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聖剣伝説レッドソード  作者: 山田隆晴
対決

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36/44

12-3

「そうだ、ここに落ちたんだ。」

 ジャンティは両の拳を力を込めて握り、空間の奥の闇へ鋭い視線を向けた。

『ここ?』

「そうだ、間違いない。見覚えがある。この奥に『魔』の本体がいた。」

 ジャンティの目に憎しみの光が溢れてきた。


 ***

 けっこうな高さから落ちたらしく5人ともほんの短い瞬間だが気を失っていたらしい。

 気がついて目を開けるとそれまでとは異質な空間にいた。かび臭くもなく、じめじめもしていないがひんやりとしていて自然と心に寂しさが去来した。

 ジャンティは上体を起こし皆を探した。まわりに全員倒れている。左足を引きずってそばへ行き一人一人名を呼びながら体を揺すって起こした。

 (シン)がジャンティの呼びかけで目を覚ましたあと、肘をついて起き上がり辺りを見た瞬間、彼の顔が強烈な衝撃を受けたように引きつった表情に豹変した。

「います!」

 闇に閉ざされ何も見えない空間の奥の一点を見据えてただ一言そう叫んだ。

 ジャンティも含め、あとの3人も(シン)が何を言っているのかすぐには要領を得なかった。

「いるって、何が?」

 ジャンティが(シン)に尋ねると、

「本体です、『魔』の本体です!」

 (シン)の表情がさらに険しくなる。

「なんだと!」

 ノイレンが(シン)の横に来て膝をついてかがみ目と目で会話した。(シン)は力強く頷いた。

 ノイレンは(シン)の見つめていたほうへ視線を向けてニヤリと笑みを浮かべた。

 (シン)の言葉に咲は畏れを感じ肩を震わせている。璃羽はその両肩をうしろから掴んで離さない。

 ジャンティは今すぐにでも本体を斃してリーミンを助け出したいという衝動に駆られながらも斬られた左足の痛みで立っているのが精一杯だった。


 (シン)の肩を借りてジャンティは進み始めた。ノイレンが先頭をゆっくりと歩いて行く。璃羽は咲を庇うように気にかけながらあとを付いていく。

 空間の奥に扉のない部屋があった。出入り口には門のような装飾が施されている。

 5人は2手に分かれてその門の両側から中をのぞき込んだ。そこには、

「ヒュドラ?」

 ノイレンが部屋の中央に鎮座しているその物体を指してそう言った。

 ノイレンとは反対側から覗いている璃羽が、

八岐大蛇(やまたのおろち)だろ。」とツッコんだ。

 ノイレンがギロっと璃羽を見て「あれはヒュドラだ!竜の首が8つあるじゃないか。」と言うと、璃羽も「八岐大蛇も首が八つある!」と譲らない。

「呼び方なんてどっちでもいいから、それよりどうやってアレを斃すのか作戦を立てましょう!」と咲が二人をたしなめた。

 気を取り直したノイレンが「そうだな、ヒュドラ退治の作戦会議だ。」と言うと、璃羽が「よしっ、八岐大蛇退治だ!」と返した。

 咲がはああ~と大きくため息をついた。



『ヒュドラ、八岐大蛇。400年前はそんな怪物になったのか。本当に時代によって姿を変えるんだな。』

 夢の中で](シン)のご先祖様が伝えていた800年前の姿を思い出して弥がそう呟いた。

「八つ首の竜なら覚えてるってリーミンさんが言ってる。」

 澪が心の中のリーミンと対話しているようだ。

「でもリーミンさん、とても悲しそう。泣いてる。それ以上は何も教えてくれない。」

 ジャンティはくっと唇を噛んだ。血がにじんでくる。弥の意識がジャンティに訊いた。

『何があったんだ?』

 ジャンティはとても悔しそうな顔をしているだけで、何も語らない。


 ***

 俄然やる気のノイレンが何かを言う前に釘を刺すようなことを(シン)が皆に告げた。

「あれがヒュドラなら頭を全部落とさないと斃せません。」

 すると璃羽がこう付け加えた。

「八岐大蛇も同じだ。頭を全部落とさなきゃならない。」

 ノイレンは目を丸くして皆を見た。ジャンティや咲もとてつもなく難易度の高い条件に驚いた。

 ノイレンがしばし思考を巡らせたあと言った。

「まずはあいつの反応を見てみようか。ついでに首の一つも取れたら儲けものだ。」

 ノイレンが一手仕掛けて本体の出方を見ようと提案した。璃羽がそれに乗る。

「そうだな、相手の力が全く分からないんじゃ作戦も何もないしな。」

 2人の無鉄砲なやり方に動揺した(シン)は、

「いや、だから2の手、3の手まで考えるのが作戦でしょう。」と、いさめるが2人は聞く耳を持たない。

「よし、一発試してみるぞ!」

「おうよっ!」

 意気投合した2人が剣を抜いて同時に飛び出した。咲が心配そうにその背中を目で追いかけた。

 8つある首が2人の動きに反応して動き出す。ノイレンが軽やかに走り回り()()()を翻弄する。

「璃羽行くぞ!」

 そう言って目の前に迫ってきた1つの首に向かってその目にネオソードを突き立てた。

 目を刺された首が悲鳴に似た咆哮を上げ剣ごとノイレンを振り飛ばそうと頭をぐいっと持ち上げた。その動きに合わせて飛び上がった璃羽が首の根元にタキシードソードを叩き込む。

