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聖剣伝説レッドソード  作者: 山田隆晴
結束

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40/44

13-1

 ジャンティはそこまで話した途端空間の奥へ向かって走り出した。

『どこへ行くんだ?』

 弥がジャンティの意識の下で訊いた。

「決まってる。『魔』を斃しにいくんだ。ヤツは再び姿を現したはずだ。」

 走り出したジャンティを追いかけて澪も走り出す。

「リーミンは来るな!今度こそ君を守る。」

 ジャンティは走りながら思いとどまらせようとするが澪は聞かない。

「冗談!その体は弥のよ。弥が危ない目に遭いそうなのにほっとけないじゃない。」

 空間の奥へ進むと扉のない、門のような装飾の出入り口が口を開けていた。

 ジャンティは門のところで止まる。

「ここだ。あの時ヤツはこの向こうにいた。」

 そう言って門の陰から中の様子を伺おうとしたとき足にぶつかった物があった。足下を見るとタキシードソードだった。ジャンティはそれを拾い上げた。

「そうかあの時、」

 ジャンティはノイレンが自分を連れてここへ引いたときのことを思い出していた。追いついた澪が同じように門の陰から中を覗いた。

 かつて『魔』の本体がヒュドラの姿で待ち構えていた部屋は先ほどの天変地異で天井がいくらか崩れたようでがれきがあちこちに散乱している。

「誰かいる!」

 澪は中に2人の人影を目にして飛び出していった。

「待て!リーミン、確かめてからでないと危険だ。」

 中にいるのは本体か分身か。いずれにしても丸腰の彼女には危険だった。ジャンティが腕を掴んで制止しようとしたが澪のほうが早かった。

 澪はがれきをよじ登り人影のほうに走って行く。

 そこにいたのは真と蓮だった。

「真さん!蓮さん!」

 澪は2人の名前を呼びながら近づいていく。2人がそれに気付いた。

「おや、他にも落ちてきた人がいたのか。怪我はないかいお嬢さん。」

 真が訊いてきた。

「お二人ともご無事だったんですね、よかった。」

 真が怪訝そうに澪を見ている。

「私です。澪です。」

 真が要領を得ない顔で聞き返した。

「澪さん?」

 蓮が赤いカチューシャとチロル風衣装を見て澪と気付き、にんまりとした表情でひやかすように言った。

「澪ちゃん、あなたその服でデートするからってウィッグかぶってコスプレしたのね。」

「コ、コス、違います。これは・・」

 澪は顔を赤らめて言い淀んだ。

「さすが高校生。若いわあ。ところで弥君も無事なの?」

 周りをきょろきょろと蓮は見回して弥の姿を探した。そこへジャンティがやってきた。

「リーミン!」

 蓮は喜びの悲鳴をあげるかのような笑みを浮かべて、

「弥君までコスプレしてるんだ!かわいー。」

 澪が真っ赤っかになって俯いている。ジャンティの意識下で弥が蓮に叫ぶ。

『それ以上言うとねこぱんちが飛んでくるからやめてくれ!』

 ジャンティは蓮の顔を見るなり驚きの声を上げた。

「ノイレン!」

 蓮が驚いて目を丸くする。

「弥君なんで私の旧姓知ってるの?」

『はい?』

 弥の意識が心の中で返事をする。 

「ノイレン、無事で良かった。」

 ジャンティは嬉しそうな顔で蓮に近づく。手にはタキシードソードが握られている。蓮はその刀を見留めて恐怖を感じた。

「ちょ、弥君?」

 蓮は後ずさりする。

「ノイレン?」

 ジャンティは逃げようとする蓮を不審がる。

「確かに私の旧姓は野井だけど、それにその刀。」

 蓮は恐怖で顔が険しくなる。澪が蓮に耳打ちした。

「え?弥君じゃない?どゆこと?」

「話すと長いので今は・・。でも彼、弥じゃないんです。ジャ、ジャンティという400年前の人なの。」

 蓮だけでなくそばにいる真も何が何だか分からず全く合点がいかない。

「ノイレン、それよりも『魔』が蘇っ」

 ジャンティの言葉を遮るように突如4人に天井の向こうから黒い霧の柱がズドンと落ちてきた。

 4人の体は宙に浮いた。まわりのがれきと共に勢いよく天に向かって吸い上げられていく。そのがれきの中から3本の聖剣が姿を現した。ジャンティは吸い上げられていく中でそれを発見し、レッドソードに手を伸ばす。しかし手が届かない。体は意に反してぐんぐん天に昇っていく。

