第27色
不意に真剣な声で話を止められ、エレンも背筋が伸びる。そっと肩に置かれたアールの手が微かに震えているように感じたが、鏡越しでははっきりとわからず、固唾を飲んで次の言葉を待った。
「……エレンは、『写し子』の伝承はわかるか?」
「えっ、あの……エレノア様とアリュール様の……なんというか、力を受け継いだ人、だっけ?」
「そこまで把握しているならいい、大体そんな感じだ。ただもっと簡単に言えば、先祖返りの方が近い」
「先祖返り……」
「そうだ。この世界の創造神と言われている二柱の能力が、一部でも発現する者。『写し』の通り、その二人は容姿まで創造神に近いとされるんだ」
「なるほど……その写し子が、今回の召集と関係してるのね?」
「……あぁ。特にエレノアの写し子は、直系の娘でもあるから、その能力はより強力なものになりやすい」
「直系の……まさか、それが……」
「そう、エレンは……女神エレノアの写し子だ」
「……っ!! そ、それじゃあ、アールは……」
おもむろに椅子から立ち上がり、彼と向き合う。先程までの、自分が足手纏いになるのでは、という考えも払拭され、仄かな喜びに満ちた目で返そうとしたが、すぐさま不安の色が落ちる。向き合った相手は、自分とは反対に表情も無かった。
「うん、俺も、アリュールの写し子だ。証拠なら、エレンも身に付けているこれだ」
「ロケット……物心ついた時から持っていたけど、これが写し子としての証明だったのね……」
自分の正体を明かすと同時に、服の下に隠していた銀のロケットペンダントを取り出す。エレンが身に付けている金色のものと、デザインは瓜二つとなっている。アールとペアになるものを互いに持っていたことにも喜びたいところだったが、彼の放つ空気感がそれを止めていた。
「アールも写し子なら、私のその力を引き出せれば、各地で不安定になっていた魔珠の問題も解決できる……? 私も力になれる、よね?」
「……っ」
「私も、ガーデンの一員よ。できることがあるなら……」
「そんな単純な話じゃない!」
「あ……」
静寂を破るように彼から強い否定をされ、思わず肩が跳ねてしまう。強張った表情のまま固まってしまったエレンを見るなり、アールは髪をかき上げながら首を振って葛藤していた。
「ごめん、急に声荒げて……でも、でもそんな単純に済む話じゃないんだ……」
「ん……私も、最後まで聞かずに、ごめんね……まだ続きがあるのね?」
「……うん」
一呼吸置いて落ち着きを取り戻したアールは、覚悟を決めて彼女へ真相を語り出す。
「歴代の写し子も、一部とはいえ二柱の力を引き継いでいたから、それぞれの時代の強大な存在でもあった。それと同時に、写し子全員がその最期は二柱と同様に凄惨なものだった」




