんなわけないでしょう。冗談よ。冗談以外で私がいうと思う?」

「そうですね……」


 この問題の複雑性を帯びているのは華月さんのプライドの高さ、それに加えて聖良さんの諦めの悪さが問題である。


「だって折れる必要がないでしょう?」

「なぜ?」

「だって、それはどうせあいつに言われて付き合っているのでしょう?だから曇りもなく別れなさい」

「は、あえ?」


 あまりにも唐突の真理におののかざるを得ない。

 ど、どうして?そんなことを?俺は隠しているつもりはないんだけれど。


「図星なようね」

「な、なんでわかるんですか?」

「そりゃ。見た感じよ。あなたってそこまで、というかタイプじゃないでしょう」

「じゃあなんで。華月さんは別れるようにいうんですか」

「いや、だってあいつが盛大に振られたら、あいつの作戦はお釈迦しゃかになるじゃない」


 それは、どうだけれど、俺がそんなことできるわけない。

 未来の俺が永遠に聖良さんに嫌われ続けるなど、耐え切れるはずがない。

 だから、これは未来志向的じゃない。


「自分でそういえばいいじゃないですか?どうしてそうやって泳がせているんですか?」

「それは私の趣味みたいなものよ」

「悪どいですね」

「そう?あなたもハマると思うわ。あいつね。私が嫌だと思ってやっていると思うのよ。でもね、あいつ全く持って昔から進化していないのよ。単純。単純。だから、それがその手の内がぜぇ〜んぶ私にバレているのよ。そうなら、可愛いものじゃない。バカな子を見ているのは」

「そ、それは……」


 当たり前のように嘲笑う華月さんはまごうことなく悪役令嬢だ。いつも比喩表現として使っているけれど、あれは真実だったらしい。

 俺はこんな歪んだ関係をどうすることもできないじゃないかと思わされる。

 しかし、めげずにどうにかしないと俺がどうにかなってしまう。


「それでも、よくなくないじゃないですか」

「いいじゃない。相手の方が悪ければ。その意見は変わらないわ。また同じ話を繰り返すの?生産的じゃないからやめてほしいのだけれど」


 昨日の図書室の話か。華月さんは正しすぎるという話か。それはもう説得できないと諦めている。だって今の言葉でよくわかるだろうよ。


「そうじゃない。そうじゃない話だよ」

「じゃあなんの話?」

「なんでそんなに機嫌が悪いの?」


 俺はついぞ聞いてしまう。


「機嫌悪いように見える?至って冷静よ」

「いいや。違うね。いつもは冷静沈着に議論をしてボロボロにしてきたと」

「へえ。一日ちょっとで仲良くなった人にそういう風に語られたくないわ」

「星宮に聞いた」


 ああ。なるほどと納得した顔をしたわけではなかった。

 華月さんは明らかに険しい顔になって、「ちっ」と舌打ちを鳴らした。


 挙げ句の果てには「余計なことしてからに」とはっきり言う。


「どうして、テストだとか、スポーツだとかじゃなくて、直接的に対峙たいじするんだ?星宮に聞いたイメージとは随分違う」

「あくまでも星宮のイメージじゃない。それに直接的ではない。あなたを介してじゃないか」

「屁理屈はよしてください」


「あなたの中に正解が決まっているのでしたら、どんな意見でも通らないのでしょう?」

「それが屁理屈なのですよ」


「そう。まあいいわ。だからと言ってスタンスを変えろと言うんでしょう?この私の態度を」


 変わってしまったのは華月さんでしょう。なんでそんな俺に親切なんだ。


「そうとは言いませんよ」

「じゃあ。私の味方では無いのですか?私は正しいのです」

「うん……」

「友達でしょう?だから。私の案に乗りなさい?」


 魅力的な提案だ。

 だって。華月さんに乗れば必ず勝てると言い切れるほどには信頼できる。それはまあ。合理的だ。圧倒的な悪を打ちのめすのに素晴らしき選択だ。

 でも決めかねる。


「あなたのその、のらりくらりの悪あがきは大団円を狙っているのでしょう?諦めなさい。そんなものわ無いわ。敵は敵よ」


 そのキッパリとした分け方は飲み込めない。

 彼女、カノジョは性悪女だと思うけれど、それまでだ。ただ嫉妬に駆られた哀れな女だ。それを徹底して、打ちのめすのは違う。

 優しすぎる。そう思われても仕方がないとは思うけれど、一度の失敗で人生の失敗は決められないだろう?


「ちょっと待ってください。具体的には明日まで」


 案はない。でも、何か上手くはいくはずだ。


「あっそう。じゃあ、楽しみしておくわ」とにこりと微笑んだ。

 

 期待しているのか。それとも諦めているのか。

 華月さんはわからないなと改めて思うのだった。

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