 黒い霧の柱は地上を離れ空高く上まで伸びている。4人はそのまま上空まで吸い上げられた。

 その先には、

「船?」

「宇宙船?」

「空飛ぶ船って何?」

 まるで宇宙船のような空中に浮かぶ船があった。ただの船というよりSFに出てくる宇宙戦闘艦のような形をしている。

『時代ごとに姿を変えるって言っても先取りしすぎだぜ。』

 弥の意識が皮肉る。


 4人は黒い霧の柱によって空に浮かぶ戦闘艦の甲板に投げ出された。

 真と蓮が想像を超えた状況にパニックになりかけている。澪が懸命に2人を落ち着かせる。

 ジャンティは共に吸い上げられた3本の聖剣を探した。レッドソード、ワグソード、そして、刀身の折れたネオソード。

 ジャンティはネオソードの柄を両手で抱えて怒りに震えた。髪が逆立つ。

「うあああっ!」

 雄叫びを上げ、その船の艦橋のほうへ向かって叫んだ。

「今度こそお前を葬ってやる!」

 船が震えた。地響きのような唸りが聞こえる。『魔』が吠えている。

 甲板に吸い上げられたがれきの向こうに4人の分身が現れた。ジャンティにはとても見覚えのある4人だ。

 がれきの上にノイレンと(シン)と璃羽、そして咲がいた。手には分身が持っていた剣が握られている。

「貴様ぁ、みんなを弄ぶな!」

 ジャンティは怒りに満ちた声を発し、レッドソードを手に1人で向かっていこうとした。

「待って!」

 澪がジャンティを止める。

「止めないでくれリーミン。」

 ジャンティは澪に背を向けたまま制止を振り切ろうとした。澪がジャンティの左手をしっかりと握った。

「あなた1人じゃ無理よ。」

 弥もジャンティに呼びかける。

『そうだ、お前1人で何ができる。みんなで力を合わせるんだ。』

「でも、」

 ジャンティは3人の顔を見回した。リーミンはもちろん、真も蓮も剣を使って戦えるとは思えなかった。

『俺たちを信じろ!お前は1人じゃない。』

「1人じゃない?」

 ジャンティは左手を握るリーミンの手を見て、視線を顔に上げた。澪がこくんと頷いた。澪には弥の声は届いていない。でも心で感じているように見えた。


 落ち着きを取り戻した真がワグソードを掴んで軽く振り回し、

「なんだかよく分からないけれど、やるしかないようだね。」

 見よう見真似で構える。

「私これがいい。」

 蓮が折れたネオソードを掴んで言った。

「ええ?!そんなんでどうすんの?」

 真が蓮にツっこむ。

「だって、このオレンジの石がとても綺麗なんだもの。なんか惹かれちゃった。」

 そう言って橙色の聖石を指先でさすった。すると石がオレンジの光を放ち柄を包み込んだ。

「きゃっ。」

 驚いて石から指を離すとオレンジの光はぐんっと伸びてまるでそこに刀身があるかのように見える。

 光の剣になった。

 それを見ていた真もワグソードの黄緑色の石をさすってみる。ネオソードのように黄緑の光がワグソードを包み込んだ。青竜刀のような湾曲した刀身がさらに大きく、まるで竜が柄から出てきたようになった。

 ジャンティはかつて(シン)が言った言葉を思い出した。『剣に選ばれし者は真の力を発揮できる』

「ど、どうして?前の時は何も起こらなかったのに。」

 驚きを隠せない。自分も、ノイレンも、咲も選ばれた者だったのに誰も真の力を発揮させることはできなかった。左手を握る澪がそっと言った。

「みんなで力を合わせれば不可能も可能になる。1人ではダメ。」

 ジャンティは気付かされた。

 400年前、ヒュドラと戦ったときは皆で協力していたように見えても、実際には1人1人がそれぞれに戦った。自分は足を負傷してほとんど何もしていなかった。5人で力を合わせて戦うことをしなかった。

 そして最後の首を仕留めたときもリーミンを守ろうとするだけで、彼女の力を借りることなど考えもせず1人で躍起になった。その挙げ句にリーミンを死なせ、自分1人だけが生き残ってしまった。

 ジャンティは悔しさに唇をぎゅっと噛みしめた。血がにじんでくる。右手に握るレッドソードが手の震えを伝えて小刻みに振動する。

「僕は、僕は!」

『ジャンティ、その(レッドソード)を澪に渡せ。お前はあの日本刀を使うんだ。』

 弥の意識がジャンティに囁く。

「何故?僕は前にこの剣に選ばれた。」

『それは400年前の話だろ。いいから澪に渡せ。みんなで協力するんだ。』

 ジャンティは頷くとレッドソードを澪に渡した。

「この剣は君が使ってくれ。その赤い髪飾り、この剣の石と同じ色だ。」

 そしてジャンティはタキシードソードを手にした。心の中で弥が意気揚々と語りかける。ジャンティの髪が逆立っているから額にある三日月形の傷跡がよく見える。

『天下御免の向こう傷にはやっぱり日本刀が似合うぜ!』

 ジャンティはタキシードソードの柄にある紫色の石をさすった。すると厳かな紫の光が剣を包んだ。

 澪がレッドソードの紅い石をさすると神々しい紅い光が辺りを照らし、レッドソードを包み込み剣が一回り大きくなった。

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