 竜の首が切断され宙に舞った。

 ノイレンは目から剣を抜き床に落ちる竜の頭から飛び退く。ズシンと音を立てて頭が床に落ち、首は横たわって動かない。ノイレンと璃羽はお互いに目を合わせてニヤリと笑みを交わした。

 門の陰からそれを見ていた(シン)、ジャンティ、咲の3人は驚嘆した。3人は顔を見合わせて頷いた。

「どうなることかと思いましたが、これはいけるかもしれませんね。」

 ジャンティと咲に話しかけた(シン)の表情が柔らかくなっている。

 ノイレンと璃羽は意気揚々と3人の所へ戻ってきた。この調子で残り7つの首も切り落とせると笑顔になっている。

 ところが、

「きゃあ!!」

 咲がいきなり叫んだ。4人が一斉に咲に注目する。咲が門の陰から本体を指さして(おのの)いている。

 4人が咲の指さしたほうを見ると、璃羽が斬り落とした首の切断面の肉がもこもこと隆起し、大きくなって頭が再生した。

「なっ?!!」

「なんだとお!」

 ノイレンと璃羽が自分の目を疑った。



『ヒュドラや八岐大蛇なら再生するからな。まさか酒を飲ませた訳じゃあるまい。どうやって斃したんだ?』

 弥はスサノオの大蛇(おろち)退治の神話を思い浮かべた。

 ジャンティは苦い顔をしている。


 ***

 ノイレンと璃羽はその後何度か同じように首を切り落としてみた。1つだけでなく同時に2つ息を合わせてやってみた。2つ落としたあとに続けて3つ目を落とすこともしてみた。それでも頭はすぐさま再生して元通りになる。2~3人では息の根を止めるのは難しかった。

「再生するなんて聞いてないぞ。これじゃあさっきまでの分身と同じでキリがない。」

 ノイレンは門まで下がって為す術無しと言った苦い表情でヒュドラを睨みつける。璃羽も予想外に手こずることに疲弊してきた。

「私に一つ考えがあります。」

 2人が試行錯誤している間ヒュドラの様子を見ていた(シン)が皆に向かって言った。

「どうするんだい?」

 ノイレンが(シン)を見ると、彼の目は悲壮な色を浮かべていた。

「分身は体に矢などが刺さると動きを止めることができました。アレは本体とはいえ落とした首に何かを刺せばおそらく頭の再生を阻止できるでしょう。そうやって再生を阻止しつつ全部の頭を落とすんです。」

「それは分かったが、何を刺すんだ?あんたの弓矢は持ってきてないぜ。」と璃羽が返した。

「まあ、見ててください。」

 そう言って(シン)はにこりと微笑んだ。そしてジャンティに向き直り、彼の目を見て伝えた。

「リーミンさんはこの近くにいます。左腕を失ってから勘が鈍っているとは言え、さすがにここまで来れば私には感じます。あのヒュドラのうしろ、壁の向こうに幽閉されています。」

 ジャンティは目を見張った。

「必ず助けてあげて下さい。」

 そして(シン)は咲を見てこう言った。

「ジャンティの力になってあげて下さい。あなたは私と同じワグソードに選ばれた人です。あなたなら剣の力を発揮できるはずです。お願いします。」

(シン)さん?」

 咲は(シン)から不穏なものを感じ取った。

 (シン)は最後にノイレンと璃羽に向かって、

「試したいことがあります。もう一度首を落として下さい。」

 そう言って2人を連れてヒュドラの前に飛び出していった。


 ノイレンと璃羽は竜の頭を翻弄し首をたたき落とした。

 すっぱりと斬られた首の断面から頭が再生する前に(シン)が雄叫びを上げながら拳を断面に叩き込んだ。首の肉に肩まで(シン)の右腕が突き刺さった。

 ノイレンと璃羽は呆気にとられ言葉が出ない。(シン)は腕を突っ込んだまま悲壮な表情をしている。

「さあ、再生できるものならしてみなさい、化け物め。」

 (シン)の読み通り首の再生が阻止された。頭を失った首は冷たい床に横たわったまま何の変化もない。

 (シン)が勝ち誇ったようにその口角に笑みを浮かべたとき、隣の首が(シン)の体に喰らいついた。

 再生できなくなった首には(シン)の上半身だけが残された。

(シン)!!」

(シン)さん!」

 ノイレンはやるせなさで顔を背けた。

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