第25色
メリヴァが司令官室で報告していたのと同時刻に遡る。エレンは自室で、軽い仮眠を取っていた。眠りが浅い故に、夢を見る。その内容は、彼女が最近繰り返し見るようになったものだった。
ふと辺りを見回せば、自分は不規則にカットが施された巨大な水晶の部屋の中。否、部屋というよりも、形で言えば繭と言った方が近いだろうか。その外は、ただ不思議な色が揺らめいているだけの異次元のような空間に、一人取り残されている状態から始まる。そしてしばらく様子を伺ってから繭の壁に近づくと、外には長い銀髪の男性が、こちらに向かい、壁に手をつき項垂れているのだ。透明な壁越しに、嗚咽混じりの悲痛な声が途切れ途切れに聞こえてくる。そんな夢を何度か見続けていた。
(最初はリッチさんかと思ったけど……なんだか少し違う気がする)
今まではぼんやりとその男性を眺めるだけで、すぐに夢から醒めていたのだが、今回はもう少し様子を見られそうだと気付いた。おもむろに立ち上がり、ゆっくりと壁の外にいる男性のもとへ近づいていく。
「あ、あの……どうして、泣いてるの……?」
「……っ! ぁあ……! ……ない……すまない……!」
「えっ? そんな、謝られても……」
(違う、もしかして……私の声は聞こえていないんじゃ……)
「すまない……こんな、こんなことになるなんて……!」
(一体何があったの? この人は、誰……? どうして私の夢に……)
そう考えた瞬間、突然、自分の背後に人の気配を感じる。今まで自分以外に人がいなかった水晶の空間に、突如としてその存在は現れた。しかし、それは決して恐ろしいものではなく、温かく優しい気配が振り返らずとも感じ取れた。
振り返り確かめようとした刹那、それを制するように、そっと肩に手を置かれてしまう。エレンにはまるで、自分の姿を見て欲しくない、と主張しているように感じた。
「あの……あなた、は……」
『……彼のことを、責めないであげてね……』
「えっ?」
その言葉に思わず振り返ったと同時に、ベッドの上で夢から醒めていた。体を起こし辺りを見回しても、見慣れた自室であることに間違いは無かった。頭に手を当てて考えても、先程の夢で聞いた言葉の意味が理解できなかった。銀髪の男性の涙と謝罪の言葉、突然夢に現れた存在、そして投げかけられた言葉の意味。いくら考えても、エレンの中で関係が結び付かず新たな悩みの種となってしまった。
(彼を指しているのがあの男性のことであるなら、私が彼を責める理由なんて……ダメ、どんなに考えても余計にわからなくなる……!)
そこへ、花盤から緊急を伝える通知が鳴り出す。今考えていたことは瞬時に拭い、制服に急いで着替え始める。しかし、続いて流れてきた指示に、思わず手を止めてしまった。
「アール、エレン……指定した二人は、司令官命令で別行動を許可します。他の隊員は全員ホールへの召集に応じるように」
「──……え?」




